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「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読んで

 伊藤亜紗著「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(発行所:光文社)を読んで、勉強不足だなぁ、と恥じた。

 本書の感想文を書こうとして、もう1ヵ月は経ってる。
 あれこれと考えてしまうと、前に進まない。まとまらない。
 こんな本は久々。イイ学びの機会になった。

目が語っている・・・

 目つきを見れば、何も語らずとも気持ちがわかることの例えを、「目は口ほどにモノをいう」と言った。 確かに、人の仕草や顔つきで、“怒り”や“喜び”を感じ取れる。「言わずもがな」。
 心理学の世界では、バーバルコミュニケーション、ノンバーバルなんて言葉を使ってるか。ボディランゲージの方がピンとくる。
 難しい事を言わなくたって、言葉も知らぬ乳幼児のお世話は、身振り手振りでコミュニケーションをとってる。
 人類の歴史を考えってみれば、言葉なんて、随分あとに出てきたものだろう。 その言葉だって、生まれ育ったところで違う。日本で生まれ育った人が、南米のどこかの僻地に行ったら、大人だって、双方が何を言っているのかわからない。
 けど、身振り手振りで、何事かを伝えることは出来る。

それぞれの世界

 本書には「耳で見る、目で聞く」という節があって、なるほど、と勉強になった。

 本を読んで、その情景を思い浮かべることは、日常的にやっていること。 
 読書に限らず、音楽に長けた人なら、楽譜を見ただけで、音が聞こえてくるらしい。きっと、建築家なんかも設計図を見て、その建物が立体的に思い描けるんだろうな。視覚情報が、脳の中で、他の情報と重なり合い、情景を描き出したり、音楽になったり、建物になる。
 でも、それらは、人それぞれに違うはず。まぁ、一定の要件を満たせば、似てくるんだろうけど。
 基本、「五感」で得た情報から得られる「理解」は、人それぞれ。
 みんなバラバラなんだから、目が見えない人が耳で聞いて情景を思い描く、耳が聞こえない人が指で触って音を奏でる、ことがあってもいい。

 目が見える人の世界と、生まれながらにして目が見えない人の世界は、同じではないだろうけど、五感情報を脳内変換した時のかたちは皆バラバラだから、自分なりに理解すればいい。

 「個性」

 本書で「目が見えないのも個性」、という著者の主張も理解できた。

 考えてみたら、行った事もない国を旅した話を聞いた時、思い描くのも、人それぞれ。知らない処だし、人それぞれに経験値が違うのだから、思い描く世界が同じはずがない。
 「あこがれ」とか、「期待」とか、人と同じじゃないけど、そんなものが湧き出てくるなら、「理解し合える」って言えるんだろう。目が見える人であっても、見えない人であっても、誰であっても、同じ。
 目が不自由な人を見かけると、「何か、お手伝い出来ることはないか」と考えてしまっていた。
 けれど、頼まれもしないことを、あれこれするのは、余計なお世話。 
 私だって、道を歩いている時、知らない人から「お手伝いします」なんて、いきなり言われたら面食らう。
 みんな、一人ひとりが、自分らしく生きている。
 求められたら、求めていそうなら手伝う。けど、そうでなければ、その人の生き方を尊重する。 
 そんな、当たり前のことを、気付かせてくれるのが本書。

こんなことも研究してる

 あれこれ調べてたら、10年以上前に、総務省で「五感情報通信技術に関する調査研究会」が開催され報告書が開示されているのを見つけた。国では、IT推進の一環で、医者とIT技術者等々の専門家が集まって、こんなことまで研究してるんだな。

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/gokan/pdf/060922_2.pdf 

 この報告書によると、感覚は、それを受容する感覚受容器の存在部位により、特殊感覚と一般感覚に分類され、一般感覚はさらに体性感覚と内蔵感覚に分類される。特殊感覚は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、および平衡感覚に、体性感覚は、さらに皮膚感覚と深部感覚に分類される。感覚種というらしい。
 五感だけでなく、皮膚や神経等々で得た情報は、脳に伝達され、脳の中では、「皮質下中継核→大脳皮質第一次感覚野→単一種感覚連合野(→多種感覚連合野)→超感覚性皮質、大脳辺縁系」という経路をとるそう。頭の中を駆け巡るって感じ。

 ともかく、こんな情報伝達の実態を踏まえてIT化が進んでいく。ちなみに、五感のITによる代替性は、視覚と聴覚は比較的対応し易く、触覚は研究の端緒に着いたばかりで、味覚や臭覚は難しいらしい(10年以上前の話)。 

 本書は、いつか、また、読み直してみたい。

                            (敬称略)

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