モロッコ旅行記 3月7日

3月7日

ホテルババにもう一泊することになった。昨夜の酔い心地がよくって今夜も酔おうという寸法だ。
けれども、昨夜書いたものを読み返してみると、酔い痴れた恥かしい恋文になっていて
「またやってしまったか」
とあきれる。けれどもイヤホンでなく音楽を聴いて楽しかったことには違いない。
昨日歩いた二時間を思いだす。石ころのあるところには、必ず、願掛けか何かで積まれた石がある。あるいは、単なる退屈しのぎに積
んでみただけか。砂城のカスバにしろ、石積みにしろ、あの辺りには原始的な、あるいは幼児の遊戯ということが度々思いかえされた。
職人や子供たちの手が感じられる。それはわたしの手でもかつて経験されたことだから。その意味で織物というのはよくわからない。
日本の西陣なども、土産物として人気なのだろう。機織する女性を何度か見かけた。
昼食を昨日のカフェレストランでとる。竹編みのクロスがテーブルに敷かれる。
主題を見失う。為にならなそうな落ち穂をあつめる。
「色彩」「乾燥」「光」
ワルザザードの中心市街地にあるスークは、日本の広場で催されるフリーマーケットが常駐したというふう。鉄パイプや木などで骨組みして、布や化学繊維で屋根を設け、通路の上にはマラケシュのメディナで見たように竹が敷かれて陽光をこもれさす屋根となっている。奥へ行くと獣の匂いがたちこめ、鶏が狭いカゴに何十羽と入れられ、反対の店で鶏肉が赤く吊り下げられている。
ワルザザードには子供服や玩具を販売している店がよく目につく。
それも派手な色の、女の子向きのようなものだ。ピンク、紫、グリーン。
あてにしていた「アーモンド」が十日まで満室とのこと。「のりこの家」に問い合わせのメールを入れて返信を待つ。
ホテルババでYOUTUBEを見漁る。不思議なもので、日本にいたのでは観ることもなかった動画を観ている。「ドリブルデザイナー岡部」「カバディ」「セパタクロー」というマイナーなスポーツがとても面白い。ことによると、ピョンチャンオリンピックの「カーリング」の影響かしら。そうして海外という新しい肌感が、知らないものへの好奇心を揺さぶってくれているのかもしれない。
いろんなものがある。知らないものがたくさんある。
二十二時。典子さんから返信。ドミトリーに空きがあるというので予約依頼の返信をする。異国の地で日本人と連絡を取るということが不思議で嬉しい。
二十三時。ナトリウムライト灯るバスターミナルで野良犬と戯れるジュラバの老人。空に星、酔いもあって、わたしもジュラバを着て広場へ。知らないうちに新陳代謝されているらしい。


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