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自律型スマート停留所システム@2023 Summer LRT Forum in Yokohama


noteのチカラ?

横浜で行われたLRTフォーラムのチラシ

レクチャーへのオファー

春に初めてnoteを活用して、それまで温めてきたプロジェクト「自律型スマートバス停留所システム」を公開したところ、早速山本前橋市長から彼のブログに取り上げられたりと、僅かながらも反響を肌で感じましたが、まだまだ世の中のニーズに合致したプロダクトになっているとは確信が持てない中、以前から色々とお世話になっているO氏から連絡を頂きました。
彼が所属する「横浜にLRTを走らせる会」では、季節ごとにフォーラムを開催し、夏のフォーラムで話題提供として私の停留所を紹介してみてはどうか...と、お誘い頂きました。
もちろん、こうしたオファーには食いついてしまう私ですが、このフォーラムは、LRTを実現させたい仲間が開いているもの。そこにバス停の提案では趣旨がずれてしまうということで、「スマート停留所システム」と少し名称を改めてレクチャーをお引き受けすることになりました。

停留所とは何か?

バス停と電停

私が今までバス停に拘ってきたのは、特に地方での路線バス事業者の経済的疲弊と、少子高齢化、過度な自動車依存による利用者の減少、そして運転士不足など負のスパイラルに陥ってしまう路線バスの停留所は、大都市の大手バス事業者のようなインフラ部分での整備が進まず、昭和の時代から一歩も前進しないバス停の、所謂小さく、安く、目立たず...と、おおよそ公共交通としての役割が果たせていないのではないかと常日頃感じていた問題を何とか解決できないか..と思いを巡らせていたことと、DX化の波、広告ビジネスモデルやサイネージの普及など、タイミングが重なってきたことによります。

そこに横浜のような大都市中心部を想定したLRTの電停とコンセプトが合致するのか..という疑問があります。しかし、横浜市もJRや民鉄、市営地下鉄など多くの鉄道路線、そして網の目のように張り巡らされたバス路線など、公共交通の機能をしっかり果たせていて、地方とは大きく異なりながらも独立採算で運用されているのは地方と同じです。LRTが実現できてもそれが潤沢な売上に繋がるとは考えにくく、付帯設備も少なからずのコストが必要で、それは初期投資だけではなく維持費用も掛かります。つまり広告にしても運行情報にしても、その他ITを活用した様々な恩恵が受けられることは、バス停のみがその対象として縛りを掛けることはナンセンスです。ましてバス停だけがスマート化するのではなく、バス停と電停は基本的に同じと考えるべきと捉えられます。バス停・電停共に同じ機能やフォルムを持つ停留所としてイメージさせることで、利用者にとってもバスとトラムは輸送量の異なる同じ移動媒体と認識できるからです。ドイツでは、トラム電停がバス停と共有している例も普通にありますし、日本では法制度の壁があるにせよ、バス停と電停は同じ構造物でも、そこにはほとんど変わるとことがないと言えます。
そこで今回のレクチャーに向けて、より汎用性の高い「スマート停留所システム」というテーマで、改めて纏め直しました。今回はその内容を紹介します。

バス停の現状

前橋市・高崎市のバス停の現状

北関東の群馬県は、自動車保有率の高い県として全国に知られていて、現在の超高齢化社会では、自家用車を手放せない高齢者が多く、高齢が原因の事故も増加しつつあり、高齢者による事故は度々メディアを賑わせ、社会問題にもなっています。
群馬県の自動車保有率の高さの一因となっているのが、公共交通機関の脆弱さにあります。地域の公共交通は主にバス路線ですが、人口規模を考えれば、居住者人口20万人を超える中核都市の高崎、前橋はLRTなどの中量交通機関が適切ではないかと感じますが、実現されていません。

