デザインとビジネス、デザインマネジメント、組織のデザイン成熟度とその評価
ことのはじまり
デザインを学び始めたのは、大学に入った後のことで、はじめのデザインに対する解釈は、自己表現のビジネス文脈への応用であると考えていた。その解釈に大きく変化が起きたのは、「History of Graphic Design」という授業の中で、スイス派に代表されるモダニズムとの出会いだった。デザインに対する論理的なアプローチは、2次元空間の中で頼りない直感に基づいて要素や情報を配置していた私に、確立された応用可能な足場を示してくれた。
モダニズム以前と以降の多くの「イズム」は、勉強していてもさして記憶には残り続けなかった。ある意味でのファッション性をもつ流行り廃れだと直感的に感じていたからである。一方で、モダニズムは、単一のイズムを超えた、何か文明に近い強度を感じていた。また、その強度はグラフィックの生成や情報の構造化だけにとどまらず、より広い分野に用いることができる拡張性を持ったライフスキルなのではないかという、現在も続く自らのデザイン観にもつながってくる。
卒業の年だった2017年は、非常にワクワクしていた。特に、ジョン前田によって発表された『Design in Tech Report 2017』は、かなり革命的な情報だった。(特にデジタル業界の)デザインの求人数は増え、世界の名だたる企業が、デザインコンサルティング企業を買収し、そしてどうやらデザインはビジネスの中で、売上やブランド力向上を含めたさまざまな変数に効果を与えるらしい[1]。
デザインという職業は、当時の私にはとても輝いて見えた一方で、デザインとビジネスのつながりの具体性に関しては、なかなか見えてこなかった。それは、実際に仕事を始めてからいわゆる「上流」の仕事をしながらも同様で、見える範囲は狭く、また体系的な構造として見えるものではなかった。
2018年には、経済産業省と特許庁から『「デザイン経営」宣言』が発表され、企業経営におけるデザインの活用の重要性が示された。特にその効果は、ブランドとイノベーション力の向上による企業競争力の向上であるとされた[2]。デザイン経営が目指すところのデザインとビジネスのつながりを見つけるべく、2020年の9月から開講された「デザイン経営」宣言を社会実装するため多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム(通称「TCL」)にも一期生として参加した[3]。ビジョンドリブンなワークショップやデザイン思考のプロセスを活用したプロジェクトを通じた学習に加え、数々の企業の実践事例を講義を受けることで、なんとなくデザイン経営の概要を知ることができた。同時に、私自身が理解したいデザインとビジネスのつながりは、その先にありそうだということも明らかになった。
そこで出会った分野こそ「デザインマネジメント」であり、この記事を通じてこれまで調べてきたことを少し言語化したいと考えている。
デザインマネジメントの射程
さて、デザインとビジネスのつながりを考える中で、まず重要になってくるのは、デザインマネジメントという分野の射程を知ることである。
エモーショナルな情報では決してないにも関わらず読んでいる中で、その分野に対する自愛さえ感じた篠原稔和による『人間中心設計におけるマネジメント』の中では、デザイン経営とデザインマネジメントの関係性、デザインマネジメントの定義の変遷について次のように説明している [4]。
また、デザインマネジメントにおけるより普遍性を持つ定義としては、Brigitte Borja De Mozotaによる定義が個人的にはしっくりきており、ここでも紹介したい[5]。
これらの企業や組織におけるデザインマネジメントの役割を包括的に捉える定義に加え、デザインマネジメントの定義における目的や効果の側面に焦点を当てると、いくつかの重要な論点が浮かび上がってくる。
差別化
企業戦略的な観点からデザインを考えるときに、その目的の重要な一つとしてまず挙げられるのが、「差別化」である。経営学者であるマイケル・ポーターが提唱したSCP理論におけるコスト・リーダシップ戦略、差別化戦略、集中戦略のうちの一つであり、競争環境の中で、他社との差別化を行うことで高い収益性を見込むアプローチである [6]。市場における競争空間、時間軸、そして、プロダクトやサービスのライフサイクルを加味した中で、デザインへ投資をした結果が買い手にとっても重要な購買決定要因となるように、この戦略を実行していく必要がある [7]。
