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「時は待ってくれない」を読んで

 小田和正著「時は待ってくれない」(発行所:PHP研究所)を読んだ。
あのオフコースの小田さんが受けた、ロングインタビューを綴ったもの。

 確かに「時は待ってくれない」。けど、急ぐこともない。
いや、急げないし、遅れることもなく、いつも変わりなく時は過ぎていく。 

 「時に待って欲しい」のは、やりたい事が山ほどあって、現実に追いつかない時。  

仲間

本書に、歌詞が掲載されている
  ♪ my home town
  ♪ さよなら
  ♪ ラブ・ストーリーは突然に
  ♪ キラキラ

 どれも、イイなぁ。音を聴くと、すっかり忘れていた、あの頃の思い出がよみがえってくる。若かりし頃、いつも傍らに小田さんの楽曲があった。
けど、ファンと言えるほどの共感がなかったせいか、「オフコース」からソロになっても、小田サウンドは変わらない、なんて思ってた。

 「音楽性の違い」等々を理由に、グループを離脱したり、解散するミュージシャンは少なくない。
濃密な時間を過ごした仲間だからこそ、ちょっとした方向性の違いにもすぐ気付いてしまうのだろう。でも、長い年月が、違いを容認する術も教えてくれるはず・・・わからないが。

オフコースにも何らの葛藤があって、解散したんだろう。
それでも、やっぱり著者は音楽が好きで、たった一人で再開。

 本書によると、ソロアーティストとしてスタートする時、『理想を後回しせず、いつも期待し期待され、やったねと言える仕事を、一つひとつ積み重ねてゆきたいと思っています』と所信表明したそう。
『理想を後回しせず』なんて、功成り名を遂げた人らしくない。けど、如何にも「最初の一歩」。上手いな、表現者らしい。

 たぶん、オフコースの仲間とも、けんか別れじゃないんだろうな。
共に奏でる仲間ではなくなったけど、音楽の世界の仲間。
そう思いたい。

世代交代

 いつだったか、年末頃、TVで小田和正らの年末の音楽番組「クリスマスの約束」を見た事がある。松たか子とか、スキマスイッチ、水野良樹(いきものがかり)らが出いて、面白いな、と思った。

 若者らに囲まれると、小田さん、随分と年上に見える(まぁ、実際にそうだけど)。 でも、あの高音が出るんだよなぁ。まさにギフテッド。

 本書では、「若手は、多忙で、直前まで予習する時間がないけど、最後の何日間でウワーッときて、俺が抜かれていく」と書いてあった。
やっぱり、そうなんだ。
 若い人・・・熱量というか、エネルギーの大きさの違い。
私も、若者には、そう感じる。 ちょっと引け目を感じながら。
 著者は、そんな若者たちと接し、「若いっていうのはすごいなと思うし、おもしろいね」という。 大したもの。 

 いつまでも現役で突っ走りたい、と思ってみても、歳を重ねれば、残された時間は少なく、出来ることに限りがある。 
だから、「時は待ってくれない」。

あれもこれも、何でも出来るわけじゃない。
いつか、誰かに、バトンタッチしていくしかない。「世代交代」

 著者を慕うアーティストもたくさんいるようだ。
いつまでも突っ走るのもイイけど、どこかで、ギアチェンジするのもイイんじゃないか、とも思う。 大きなお世話か。

ともかく、何だか、あれこれと考えてしまう本だった。

                                                                                                        (敬称略)

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