一方、バス路線は路線数、事業者数共に多く、停留所数も多いです。しかし、密な路線数に対して過疎なダイヤが多く、利用者数も少ないのが現状で、バス事業者は運賃収入が少なく疲弊しています。
上図は、前橋市、高崎市の中心市街地のバス停事例ですが、1つの停留所に隣接して複数の置き型バス停が立ち、その割に、単体では大きさも小さく目立ちません。最近電線の地中化により、電柱が消えた道路ではバス停の隣に変圧器ボックスが設置されていると、変圧器の影に隠れてしまうほど小型化されているバス停もあります。
そして、群馬県は赤城山や谷川岳から流れてくる冬の乾燥した空っ風が有名で、置き型バス停はコンクリートの重石で立っていることから、台風が来た時など強風下では安全とは言いにくい状態です。
ただ、このタイプのバス停設備は安価であるため、全国各地で普及しています。横浜市も例外ではないと思われます。

バス停のトレンドと広告

前橋市中心部の屋根付きバス停、東京の運行情報機能付バス停、デジタルサイネージ広告

地方都市でも最近見かけるようになったフランス資本のMCDecaux社の屋根付きバス停(B-Stop)は存在感のある合理的でモダンなデザインのバス停ですが、これは同社の広告収入で運営できるビジネスモデルとしてフランスで成功を収めたのち、欧州や日本でも普及している停留所です。しかし、このバス停は紙媒体による巨大なポスター広告が目を引くもので、広告費用に予算が付けられる企業が顧客となるため、地域の事業者には、敷居の高い広告とも言えます。また屋根付き停留所で設置スペースが必要なため、バス停では一部に留まるでしょうし、LRT向け電停の全てが屋根付き停留所を設置できるかどうかは分かりません。

一方都市部で普及が進みつつあるのが、リアルタイムの運行情報を提供する小型サイネージ付きのバス停です。しかし、従来型のバス停にサイネージを組み込み、そのUIも見やすく美しいとは言いにくい表示です。

また、最近はターミナル駅やショッピングモールの通路部分にサイネージを配置し、動画広告を流している光景を見ることができます。このサイネージでは、あらかじめプログラムされた動画広告を配信することで収益を得ているビジネスモデルです。

欧州トラム停留所

ドイツとフランスの電停

欧州でトラムの導入が積極的なドイツとフランスの事例を観てみると、日本に比べてゆったりとした敷地にホーム(と言っても車道と歩道の段差と同じ高さ180mm ~ 200mm程度)の上に屋根付き待合所と運行案内表示器、電停名表示が設置されています。ドイツの停留所は、バス・トラム共に全国統一された停留所シンボルマーク「H」(Haltestelle=停留所)で、停留所のアイデンティティを保っています。画像のアウグスブルクとドレスデンは、このシンボルマークを最上部に掲げ、その下に電停名、行先などの表示とリアルタイムで表示される電光運行表示器が一体化されているのがわかります。
一方で、フランスのそれは、待合所の屋根下に運行表示器が設置されていたり、ストラスブールのような時刻表や券売機などが一体化された円筒形の機器に運行表示器が設置されている事例もあり、その豊かな個性がトラムによって地域アイデンティティとして活きている事例でもあります。

停留所と広告

なぜ停留所に広告が必要なのか

停留所に広告が必要な理由

バス停にしろ電停にしろ、そこに広告の必要性があるのは、停留所を自立させるためであるのが第一。フランスACDecaux社の日本法人MCDecaux社が自社の負担で屋根付きバス停を設置から維持費用まで全てを負担して、そこに設けた広告費用で稼ぐビジネスモデルは、フランスでも日本でも成功しているようで、東京のような大都市はもちろん、最近では地方都市の中心でも普及してきています。
フランスでは、交通権という法律を背景に公共交通に対する手厚い保護政策がある一方で、独立採算が基本の日本では停留所の新規設置やその維持費用にかかるコストを事業者が負担するのは、地方では極めて難しいです。特に赤字経営で疲弊している地方のバスや鉄道事業者が、国や地方自治体など行政の支援なく停留所設備に投資するのは厳しいと言わざるを得ません。
そこで、停留所に広告を加えることで停留所の設置費用や維持費用が賄えるのではないか...というアイデアが出てきたことが大きな理由の1つです。更には、その広告をデジタルサイネージにすることによって運行情報と広告を1つの画面で表示ができ、広告掲出を時間(1広告15秒間)で販売することで、1日あたり5,760の広告掲出が可能になります。これは紙媒体の広告と大きく異なるところで、停留所設置事業者がこの広告収入(¥4,380,000/年、1停留所2基)を得られれば、停留所の設置費用と維持費用を賄える十分な根拠になり得るだろうと推測できます。