ブランディング
差別化戦略と密接に関わるのがブランディングである。私たち人間は、認知革命によって得た虚構という力を駆使することで、ダンバー数の法則を超えて仮想の共同体や信頼関係を構築することができる[8]。この観点から考えると、ブランディングという行為は、ある種の虚構を作り出す活動であると言い換えることができる。ブランドとは、企業やプロダクト・サービスに対する名前や品質以上のポジティブなイメージ[9]であり、この虚構が一度成立すれば、同じ品質や便益を持つプロダクトやサービスであっても、そのブランドが付与されることで、より高い付加価値をつけた形で売買されるようになるとされている [7, 8, 9, 10]。市場、企業、顧客の複数の関係者が相互にブランドに対して了解し合う関係性は、強い認知的虚構となるため単純な模倣は困難となり、結果として強力な差別化することになる。
イノベーション
そして最後に、近年一番着目を浴びているのがデザインのイノベーションに関する観点であり[7]、特にこれまで暗黙的だったデザイナーの思考やプロセスを方法論として確立・展開した「デザイン思考」が代表歴な例となる[11]。
イノベーションには、多様な解釈が存在するが、最も有名な説明の一つにクレイトン・クリステンセンによる『イノベーションのジレンマ』で紹介された、破壊的イノベーションと持続的イノベーションである。前者は、圧倒的な技術革新や使い勝手の向上により、新たな価値を生み出すことで市場を創造したり、既存の市場構造を大きく変化させたりする。後者は、既存のプロダクトやサービスを顧客ニーズを分析しながら、少しずつ継続的に向上させていくことでアプローチである[12]。
いずれのアプローチにおいても、デザインの活用は有効な手段である一方で、イノベーションの種類、プロダクト・サービスのカテゴリー、プロダクトライフサイクルの状況によって、デザインが活躍できる幅や効果は変化するため、イノベーションのためのデザイン活用には、文脈の適切な理解が必要と言える[7]。特に、新技術を人間中心のスローガンの元に、新たな意味を構築するとともに社会に翻訳し、実装していくことに、イノベーションにおけるデザインの価値がある[2]。
デザイナー組織マネジメント
以上の企業や組織におけるデザインマネジメントの目的的側面を考えたときに、もう一つ重要となってくるテーマがあり、それは企業や組織内に関与、または、所属するデザイナーをどのようにマネジメントするかということである。
前述したジョン前田による「Design in Tech Report」をはじめとする多くの参考文献によれば、企業や組織におけるデザインの活用とデザイナーの採用数は増加傾向にある。一方で、デザイナーとエンジニアとで、組織における人数を比較した場合、デザイナーの割合はおおよそ1割前後にとどまっている[1, 7, 13]。
デザイナー組織の運用方法には、大きく三つのアプローチがあり、事業部門にデザイナーを配置するパターン、デザイナーを独立した組織として中央に配置するパターン、前の2つを合わせたハイブリット型が存在する[7,14]。
デザインという文明
ここまで、デザインとビジネスの関係性を、デザインマネジメントという分野から、その普遍的な定義、目的、そしてデザイナーのマネジメントという項目に細分化して見てきた。
全体としての内容には納得感がある一方で、個人的には違和感がある部分がある。それは、企業や組織としてデザインを目的達成のために活用するためのデザインマネジメントの射程が、それを実践する主体に焦点が移動した時に「デザイナー」だけの話にとどまってしまうことである。デザイナー組織のマネジメントなどは、その際たる例だと言える。
確かに、デザイナーはデザインマネジメントの中心を担う役割が存在しえるが、一方で、デザインの活用は、デザイナーだけに限定されるものであるのだろうか?デザインという営みは、人間と私たちを取り巻く環境世界における私たちの基本的な態度であり[15]、言い換えればそれは、進化の中で培った文明のようなものだと捉えることができるのではないだろうか?
