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無いものの存在

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2019年11月28日に右足を切断したことで体験した幻肢痛をきっかけに身体のこと、アートのことを綴る日記「無いものの存在」です。
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2020年1月の記事一覧

[無いものの存在]_16:踊り出すような義足を

[無いものの存在]_16:踊り出すような義足を

リハビリも1週間が過ぎて、僅かだけれども全身が義足に乗ることに適応し出した感じがある。
特に体重を支えるソケット周辺の筋肉や、腰や腹筋、義足を通じて地面を感じ取る神経が気が付き出したような気がする。

入所中はどんどんパーツ選びを進めている。
29日はまた新しい膝継手を試してみた。
今回付けたのはOttobock社の3R80。短軸のイールディングタイプで、体重を乗せることで膝がじわぁ〜っと曲がるの

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[無いものの存在]_15:リハビリ室の床はいかに平らなことか

[無いものの存在]_15:リハビリ室の床はいかに平らなことか

1月24日(金)のリハビリを終えてから土日は自宅へ外泊をしていた。土日はリハビリもお休みなので施設にいてもやることがない。
外泊中も義足の持ち出しと使用は許可されたので、お守りに杖をつきながらリハビリ実践編である。
この土日でリハビリ室ではわからない事が色々わかった。
それはまず帰宅早々に起こった。

義足ってどこで脱げばいいの?家に帰る。
玄関で左足の靴を脱ぐ。
次はたぶん3パターンある。

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[無いものの存在]_14:義足が知りたい

[無いものの存在]_14:義足が知りたい

リハビリ3日目。
もう杖も無しで歩けるようにはなった。
まだ長時間歩くのは厳しそうだけど、どんどん歩行は安定してきた。
正直昔から運動には自信がある。身体の動かし方の要領を掴むのは比較的早い。だから義足もすぐに歩ける自信があったし、幻肢を含めてそのためのイメージトレーニングは繰り返していた。
限られた入所期間を使って最大限のパフォーマンスを引き出してから外来のリハビリに切り替えたいので、ガシガシ進

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[無いものの存在]_13:右足を環境に同期させる

[無いものの存在]_13:右足を環境に同期させる

退院して正月休みも開けると、日常生活はあっという間に過ぎていく。
切断後も変わらず休みの無い日々を送る中で、身体は正直に新しい発見を重ねている。

1月10日に最初の義足は一旦組んだものの、まだきちんとリハビリも終えていないので使用は自宅内のみ。仕事へ行くのは一本足で松葉杖が続いていた。移動は億劫ではないのだけど、久しぶりに何週間も松葉杖をついているので腕に少し筋肉がついた。足だけじゃなくて、こう

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[無いものの存在]_12:義足は乗り物

[無いものの存在]_12:義足は乗り物

2020年1月10日、遂に義足の仮合わせがあった。
午前中にリハビリ施設に到着したが、医師の診察は午後だったため、義足を持ってきた義肢装具士とPTに「先に着けてみる?」と促され、すかさずリハビリテーションへ向かった。

自分の初めての義足を目にした感想は、やはり多軸の膝継手を選んで良かった…という興奮だった。パーツに関してはそれなりに調べたり、義足の友人に相談して選んだのだが、やはり見た目でテンシ

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[無いものの存在]_11:あの本の中の幻影肢

[無いものの存在]_11:あの本の中の幻影肢

最近、幻肢痛のパターンもみるみる変わってきた。術後間も無い時期から比べたら格段にシンプルになり、発生する頻度も少なくなってきた。特にここ数日は筋肉痛のような刺激が断端の先に広がっていて、足がギーッと引っ張られている感覚が続いている。足先や足裏に鈍痛を感じることはかなり減ってきた。
これは何より環境の変化が大きい。病院にいる時よりも幻肢痛から気が逸れるものは周りにたくさんあるし、松葉杖生活になって身

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