リアルタイム運行情報の掲示は、ロケーションシステムと同期することで正確な到着時刻の予測が可能となり、遅れ表示もリアルタイムで利用者に知らせることが可能なことから、これまでの不安な気持ちでバスやトラムを待つことから解放されます。

もう1つは、広告をこれまでのエージェント1社に任せるのではなく、一般広告、地域の事業者、市民・行政・運行事業者広報と3つのカテゴリに分け、それぞれ広告代理店、地域の商工会、行政を窓口として申し込みできるようにすることで、それぞれのカテゴリに合わせた弾力的な運用と敷居の低い価格設定など、きめ細かなサービスで実用化させることが可能となります。

広告は紙媒体かサイネージか

B-STOPとスマートバス停の広告比較

上図はMCDecaux社のバス停(B-STOP)とデジタルサイネージで広告配信する仕組みを比較したものです。
1停留所に表裏2枚のみ紙製ポスターで掲示するB-STOPと、15秒間の広告を5,760枚/日を配信するサイネージでは圧倒的に情報量に差が出ます。配信される広告は、静止画像、動画の両方が可能で、全てコンピュータによる自動制御で配信され、最適な価格設定をAIが行う自律機能がついています。また、サイネージの一部を活用してリアルタイムの運行情報を常時配信し、利用者の安心感を生むことに貢献します。
広告主にとっては、配信数から算出された広告費用の低減により、試算では1広告¥2.5/15秒で配信できます。そして企業や地域事業の他、行政の広報や、運行事業者、また市民からの広告など、配信枠の一部を市民に開放することで、停留所が公共の福祉にも役立ちます。さらには、昨今の気候変動などで頻発する自然災害に合わせて緊急地震速報、避難指示、そしてJアラートなど、緊急情報についても優先的に配信することも可能で、市民生活に積極的に関与します。

停留所のフォルムとシンボライズ

停留所シンボルマークと「停止」イメージをシンボライズした本体デザイン

停留所は先の現状認識で示したような停留所デザインでは存在感が薄く、停留所としての認識すらされにくいことが挙げられます。停留所の役割は、定期的にバスやトラムが停留所に停車し、利用者の乗降ができることを認識できることが大切です。それは、停留所が自宅から最も近く身近な移動のアクセスポイントであるからに他ならないからです。
その重要なアクセスポイントにふさわしいサイズ、フォルム、色彩、情報を発信する機能などが要求され、それに応えられるのが停留所としての正しい姿であり、それを満たしたものは沿線居住者から信頼される身近な公共交通として認識されるでしょう。

ここでは、用途に合わせたバス・トラム共通の躯体を使用し、シンボルマークの絵柄のみバスとトラムのピクトグラムを用いています。日本では、トラム電停にバスを停めることは難しいとのことで、バスとトラムの乗降場所が異なることを前提にデザインしました。最も目立つ上部に停留所名とシンボルマークを組み合わせたパーツを配置し、その下には系統番号、行先を記したパーツを3段、最下段には運行事業者名の入った企業ロゴが入ります。またスマートフォン向けのQRコードもこのスペースにレイアウトします。その下にデジタルサイネージをレイアウトし、サイネージ画面上部にリアルタイム運行情報、そこから下は広告スペースとします。

最上部の停留所名や停留所サインとなるマークの部分は警戒色の黄色をベースにしていますが、地域特有の事情もあることを想定して、なるべく目立つ色彩でれば黄色にこだわらなくても良いと考えます。

こうしてできた停留所のデザインは、全高が2.5mあり、従来の置き型停留所と比較するまでもなく、停留所として求められる機能やフォルムは満たされています。さらに言えば、沿線居住者に愛される停留所でもあるべき姿であって欲しいと願っています。

リアルタイム運行情報

サイネージに組み込まれるリアルタイム運行情報(PIS)

