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劣等感の克服/NiziU リオさんのケース/アドラー心理学

こんにちは、キャリアコンサルタント 松川です。
今回もアドラー心理学について語っていこうと思います。
前回、NiziUのメンバー、アヤカさんを事例に、劣等感についてお話をしました。今回は、同じくNiziUメンバーのリオさんを事例として、共同体感覚についてお話させてください。
共同体感覚は、アドラー心理学の核心となる考え方です。共同体感覚は、劣等感を克服する大きな支えになります。

成長するのを待ってはもらえない


劣等感、つまり、自分は周りより劣っている、
あるいは自分が持っている夢に、現実の自分は届いていない、
そういう思いがあるからこそ、ひとは努力して、もっと成長しようとする。
健全な向上心を持ち続けて、夢に向けての努力につながっていく。
劣等感にはそうした一面があります。
そして、その一面を支えるのは、自信です、ともお話しました。
目の前に、ハードルが高い課題が出てきた時、
困難な課題を乗り越えられるんだという自信をもっているからこそ、
きちんと課題に向き合える。

アヤカさんも、本当はもっと紆余曲折があったのかもしれません。
ただ、どんなことが他にあったにせよ、
彼女が人並みならない努力を重ねていったことは事実。
努力はひとと比較できないですよね。
トレーニングでやっていること、とか、時間は比べられても、
そのトレーニングにどういう思いで取り組んでいるのか、
それをやることでどんな実力をつけようとしているのかは、
ひとによって違いますから。

努力は裏切らない。確かにそれは真実かもしれません。
努力を続けて入れば、必ず結果は出る。
そう信じることは、とても大事なことだと思います。
ただ、成果を出すまで、いつまでも環境が待ってくれるとは限らない。
ビジネスや仕事では、期限がとても重要な意味を持ちます。

Niziプロジェクトもビジネスです。

2020年秋、デビューというのは、プロジェクトがスタートした時点、
メンバー選考が始まる前から決まっていました。
だから、デビューまでの決められたスケジュールのなかで、候補者一人ひとりが、審査のタイミングでしっかり自分の実力を見せていく必要があった。
結構、過酷な状況ですよね。
審査するパク・ジニョンから与えられた課題と向き合い、その課題にどう応えていくか、一人ひとり、与えられた時間の中で、自分で見つけていかないといけない。
逆に言えば、JYエンターテイメントという企業体から見たとき、6ヶ月以内に育てなくてはいけない、ということです。
合宿参加メンバー、そして育成するトレーナー、スタッフの方たち、双方がその緊張感を共有していたはずです。
だからこそ、トレーナーやアドバイスをもらいつつ、他のメンバーと共に取り組んでいくということは、非常に大きな心の支えになっていたんだと思います。短期間で、実力を伸ばすというのは並大抵のことでは不可能です。単に参加者同士の競争心をあおっていただけでは、飛び抜けた成長は難しい。

自分の殻を破る

飛び抜けて成長するためには、自分の殻を破っていく必要がある。

Niziプロジェクトの選考は、最後までデビュー人数は決まっていないとずっと言われていた。
全員デビューする可能性もあった。
チームで、グループでのミッションもあり、そこでは、一体感も求められていた。
参加者同士ライバルでありながら、絆や結びつきを生じさせる必要があった。
競争心を他の参加者に向けていては、一体感、絆が生じることはありません。本質的な競争心を自分自身に向けてるからこそ、お互いに認め合う、信頼し合うということが生じるのだと思います。
一人ひとり、自分の課題に取り組むことが求められ、ミスをしても、それは自分の責任。自分以外にミスの理由は求めないということです。
韓国合宿では、パク・ジニョンは、審査の基準は成長だと言っていました。成長とは、自分にどれだけ向き合って、自分を追い込めるかということだと思います。

ダンサーにしか見えない。観客と心を通わせようとしていない


NiZiUとしてデビューしたメンバーのひとり、リオさん。
彼女は元々ダンスの経験も素質も持っていましたが、
東京合宿では、「ダンサーにしか見えない。観客と心を通わせようとしていない」とパク・ジニョンから指摘されてきた。
彼女のダンスは力強さ、ダイナミックな動きが特徴で、その実力は高く評価されていた一方、「ダンサーから歌手に変わる」ことが、彼女にとっての課題でした。
韓国へ来て、彼女は、その課題に懸命に取り組んでいきます。


