英文法授業レシピ1 仮定法⑤
今回は一通り仮定法を学習した生徒にさらにレベルアップしてもらうための授業案です。
上級者向けの指導に入る前に、まずは初級者に中級者になってもらいたいので、私なりの定義をまとめます。
初級者:仮定法のルールは理解・習得している。意味理解はできている。使ってみようと言われれば使える。
中級者:自分の意志で仮定法の表現を使用できる。
上級者:自分の意志で多様な仮定法の表現を使用できる。
実は初級者になるのが一番大変なので、説明や練習、ここではなんて言う?みたいな場面毎で一言!のような練習は十分行いたいです。
実際には中学生で仮定法を教えても初級者にすらなれない生徒は多いと思います。したがって、高1で初級者になって、高2~高3で中級者になれればいいかな、というのが本音です。
さて、仮定法を用いることで【現実に起こりえない仮定や過去の行為への叱責など】が表現できるようになります。
そこで、初級者に対してこれらを表現せざるをえないテーマの表現活動を課します。ど定番のところだと、無人島に何をもっていく?とかタイムマシンがあったら、とかですね。
これはこれで面白いですが、なぜこの話題で話さなければor書かなければいけないのか、という必然性が乏しいです。
さらに、誰に向けて話すのかor書くのか、という相手意識も欠けています。
ついでに、発話のほぼすべてが仮定法になりかねません。仮定法も使うし、それ以外も使う。その中で自分の意志で選択できる能力を養わなければいけません。
こんなテーマはどうでしょう?
「本校では来年度からICT教育を推進しよう、という議論があります。生徒の立場から教師へアドバイスをお願いします。」
身近なテーマでありながら、
①教師がアドバイスを求めているという必然性
②教師へ向けて伝えるという相手意識
③自分の経験(事実)と仮定を使い分ける必要もあります。
「どうせ無理でしょ」というスタンスであれば仮定法を全面に出して書くこともできます。
「塾でやったけど○○がないと厳しい」という内容を、事実で伝えることもできるし、仮定法で「○○があったらなあ」とすることも可能です。
もちろんこのような課題設定だと仮定法を全く使わない生徒も出てきます。しかしそれが正常な発達段階かもしれません。すなわち彼らは未だに意識をしてもなお初級者から脱却できていない、ということです。その場合、初級者向けの指導をさらに充実させる必要がある、という教師側への貴重なデータとなります。
ただし、課題設定と同時に、教師からモデルを3つほど示しておくと上記のような生徒も仮定法を使おう、と少し挑戦してくれます。3つのモデルはそれぞれ、初級・中級・上級に該当します。
初級は基本的な仮定法のみ
中級は仮定法を複数回使用
上級は複雑な仮定法を使用
複雑な仮定法ってなんだ?と思われるかもしれませんが、イメージしやすいのは倒置表現だと思います。
If it were not forが使える生徒であれば、Were it not forにするだけで、かなり大人びた雰囲気が漂ってきます。
あるいは、仮定法過去と過去完了の時制のズレとか、仮定法現在を使ってみるとか。
おそらく、多くの英語教師も意識をしないと上級者向けのモデル英作文は書けないと思います。その思考プロセスを生徒と共有することで、初級者から中級者、中級者から上級者へステップアップできるようになります。
ここまでWritingで話を進めてきましたが、存外、Speakingでも仮定法はキラッと光ります。
高校生ともなると「もしあの時~しなかったら」みたいな内容は割と簡単に思いつくんですよね。
ずるいかもしれませんが、Speaking活動の前に「伝家の宝刀」ということで、【If it had not been for ○○】を復習しておくんです。もちろん主節の時制は内容によって異なることも付け加えて。
すると生徒は面白いくらい使いますね。ドーピングのような気もしますが、まずは意識して使えるレベルにもっていきたいのでOKです。
実際、千葉大教育学部(二次試験で英語ディスカッション&英作文有)の受験生に練習がてらこの手のドーピングをして、英語科の若手教諭とディスカッションしてもらいました。
若手教諭がびっくりするほど流暢に仮定法や関係詞を使用していました。
この受験生は試験本番でも同じように堂々としゃべれた&書けたらしく、見事合格を勝ち取ってきました。
今日のポイント
複数モデルを示しつつ、適切な表現の機会を。使って欲しい項目に意識を向けさせよう。
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