停留所の持つ機能のうち、欠かせないにも関わらず中々実現できなかったリアルタイムの運行情報は、スマート停留所では実現しています。情報はシンプルに以下の情報をコンパクトに分かりやすくまとめられています。

  • 現在時刻

  • 出発予定時刻

  • 路線番号

  • 行先

  • 出発までの残時間

  • 運行情報(遅れなど)

これら情報により、利用者はより正確な運行情報を理解し、安心してバスやトラムを待つことができます。特に渋滞などによる遅れが出た場合、バスがいつ到着するのか分からず不安やストレスを感じやすくなりますが、そうしたストレス回避に役立ち、(代替移動手段を考えるなど)利用者の新たな判断材料の提供になります。

デジタルサイネージ広告配信

3つのカテゴリのデジタルサイネージ広告

サイネージへ配信される広告は3つのカテゴリで構成される

サイネージの大部分を占めるスペースは、広告が主になります。その広告は一般的な企業広告の他に、地域に根ざしたお店や個人事業を行っている方々のための広告時間枠を設け、一般企業と同じ単位金額(¥2.5/15秒)ながら、広告配信頻度や停留所数などの縛りを緩めて敷居の低い広告料金設定でPCの他、スマートフォンアプリで広告配信申請を可能にしています。
この地域事業者向けには、一般企業向けと申請窓口が異なり、地域の商工会議所を想定することで、地域の事業を活性化させることに役立つのではないでしょうか。
また、行政枠では停留所が公共の設備の一部ということを念頭に、例えばお祭りの案内、学校の行事告知など市民向け広報や運休・路線迂回の告知や運賃改定など運行事業者からの案内、また一般市民による「迷い犬や猫探し」、NPO活動募集、サプライズ演出などアイデア次第で、様々な市民の身近な情報発信拠点としての停留所になることは意味のある事業になるでしょう。それに加えて、昨今の気候変動に伴う頻度の増す豪雨、台風、高温などに伴う市民への避難勧告や指示、また地震警戒情報、更にはJアラートなど国からの警報などについても広告時間枠のあるなしに関わらず緊急警報として優先配信が可能になれば、市民への告知がスムーズに進む一助となり得ます。
この市民時間枠は、無料でかつスマートフォンアプリから申請可能であるため、配信する敷居は低く活用が期待されます。もちろん公序良俗のための審査を通しますが、これもAIを活用することで審査時間の短縮が図られます。

デジタルサイネージ広告シミュレーション(設置事業者向け)

3つのカテゴリの広告時間枠と収益

停留所を設置する事業者側にとって気になるのはその収益です。上の図は1時間あたりの3つのカテゴリの時間配分で、収益が期待できる企業広告と地域広告が25分ずつ、残りの10分は行政による広報、運行事業者の告知、市民の広告となります。

企業広告、地域広告がそれぞれ15秒間の広告を1ユニットとし、1時間あたり最大各100ユニットの広告が可能。残りの40ユニットが行政広報などとなりますが、企業・地域広告が少ない場合は、行政広報がカバーすることになります。
1ユニット(15秒)を¥2.5で設定すると、企業・地域広告がそれぞれ1日あたり最大¥6,000となり、年間では¥219,000の収入が見込めます。これは1停留所(サイネージ2基)あたりの収益となります。広告収入の合計は、単純計算では、1ヶ月(30日)¥360,000となり、年間(365日)¥4380,000になります。

但し、これはあくまで標準的な広告価格から算出した設定であり、基準価格の変更も可能であるし、停留所による乗降者数の違いもあり、様々な要件を加味したAIによるロスを低減した最適化運用機能で弾力的な価格設定にすることで、停留所ごとにより効率的で最適価格の設定が可能になります。
その機能が自律型スマート停留所システムと名付けた理由です。

デジタルサイネージ広告シミュレーション(広告主向け)

1日あたりの広告掲出時間と期間

広告を依頼する企業や地域事業者には、単位あたりの価格を同じにするため、広告掲出のための敷居の高さを変えることで対応することを提案します。
一般企業は、1度に多くの停留所で同じ広告を掲出することで、より多くの人に商品の訴求を強く促すことができます。一方地域事業者は、特定の停留所での掲出や期間を限定させることで、価格を下げることができるのがサイネージを活用した広告の利点でもあります。
そこで、一般企業については、最低発注を10停留所(20基)、かつ2週間10ユニットとすることで、1時間あたり2分30秒の広告を配信、最大100ユニットとすれば、25分間/時の最大広告枠時間を活用できます。