デザインを企業や組織の文明と捉える可能性に気がついたのは、冒頭で説明したモダニズムへの個人的なデザイン観に加え、OVERKAST代表/ÉKRITS編集長の大林寛と帝京平成大学助教授の中村将大がデザインの基礎課程をプロトタイピングするプロジェクト「デザインのよみかた」のポッドキャストの第63話「『デザイン温故知新』の話 前編」というエピソードが大きく影響している。エピソードの中では、中村はモダニズムをデザインにおけるある種の典型や文明として位置付けられる可能性を示唆している[16]。そして、この考え方は、デザインをもう一つメタな視点から捉えることで、応用することができる。
同様の視点からデザインを捉えたとき、上平崇仁の著書である『コ・デザイン』では、「ホモ・デジナーレ(デザインするからこそ人間)」と表現があり[17]、エンチィオ・マンチーニによる「デザイン・ケーパビリティ」やナイジェル・クロスの「デザイン・アビリティ」、そして、カミル・ミスレウスキの「デザイン態度」などは、デザイナー以外の人々が本来的に持つデザイン能力についての検討・言及がなされている[18,19,20]。また、『デザインマネジメント論のビジョン』で、八重樫、佐藤らが提唱している「デザインの考え方を用いた組織のマネジメント」[21]は、このような考え方と近い視点であると言えるかもしれない。
つまり、デザインマネジメントが本来の価値を発揮するためには、企業や組織全体に、このデザインという文明をインストールすること、それ単体で非常に重要であり、デザインマネジメントの実践の前提になってくる(文明、文化、文脈あたりの考え方は、また別途整理したい)。
デザインの活用度合いに関するモデル群
デザインという営みを企業や組織における文明として捉えたときに、それはさまざまな指標で体系化し、段階として分析することで、その度合いを推し量ることができると考えている。文明の構成要素的な観点から提案されていたかどうかは定かではないが、これまでにも企業や組織におけるデザインの活用度合いを言語化・可視化するモデル・フレームワークはいくつか存在しており、ここでいくつか見ていきたい。
デンマーク・デザインカウンシル(DDC)によるデザインラダー
企業や組織のデザインの活用状況を把握するためのアプローチとして最もよく知られているのが、デンマーク・デザインカウンシル(DDC)が提唱する「デザインラダー」である。デザインラダーでは、デザインの活用の段階を以下の4段階に分類している[22]。
ニョルニンガーによるデザイン成熟モデル
デザインラダーと同様に、デザインの活動を4段階で評価しつつも、その活用度合いを組織内における位置関係で表現したのが、サビン・ニョルニンガーの「"PARTS AND WHOLES: PLACES OF DESIGN THINKING IN ORGANIZATIONAL LIFE (2009)"」に登場するモデルがあり、論文の中ではそれぞれの段階特性と一致するプロジェクトを分析し、その内容と効果を整理している。また、当該モデルでは、それぞれの段階で登場するデザインカテゴリー(分野)を明記することで、どのようなデザインが必要とされているかを示唆している [23]。
このモデルにおけるデザイン活用の可視化は、デザインを文明として捉えたときの広がり方として直感的な理解を促していると感じる。
InVisionによるデザイン成熟モデル
アメリカのデジタルプロダクトデザインをサポートするツールを提供しているInVisionは、2019年に77カ国、24業界の2200に及ぶ企業や政府組織に対して実施した企業・組織におけるデザイン活用の習熟度に関する調査を行い,その結果を体系化した。
この調査においては、企業や組織の高いレベルの習熟度が、ビジネスに対してより多くの便益をもたらすという相関関係をベースとしたモデルを提唱しており、次の5つのレベルと関連性が深い成果物・便益が定義されている [24]。
InVisionのモデルの独自性は、これまでの4段階モデルを5段階へと細分化するとともに、それぞれの段階における成果物・活動や主要なビジネス場の便益に言及した点にあると言える。
ハンベーカーによるデザイン成熟モデル
オランダのデザインストラテジストであるデニス・ハンベーカーは、前述したInVisionのデザイン成熟モデルを一方通行の段階的なモデルではなく、ピーター・センゲによるシステム思考のディシプリンを取り入れた関係性のモデルに転換した[25]。