最初の個人ミッションのとき、リオさんはこれまでとは違う、非常に女性らしい表現を求められる曲に挑戦します。
ユンビの「Lady」という曲ですが、この曲は彼女が得意とする力強い、ダイナミックな動きではなく、柔らかい、繊細な表現の曲です。
最初はトレーナーから「Ladyに見えない」と叱責を受けつつ、1ヶ月練習を重ねて、ステージ上で、新たな自分の一面をしっかりと印象づけることができた。ダンスについては指摘するところがないと言われるくらい、完璧なパフォーマンスを見せることができた。
そこで、リオさんは、パク・ジニョンから新たな課題を与えられます。
「音程はとても不安定です。リオさんについては、今後音程がどれくらい安定したかを見ます」


次は、チームミッションとして、マコさん、マヤさんと3人で、パク・ジニョンの「Swing Baby」、24音符のアップテンポで、パク・ジニョン自身が「高難易度」とコメントするほどの曲に取り組んでいきます。
メンバー同士で、お互いに意見を出し合い、いいところを吸収しあって、振付も自分たちで作り上げていくのですが、このステージで彼女たちは「練習生のステージだと忘れて見ていました」と、高い評価を受けます。
このステージで、リオさんは、パク・ジニョンから
「リオさんの声が、一番豊かに聞こえた」
「豊かな声量を維持しつつ、音程も安定して歌えていた」
という評価を受けます。
個人ミッションで与えられた音程の不安定さを、リオさんは見事に克服した姿を見せた。

ところが、次のグループミッションに取り組む際、練習中にパク・ジニョンが現れるシーンがあって、リオさんは歌にまだアマチュア感があると指摘されるんですね。
「歌の練習量を増やして自信をつけなさい」と言われてしまう。
彼女が悔しさ、自信喪失を語るシーンがあって、そこで、
「自分は何をしてもこうだ」という先入観に囚われている、そういう状態から抜け出せないという不安を語っている。


それでも、リオさんは心を切り替えて、必死に歌の練習に打ち込んでいく。
1人でトレーニングルームで、自分のパートを繰り返し、歌い続けている。
そこへ、他のメンバーが現れて、一緒になってリオさんの歌の練習に取り組んでいく。
逆に、ダンスの苦手なニナさんにリオさんが教えることもあって、
お互い足りないところを教え合って、チームワークを高めていく。
このグループミッションでは、リオさんは、パク・ジニョンから好評価を受けます。


「自分は何をしてもこうだ」という先入観。Niziプロジェクトに参加する以前から、それと戦いつづけてきたんじゃないのかなと感じます。
ただ、一方で、本当にステージに立つことを楽しんでいるし、好きなんだなというのが伝わってくる。
それと、チームミッションでのマコさん、マヤさん。
グループミッションでのニナさん、リマさん、リリアさん。
メンバー同志支え合う関係があったからこそ、自分との戦いにしっかりと向き合うことができたんだと感じられる。

自分の殻を破るには、共同体感覚が必要


共同体感覚。
シンプルに言うと、ここが自分の居場所だと感じられ、周りにいる人たちと協力し合い、貢献し合う、それを感覚としてどれくらい持っているか。
Niziプロジェクトを観ていると、一人ひとりが、とても高い共同体感覚を持っている、と感じます。
人は一人ひとり違う。長所も短所も違う。
だからこそ、人は社会を作り、お互いにいいところ、悪いところを補い合って生きている。
ただ、共同体感覚は一定じゃないんですね。
持っている、持っていない、有るか無いか、ということではなくて、
共同体感覚は、人は誰でも持っている。
ただ、その中身や程度が人によって異なる。

これは、劣等感も同じです。
劣等感も、その中身や程度が人によって違う。
そして、劣等感が健全な向上心として機能しないというのは、
自信がない、あるいは自信が低いということと、
共同体感覚がない、あるいはその感覚が狭いということが関係している。

リオさんのケースで、自分に鞭打って練習を重ねる、自分を追い込む反面、
これは相当ストレスのかかる辛い心理状態だったはずです。
そんななか、「自分はいつもこうだ」と思ってしまったというのは、どうしていいかわからない心理状態だったんではないでしょうか。
しかし、そういうリオさんに寄り添うメンバーが支えとなって、そういう厳しい状態から抜け出し、笑顔を取り戻し、さらに自信をつけていった、そんなふうに感じます。

「劣等感はあらゆる精神的な問題の原因にもなる」。
ただ、そういう行動の妨げになってしまう、健全ではない劣等感であっても、ここが自分の居場所だと感じられ、周りにいる人たちと協力し合い、貢献し合う人間関係の中では、健全な向上心につなげていける。
共同体感覚は、課題に前向きに取り組むための支えになるものですが、育てていき、育てられていくものです。

参考文献


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