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これが公立高校の最先端エリア!福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校。

福島県の浜通り、いわき市から電車で20分ぐらい、広野町にある福島県立ふたば未来学園高校。東日本大震災の復興支援の象徴的な高校として、創設段階からカタリバが関わってできたということもあり、いつか訪れてみたいと思って、この度ようやく念願かなって訪問しました。文部科学省指定事業「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」研究成果発表会の開催の情報を得て、公立高校の探究最先端の取り組みを学ぶ目的で、スタッフと一緒に、結局北海道からは我々2名だけの参加となりましたが、行ってきましたので、今回はそのレポートです。

新しい校舎なので、まずハード面から圧倒されます。正門から、雰囲気がキャンパスっぽく中庭を抜けて左でに土間(職員玄関ではない)から中に入ると、そこにはドーンとオープンスペースがあり、ここはまるで文京区のb-labか、高円寺のカタリバ事務所か?!と思わさられる、空間。その奥にはカフェラウンジもあり、左隣にトイレを挟んで、今回のメイン会場である「みらいシアター」は、コンカリーニョ(札幌西区琴似にある劇場)かと思わせられるような空間もあり、入ってからすぐに度肝を抜かれました。さすが、カタリバの他拠点事業の経験を活かせています。驚くのは私立でなく県立高校の空間だということです。震災復興のため、かなりの資金投下など背景が違うにしろ、公立高校でここまでやれてしまっているという事例は、考え方によってはできるといえます。例えば「ふるさと納税」で一時的な大きな金額を獲得できている自治体だと、やれるかもしれません。

入り口正面の受付カウンター

全国から150名ほど集まった最初のセッションは、南郷副校長の熱意の入った学校概要紹介、探究の授業については林先生のプレゼンを聞き、その後生徒たちの探究の授業見学へ各教室を見て回わります。ほぼ全員が教室移動するなか、カフェラウンジ(ふぅ)に高校生がいたので声かけると、ここが探究です、というので話を聞いてみると、校内カフェラウンジの経営を探究にしており、どうやったら売り上げを伸ばせるか、を取りくんいるとのこと。しかもこのカフェ運営そのものは部活動としての取り組みでもあること。将来はカフェ経営をしたいという起業の志を持っていること。さらに、名刺もらってくださいというから名刺交換をすることになり、肩書きが一般社団法人理事…と驚いて、もう一人も現れて、えええ?!という状態に陥り、見学するはずの教室にたどり着く手前で、すでに圧倒されてしまいました。

カフェを運営する高校生たち

お昼を持っていなかったのでパンと洋菓子を購入し、その後各教室をぐるぐる回ります。各教室の風景は、札幌西校でも実践しているように、生徒たちが好きなように校舎内で探究しており、タブレット片手に、様々な取り組みをグループで実施していました。特徴的だと思ったのは、部活動そのものを探究テーマにしているチームが多いこと。これは、アスリート養成コースがあるため、プロになって活躍することを目指して日頃から部活漬けの生徒がいるから。そして探究の授業の枠組みは、高校1年生は2単位、2〜3年生は3単位で、合計8単位(高校卒業単位数は74)。普段は火曜の午後の枠組みで授業構成されていました。普通の公立高校だと1年生から3年生まで1単位ずつの合計3単位というのが主流ですから、相当数が割り当てられています。

お昼に入り、案の定カフェは行列をなしており、生徒たちはせっせと忙しく働いているその横では、「久しぶり〜」といった面々との再会が起きました。全国高校生マイプロジェクトアワード(通称「マイプロ」)で一緒にスタッフ側として、年に一度は会っていた人たちと3年以上ぶりの再会が続きます。

午後からは、高校生の探究の成果発表の2つの事例(ほとんどマイプロの全国大会のプレゼンを聞いている感覚)を聞いて、5つの分科会に分かれました。どれにしようか、かなり迷いつつも第一分科会の「総合的な探究の時間の指導法と評価〜探究プロセスとルーブリック〜」にしました。札幌西校での実践と比較してどうなのか、北海道の教員たちに持ち帰るお土産が多そうだと思ったからです。

探究の進捗を4つのステージに区分して、教員の4つの関わり方を表現した図

情報量が多いのでその一部分を紹介しますと、生徒の探究テーマを決めるまでの道のりが大きな苦労するポイントで、これは全国どこでも同じような悩みであることが確認できました。そして、今回数あるなかで今後検討すべきと思ったのが「教員のロールと関わり」についてでした。探究の授業中に教員がどう関わっていいのか、これには経験に基づいた体系付が必要だと思っていたところ、かなり進めていることに興味がそそりました。

自分がずっと思っていた研究考察したいことがあり、今回のロールモデルは、そこに紐づくかもしれないと思いました。12年ほど前に中原淳先生が出した『職場学習論』の転用を考えると、探究の授業に関わるプレーヤーとの対比からのモデル構築ができるのでは、という考えです。職場学習論では、上司、同僚、部下という立場と、業務支援、精神支援、内省支援の3つに分けて、どのような影響があるかを考察しています。高校の探究の場合、上司にあたるのは教員、同僚はクラスメイト、部下の位置付けになるのはグループ単位で探究活動を実施しているとその役割の中で起きるか、もしくは後輩となります。さらに他に考えられるプレーヤーが、外部講師、コーディネーターのような存在が出てくると思います。それらと、業務と精神と内省と3つの支援の関わり方(もしくは4つ目の新たな関わりがあるかもしれません)を考察すると、ロールモデルができるのかもと思っていましたが、それとは少し違うフレームですけど、かなり参考になると思いました。

「みらいシアター」本格的な演劇や上映会もできる、多目的スペース

といったことで、あっという間にプログラムの最後になりまして、鈴木寛(東大•慶應教授)先生らのコメントいただいて研究成果発表会が終わりました。どれもこれも完成度の高い内容だったので、最初から最後まで圧倒され続けた視察でした。その後、会場をいわき市に移動し、教員のみなさんらとビールを飲みながら福島県の事情をお聞きしたり、今回の会の裏方の苦労などお聞きして、さらに追加の深掘り。そのうち北海道から視察団を形成しないとならないな、という思いで帰路につきました。

土間から入るとドーンと存在感がある「カタリバ」

最後に、この学校は現在カタリバの職員が6名在中しています。コーディネーターという立場ですけど、一つの学校にこれだけスタッフがいるというのもびっくりですが、「双葉みらいラボ」といったスペースの運営も担っていますし、もちろん探究の授業も担っています。生徒や先生方からもカタリバのスタッフの意味合いや大きさが随時飛び交っていましたので、教員という既存のイメージにあるような学校運営スタッフのあり方にも大きな影響が出てくるでしょう。まさに未来を見せてくれる学校だと思いました。北海道の道立高校が追いつくのは3,40年ぐらいかかるかもしれません。


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