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「物語 フィンランドの歴史」を読んで

 ようやく、石野裕子著「物語 フィンランドの歴史」(発行所:中央公論新社)を読み終えた。 歴史は好きだけど、読み始めると、すぐに調べたり,
考え込んだりするので、前に進まなくなる。

 フィンランドは寒い所だけど、石器時代には人が住み始め、鉄器時代にはフィンランド湾沿岸を中心に5万人ほどの人が暮らしていたらしい。 
人間はやっぱり逞しい。

 それにしても、フィンランド。 600年もの間スウェーデン統治下におかれ、その後、100年ほどロシア帝国の統治下に入る。独立しても直ぐに内戦。 これだけ重苦しい過去を秘めていれば・・・。

スウェーデン領のフィンランド(13世紀~1809年までの統治国)

 フィンランドは、600年もの長きに渡りスウェーデンの統治下にあったらしい。本書によるとスウェーデンによる統治は13世紀に始まるけど、時期は明確ではないらしい。

 たぶん、スウェーデンからフィンランドを見ると、「東方の見知らぬ土地」だったんだろう。既に8世紀半ばころから、何度もフィンランドへの植民が始まっていた。と書いてあった。お隣に開墾する地を拡げていった感じなんだろうか。

「地続き」というのは、こういうことがあるんだ。
 日本なんかは、周囲を海に囲まれている小国なので、他国も(日本からも)、おいそれとは行き来できなかった。そういう意味では、独特の文化が生まれ、熟成された処が日本。

 本書によると、スウェーデンは、もっと遠いロシア(当時のノブゴロド公国)の方が気になっていたらしい。この頃から、既にフィンランドは、スウェーデンとロシアの狭間で、争いの場になってしまったようだ。

 一方で、スウェーデン領時代のフィンランドからみると、スウェーデンは東方の発達した街。新しい世界に触れ、近代化を進めていく契機になった。
 現在も、フィンランドの公用語は、フィンランド語と、スウェーデン語。オーランド諸島なんかは今でもスウェーデン語が第一言語になっているそうで、両国は仲良しなようだ。

ロシア領のフィンランド (1809年~1917年までの統治国)

 結局、「フィンランド戦争」と呼ばれる戦いの結果、フィンランドは、スウェーデン領からロシア領に代わった。 
当時は、何だか大国に弄ばれているようで、いい気がしない。
 かと思ったら、当初のロシアは、フィンランドをスウェーデンからの盾にするだけで、「フィンランド大公国」として自由度の高い扱いだった。 ロシアの圧政に苦しんだのは、ロシア統治下でも後半の時期だけらしい。

 その後の社会経済の進展に伴い、「我々はもはやスウェーデン人ではない。さりとてロシア人にはなれない。フィンランド人でいこう」と、自主独立の機運が生まれていったそうだから、ロシア領になったことも意味があったと言えるのか。 そして、第一次世界大戦時で混乱の中、1917年にフィンランドは独立を迎えた。

数々の争いを経て

 数々の占領下を経て独立したものの、「持てる者」と「持たざる者」の差は歴然とし、今度は、貴族階級と労働者階級による内乱が始まってしまう。

 争い好きではなく、苦難の爆発なのだろう。 数か月の戦いの末、内線が治まる。
その後もフィンランドは、地政学的特性から幾多の戦争・紛争を避けられず苦労を重ね今日を迎える。 なんと辛いことだろう。

 今までだって、フィンランドは、西側にも東側にも寄らずに、独自の中立を貫いてきた。 ロシアによるウクライナ侵攻がなければ、NATOに加わることもなかっただろう。 

 幾多の争いの時を経て、フィンランドは、2023年の世界幸福度ランキングで一位となった。6年連続だという。
 それはもう、これからは、幸せであって欲しいと切に願う。

 本書を読んで、また新しいフィンランドの貌をみた気がした。

                         (敬称略)

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