このモデルの興味深い点は、企業や組織におけるデザイン活用の5つの主要な指標(頂点)のどのから浸透を図っても問題ないという点にある。つまり、デザインを活用しようとする企業や組織の現在のプロダクト・サービスの特性、人材、文化に合わせた推進の可能性を示唆している。
デザイン経営「9つの入口」
デザインを企業や組織にインストールするさまざまな入り口を提供するという観点からは、現在のデザイン経営を牽引している特許庁のデザイン系プロジェクトチームと株式会社KESIKIから『中小企業のためのデザイン経営ハンドブック』として9つの入り口と事例が合わせて紹介されている [26]。
これまで紹介したモデルやフレームワークと比較した時に、この9つの入り口は、対象となる企業や組織に所属する個人レベルから行動・実践できる粒度となっており、デザインを身近な存在として捉えるきっかけになる可能性があると感じている。
Design Attitude Measurement (DAM)
先ほど触れた『デザインマネジメント論のビジョン』で、意味生成によるデザインマネジメントという新たな方向性を示した八重樫、安藤らは2022年3月に「企業のデザイン力を測定するためのツールの開発」というタイトルで、専門職としてのデザイナーだけではなく、一般的に「デザイナー」という肩書きでは括られない従業員のデザイン態度も含めた企業組織としてのデザイン力を測る「Design Attitude Measurement (DAM)」に関する提案を『デザイン科学研究』にて発表した [27]。
DAMでは、組織のデザイン力向上の重要性を背景としたデザイン態度に関する先行研究を参照しながら次の5項目に対して6段階のリッカート尺度を利用した15問のセルフチェックを行い数値化するアプローチを提案している [27]。
DAMは、デザインラダー、ニョルニンガーやInVisionのように、組織のデザイン力の現状を理解するために利用することができるという点では一致している。一方で、複数要素を統合した単一の達成段階で説明するのではなく、デザイン能力に関する主要素を分解定義し、それぞれを階層関係で扱わずに同列の要素とし、個別に段階分けを行うことで、定量化している。結果として、これまで紹介したモデルより詳細な状況把握を可能にしている。さらに、DAMの定量化された結果は、組織や個人の文脈に即したデザイン力向上のための質的調査への示唆をもたらす。
HCDリーダーシップとHCDにおける組織の成熟モデル
本記事の中で何度も紹介している『人間中心設計におけるマネジメント』では、これまで紹介してきたさまざまなテーマを包括的・網羅的にまとめてある中で、ここでは「HCDリーダーシップ」と「HCDにおける組織の成熟モデル」について紹介したい。
本書において、第7章にてHCDリーダシップについて、リーダシップとそれと対を成すフォロワーシップの関係性の整理から始まり、PM理論、SL理論、EQなど関連するテーマを紹介しながら多くのリーダーシップの在り方を提示し、HCDリーダーシップの要素をモデル化している。企業や組織の中で、デザインという文明をインストールする動体としてのHCDリーダーシッは非常に多岐に渡る [4]。
企業や組織ごとの固有文脈が存在する中で、このような広範なリーダシップに精通する必要性があることは、仕事をしている中での実感にも繋がる。
また、第8章では、「HCDにおける組織の成熟度」について、デザインと関係性の近いユーザビリティ、UX、ソフトウェア開発などの領域からビジネス、イノベーション、DXとこれ以上の網羅性はないと言っていいほどの多数の成熟モデルを参照した上で、 ソシオメディア株式会社での実践を織り交ぜた6段階のHCDの成熟モデルを提案している[4]。
さらに、上記の6段階の成熟モデルに加え、企業や組織がHCDをどのように捉え活用しているかを評価するためのフレームワークとして、次の5つの評価軸と中項目(本記事では省略)を定義している [4]。
筆者による統合モデル
ここからは、これまで紹介してきたモデル群を参考に、私自身がどのようなモデルを検討しているかについて少し紹介したい。
デザインアプローチ