地域事業者については、最低1停留所(2基)、かつ1週間2ユニット単位で1時間あたり30秒間の広告を配信可能。最大では一般企業同様100ユニット(25分)の最大広告枠時間を使うことが可能となります。価格は1停留所(2基)あたり最低で¥840/週、最大で¥42,000/週が広告価格となります。
但し、これについてもAIによるダイナミックプライシングにより単位価格の変動は起こり得るので、あくまで目安として参考になります。

デジタルサイネージ広告の時間配分とタイムプラン

サイネージ広告・広報のタイムプラン

上図はあくまで参考例として参照してください。実際は1時間でルーティーンするタイムプランですが、細かくなりすぎるので、180秒での各カテゴリの振り分けを例に示したものです。
パターン1は、15秒ごとに企業広告と地域事業者、そして行政・運行事業者・市民広告を満遍なく分けたスケジューリングで、割合は其々の時間配分に合わせて組み合わせたものです。
パターン2は、15秒の企業広告枠を1社で2ユニット繋げて30秒広告とし、それを組み合わせてセットしたものとなります。
こうしたバリエーションも自動配信可能なサイネージならではの広告として様々なニーズに応えられるのが特徴的です。

広告の開始時刻をあらかじめ希望する場合は、先着順として設定可能ではありますが、例えば毎時0分00秒から0分15秒や59分45秒から0分00秒までなど、需要が大きいと考えられる時間枠については、特別料金を設定しても良いかも知れません。

停留所の設置

停留所のラインナップ

基本仕様のPOLEと複数停留所仕様のELIPSE

日本の道路事情を考えた時、特にバス停は設置場所の面積が確保されることは難しい場面が多々あります。なるべく小さなスペースでも設置可能で、かつ「身近な移動の玄関口」としての存在感や訴求力が求められる停留所としての解の1つが「POLE」です。重々しいデザインは避けつつ存在感と美しさ、分かりやすさ、情報発信基地としての役割を果たす機能を併せ持ったスマート停留所を目指しています。
もう一つは、複数の停留所のあるターミナルやバスとトラムのトランジット停留所など複数の停留所に番号が振られる場所で使用される箱形バス停「ELIPSE」です。名前の由来は断面形状が楕円になるためです。「POLE」も同じパーツを使っているため、モジュール構造で異なる仕様になる仕組みです。同じパーツを使うことで、コスト低減を計っています。

あらゆる屋根付き停留所に設置可能なType C "ROOF"

電停はもちろんバス停でも設置スペースがある停留所には屋根付きに組み込めるタイプも用意しています。基本的に「ELIPSE」をベースに高さを調節しています。モジュール構造ならではの恩恵であらゆる高さの屋根付き停留所に対応可能なのが「ROOF」となります。

トラム・バスのトランジット停留所


対面式ホームのトラム・バスのトランジット停留所

スマート停留所が様々なシーンで汎用的に展開できるためにターミナルなど複数の停留所が設置される場所に向けて停留所番号を表記した箱形タイプ(ELIPSE)を推奨していますが、今後トラムのある地域で想定されるトラムとバスの同一ホームでのトランジットが利用者にとって大きな利用モチベーションに繋がるでしょう。同一ホーム乗換時のイメージを示したのが上図になります。

デジタルサイネージの構造

構造図

屋外に設置する停留所は、直射日光や風雨に晒され、外気温や湿度の影響も受けることになります。またサイネージは光の集合体により画像を形作るため、日光による反射にも留意が必要です。構造図ではサイネージ本体に反射防止処理を施したガラスを組み合わせ、それをフレームで押さえる方式で固定します。

