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英文法授業レシピ1 仮定法番外編

これまで5回にわたって仮定法の授業案を提示してきました。
なんだ、結局受験英語じゃないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません(そんな人はここまで読んでないでしょうが)。

たとえば、If I were youなんて古臭くて、口語では普通にIf I was youだよ、という事例を持ち出し、受験英語は本当の英語を反映していない、ということは簡単です。

では、仮定法から少し視線をそらしてThere is / are構文はどうでしょうか?
① There are frogs in the pond.
② There is frogs in the pond.
③ There's frogs in the pond.
この中で容認されない文はどれだと思いますか?

明らかに②と③は主語と動詞の数が一致していません。
受験英語はもとより口語でだって、んん??となる人は少なくないのではないでしょうか。

しかし、Larsenf-Freeman氏は下記掲載の書籍で、②は文法性に疑問が生じるものの、③は容認されていると述べます。

なぜこのようなことが生じるかというと、彼女はChaos / Complexity Theory(カオス・複雑系理論)を持ち出します。端的にいうと、言語は常に変化する存在である、ということです。
それ故、文法を学ぶ際には、不変的なルールを教え込むというより、文法の規則性を練習や実際の使用を通してボトムアップ的に習得していこう、と提唱します。

さてここでIf I were youを教える意義を考え直しましょう。
仮定法において最も大切な概念は、現実との乖離でしょう。
主節の助動詞の過去形にせよ、条件節の動詞の過去形にせよ、
あえて過去形を使うことによってRemotenessを他者に伝えることが可能です。

であるならば、重要な指導ポイントとして、過去形にしようということさえ抜け落ちなければいいのではないでしょうか。
その中でbe動詞だけ特別扱いでwere になることもあったんだ。としてしまうことも可能でしょう。

実際には昔々の動詞には仮定法用の活用と直説法用の活用があって、その後仮定法用の活用が廃れていき、be動詞のwereだけが残った、という英語史もあります。

そうです。Larsen-Freeman氏に述べていただいた理論通り、言語は変わっているんですね。でも、formが変わっただけでmeaningやuseは変わりません。いや、formも表面的に変わっただけで本質であるRemotenessを示すために時制をずらす、という操作は変わっていないんです。

そしてグローバル化の中で、ノンネイティブが英語を用い、彼らの生活環境で彼らの生活や文化に合わせたオリジナルの英語を発達させていくでしょう。

その際、文法書にも載っていない表現に出会うことはごまんとあるでしょう。であるからこそ、学校教育では文法の根幹を扱って、原則はこうで変化もあるからね、でいいのではないでしょうか。

だから私はIf I were youを仮定法のスタートにすることはなにも問題ないと思っています。むしろ仮定法の本質を丁寧に表したいい例文だと思います。

ちなみに、学習者である生徒に英語史の話をしなくてもいいかな、とは思いますが英語教師としては知っておいて損はないと思います。
むしろ、「なんでwereなんだろ?」と疑問に思って調べる姿勢を身に着けておくといいと思います。便利な時代でネットで10分も調べればほとんどの疑問は解決されます。
生徒よりはレベルの高い学習者として、学び続ける姿勢は持ち続けたいものですね。

今日のポイント
仮定法の根幹はRemoteness。先生も疑問をもつ習慣を。

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