私自身は、デザインと私たち人間との関係性を検討する中で、デザインは、人間の本質的な営みであり、文明であると解釈した [11, 15, 28]。ただし、「デザイン」という単語だけでは、意味が広く扱いづらいという観点から、デザイン思考でもなく、デザイン態度でもなく、「デザインアプローチ」という言葉を利用することで、本質的営み、プロセス、マインドセットを内包した考え方として使い始めた。そして、デザインアプローチの射程を限定するために、「デザイン」という行為を意図的に事業活動全体において実践することであり、日々の業務の中で息をするようにそこに関わる全ての人によって取り組まれるべき活動とした [28]。
デザインアプローチは、3つのコアバリューと5つのコアスキルから構成される [28]。
ここで紹介してる3つのコアバリューは、これまでのデザイン・ケーパビリティやデザイン態度の要素をより厳選し、デザインプロジェクトを推進するにあたり必要な心構えを規定している。
5つのコアスキルに関しては、ハンベーカーのシステムモデルを引用する形で現時点では定義している。いずれの構成要素も、私自身と近い立場にある企業や組織における1人のデザインという営みの実践者にとって、何をどこから始められるられる可能性があるのか?という問いに答えること主たる目的として想定している。
一方で、自らが所属する企業や組織におけるデザインの活用度合いがどの程度であり、その現状と課題に応じてどのようにアプローチすべきか?という問いには答えられない形になっていた。
習熟度の現在地を知る方法
「企業や組織におけるデザインの活動度合いを把握する」ためには、度合いを階層化し、定義する必要がある。これまでも見てきた成熟度に関するモデルは、そのような形をとっている。そして、成熟度に関わるモデルの源流を見つめるとカーネギーメロン大学のソフトウェア研究所で生まれた「Capability Maturity Model (CMM)」にたどり着き、現在システム工学、プロジェクトマネジメント、ソフトウェア開発の分野活用されている「Capability Maturity Model Integration(CMMI)」に行き着き、これを応用することでより直感的な現状把握の方法を作ることができるのではないかと考えた [4, 29]。
デザインアプローチの活用状況を可視化するためのチェックリスト(WIP)
ここで紹介するのは、現在進行形でアップデートを続けているデザインアプローチの活用状況を測るためのチェックリストであり、今後さらなる実験やインプットを経て変更し続けるものである。また、現時点ではコアスキルにおけるレベル分けのみをまとめており、コアバリューの発揮に関する相関関係までは整理できていない。
網羅性や妥当性に関して非常に未熟な部分が多いが、一方でこのチェックリストを見ることで、少なくとも自らが所属する企業や組織のデザインアプローチの活用状況を自分自身の視点から把握することができる。これを同一組織において複数の視点から同時に自己評価を行うことで、実態に近い現在地を理解することにつながり、さらなるデザイン文明の成熟に向けて必要な施策の検討に打つことができると考えている。
以下に本資料へのURLを記載しているため、ぜひコピーし、利用した感想・フィードバック等をいただけると大変ありがたい。
今後の展望
今後の展望としては、まず自社、他社を問わずさまざまな事例を蓄積し、状況に応じた有効なアプローチをまとめていきたいと考えている。また、すでにいくつかの課題については触れているが、本チェックリストの継続的なアップデートにも取り組みたいと考えている。
まずは、コアスキルのうち少なくとも組織的なデザインアプローチを実践できる人材の育成・成長環境に関しては、明らかに追加できる余地がある。また、デザインという文明を企業や組織にインストールした結果として起こる変化や効果との因果関係についてもより具体的なモデル化が必要だと考えている。
そして、逆説的かもしれないが、このような成熟の段階は、高いレベルに到達するほど、現時点での世間一般におけるベストプラクティスとは異なる、その企業や組織特有の知恵や組織的属人性とも呼べるような方法論が確立する土壌が出来上がるのではないかと考えており、すでに高い成熟度にある企業や組織からそのパターンをどのように効果的に抽出・可視化することができるかについても、検討していければと思う。
参考・引用文献
[1]
John Maeda et al.