3種のスマートフォンアプリ

利用者向けスマートフォンAPP

停留所のQRコードを通してスマートフォンAPPで確認

停留所に印刷されているQRコードをスマートフォンで読み取ると、自動的にWEBアプリに接続し、停留所のサイネージと同じ画面が表示されます。それにより停留所が長蛇の列の場合でも手元のスマートフォンでリアルタイムの運行情報を確認できます。また広告配信からは広告元のWEBページへ遷移することも可能。その他停留所の時刻表へのアクセス、路線図、運賃表、ロケーションシステムで地図上の任意の車両の位置情報を得ることができます。

地域事業者と市民のための配信申請APP

地域事業者と市民向け広告申請アプリ

広告掲出のために行う申請は、一般企業、地域事業者、市民広告それぞれが異なる窓口となっていますが、このうち地域事業者と市民広告については、スマートフォンアプリを開発し、それを利用することで気軽に配信申請が可能になることでしょう。

本来の申請窓口は地域の商工会議所としている地域事業者のための申請は、PC他、スマートフォンアプリで可能とすることで、気軽に配信する画像や動画などの広告媒体をアップロードでき、また配信者さまの予算など条件に合わせたお勧めを提案することがアプリでは可能です。これは、一度新規登録すれば、申請から決済までワンストップで可能な仕組みとして開発することで、敷居が低く気軽に申請が可能なアプリになるでしょう。
広告申請が登録されると、広告配信時刻のスケジューリングがスケジュールアプリやメールやSNSなどへの転載も可能になるのが良いでしょう。
また外国人の申請者向けに日本語の他、英語、韓国語、中国語の4カ国で表示される多国語機能付きにします。

市民向け広告では、無料で広告を掲出できるため、決済機能はないですが、初期登録ではマイナンバーカードと連動した機能を活用して信頼性を高めます。
1行広告などテキストのみの申請も可能になりますが、申請の流れは基本的に地域事業者向けアプリと同じで、外国人居住者にも優しい4カ国語対応(地域によってはスペイン語など言語追加も可能)として、居住する全ての市民に漏れのない対応ができるようにしたいと考えています。
また、広告掲載場所と時刻をアラートする機能も付加することで市民に身近な市政の実現が期待できます。
一方で、無料配信ゆえの悪戯防止機能や無意味な配信申請を排除し、配信事故が起きないような機能は不可欠です。

なお、一般企業からの広告配信申請や行政・運営事業者からの配信については、PCからのみのアクセスで十分という判断から、スマートフォンアプリの用意は想定していません。

スマート停留所システム概念図

運行情報データ収集、配信、広告配信申請からビッグデータ収集、AI処理までの流れ

リアルタイムの車両運行(位置)情報と停留所/スマートフォン配信、広告配信申請から停留所/スマートフォンアプリ配信までの流れを示した概念図です。車両に内蔵されたGPSタグから位置情報をリアルタイムで発信しているため、インターネット経由で停留所の運行情報を始め、スマートフォンアプリ、Google Mapなどでも位置情報を得ることが可能で、遅延情報などの運行情報として配信されます。また、乗車人数なども収集することで、各停留所の乗降者数のデータをビッグデータとして、広告価格に反映するAIの判断材料として活用されます。
広告配信の申請は、3つのカテゴリに別れますが、全てPCのウエブアプリやスマートフォンアプリで申請から決済までワンストップで行うため、申請のために事務所に出向く必要はありません。

最後に

短い時間のレクチャーで、どこまで聴き手に伝わり、理解されるかは未知数です。長い時間を掛けて様々な問題をクリアしながら進めてきたプロジェクトですが、本来の停留所の姿と機能に立ち返ることで、新しい価値がそこから生み出されます。
特に今回は、今までのような事業者さまやメーカーを相手にプレゼンするのではなく、初めて対面で不特定多数の方の前で発表する機会であったので、このスマート停留所に関わる設置・運営事業者さま、広告主さま、そして利用者さまそれぞれの立場の違いを分けて説明する必要があります。

この停留所はまだ実現されていませんが、日本の道路事情に合わせたバリエーションも用意しています。まだ中々実現していないMaaSのスマートフォンアプリにも親和性の高いワンストップで検索から決済まで可能なシステムとしても、この自律型スマート停留所システムは日本の地域公共交通のリアルを一歩先に進めるプロダクトになることを期待しています。


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inoue design | Akira Inoue

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