"Design in Tech Report (2017)."
https://designintech.report/wp-content/uploads/2017/03/dit-2017-1-0-7-compressed.pdf
2]経済産業省・特許庁
「デザイン経営」宣言 (2018)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180523001_01.pdf
[3]
多摩美術大学
多摩美術大学クリエイティブリーダシッププログラム(ウェブサイト)
https://tcl.tamabi.ac.jp/
[4]
篠原稔和
人間中心設計におけるマネジメント (2022)
[5]
Brigitte Borja De Mozota.
Design Management: Using Design to Build Brand Value and Corporate Innovation (2003).
[6]
入山章栄
世界標準の経営理論(2019)
[7]
森永泰史
経営者が書いたデザインマネジメントの教科書(2016)
[8]
ユヴァル・ノア・ハラリ(著)、柴田 裕之(翻訳)
サピエンス全史(上)文明の構造と人間の幸福(2016)
[9]
岩崎邦彦
小さな会社を強くする ブランドづくりの教科書(2013)
[10]
高瀬浩(著)、バルークビジネスコンサルティング(編集)
ステップアップ式MBAマーケティング入門(2005)
[11]
本村章
デザインという営みの本質を探る1(2019)
[12]
クレイトン・クリステンセン(著)、玉田俊平太(監修)、伊豆原弓(翻訳)
イノベーションのジレンマ増補改訂版(Harvard Business School Press)
[13]
Nielsen Norman Group.
"Typical Designer–to–Developer and Researcher–to–Designer Ratios (2020)"
[14]
ピーター・メルホルツ (著)、 クリスティン・スキナー (著)、 長谷川敦士 (監修), 安藤貴子 (翻訳)
デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド(2017)
[15]
本村章
デザインという営みの本質を探る2(2020)
[16]
大林寛、中村将大
「デザイン温故知新」の話 前編(ポッドキャスト)
[17]
上平崇仁
コ・デザイン —デザインすることをみんなの手に
[18]
Ezio Manzini.
"Ezio Manzini on Design (2015)"
[19]
Nigel Cross.
Designerly Ways of Knowing (2006).
[20]
Kamil Michlewski.
"Design Attitude (2015)"
[21]
佐藤典司、 八重樫文
デザインマネジメント論のビジョンーデザインマネジメント論をより深く学びたい人のために(2022)
[22]
Danish Design Center.
"The Design Ladder (2001)"
[23]
Sabine Junginger
"PARTS AND WHOLES: PLACES OF DESIGN THINKING IN ORGANIZATIONAL LIFE (2009)"
https://www.researchgate.net/publication/266281802_PARTS_AND_WHOLES_PLACES_OF_DESIGN_THINKING_IN_ORGANIZATIONAL_LIFE
[24]
InVision.
"The New Design Frontier: The widest-ranging report to date examining design’s impact on business (2019).”
[25]
Dennis Hambeukers.
“The Design Maturity Model And The Five Disciplines of The Learning Organization.”, 2019.
[26]
特許庁
中小企業のためのデザイン経営ハンドブック(2021)
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/document/design_keiei/chusho-handbook.pdf
[27]
八重樫文、安藤拓生、後藤智、森田崇文
企業のデザイン力を測定するためのツール開発(2022)
https://www.ritsumei.ac.jp/research/rcds/file/2022/1_8_Yaegashi.pdf
[28]
本村章
デザインアプローチという考え方
[29]
CMMI成果物チーム
開発のためのCMMI® 1.3 版(2010)
https://resources.sei.cmu.edu/asset_files/WhitePaper/2011_019_001_28778.pdf