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退職のごあいさつ

2022年3月末で多摩美術大学を退職しました。(定年退職にはまだ早く何かやらかして辞職するわけでもありません🙄)

多摩美には情報デザイン学科設立の1998年に着任したので24年間勤務したことになります。その前に修士の大学院生として2年、非常勤講師や美術学部二部デザイン学科の研究員として1年半ほど在籍しているので、多摩美には延べ27年半も関わりました(四半世紀ですね)。多摩美の何より自由なところ、新しいことや怪しいこと(いい意味)をまるっと包み込んで許容してしまう懐の深さは最高でした。お世話になりました。

これまで大学での教育・研究にあたり、たくさんの方々、企業のみなさんにご協力、ご支援いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

情報デザイン学科設立から数年間は「情報デザインってなに?」「よくわからない」と言われ続けて受験生や高校の先生への説明にもずいぶん苦労しましたが、いまでは高校でも「情報デザイン」を扱うようになり、20年という時代の流れを感じます。情報デザインという分野にとってはとてもいい時代になりました。

多摩美では産学共同での教育・研究が楽しくて、PBLの新しいワークショップ(設計と実践)や先行デザイン提案みたいなことばかり夢中でやっていた20余年でした(いわゆる「研究論文」はぜんぜん書かないダメ研究者でしたけれど)。企業のトップクラスのデザイナーや実務家のみなさんとご一緒して世の中の新しい潮流にチャレンジすることができたのはほんとうに得難い機会で、たくさんの刺激をいただきました。大学にいても世の中のデザインからからさほど乖離せずにいられたのは学外のみなさまとの様々な共同プロジェクトのおかげです。協働してくださった企業や団体のみなさまには感謝しかありません。同時にいつもムチャぶり気味な難しいテーマにつきあってくれたゼミ生ほか学生のみなさんにもお礼を言いたいと思います。

「退職して引退するひと」感が出るのがイヤで「最終講義」的なものも遠慮させていただき(定年じゃないし)、自分の道程を盛大に振り返るのはまだ少し先に送ることにしました。
まずは退職のご報告と、これまでお付き合いいただいたみなさまに御礼を申し上げます。(facebookの個人ページには公開設定で少し昔話を書いたのでアカウントをお持ちの方はご笑覧ください。)

そして(決まってることも決まってないこともありますが)今後のことも少し。
かれこれ30年近く続けてきた「デザイン教育」ですが、これからは2021年度に開校した実戦型デザインスクールDesignship Do(主催:一般社団法人 デザインシップ)に場所を移して、いまの時代に必要な「デザイン教育」のプログラムを、教育への熱意に溢れた最高の仲間たちといっしょにデザインしみなさまにお届けしていきたいと思います。従来の職人型デザイナー養成とは違うかたちの「デザイナー」の育成を目指します。
ちょうどいま各コースの監修や講師のみなさまのご協力を得ながら、3月から始まった「第二期」が絶賛開講中です。第一期に引き続き全体監修を担当しています。今日4月2日も熱い講義と議論と実戦的な演習がオンラインでおこなわれていました。
引き続きご支援ご協力のほどよろしくお願いいたしたします。また、今後の展開にもご期待ください。

青山ビジネススクール(青山学院大学大学院)では、これまでの「マーケティング・プランニング・プロジェクト(サービスデザイン)」(黒岩教授との共同担当)に加えて、後期にはいよいよ満を侍して「Design Thinking(デザイン思考)」の授業を担当することになっています(いずれも非常勤)。ビジネススクールでの「デザイン」の学びがさらに広がり深まるよう貢献したいと思います。

この2年ほど、大学は感染対策やオンライン授業への対応など初めて直面するイレギュラーな状況にかなり翻弄されました(まだ対応は続いていますが)。昨年の秋に退職を申し出てから転職活動しようと思ったのですがちょっとくたびれていたようで(汗)、研究室の20年分の片付けなどをしつつ(これ大変でした)、どうしようかなぁ…とぶつぶつ言ってるうちに3月末を迎えたというのがいまです。
春になったら(もう4月ですが)次に向けてゆるゆると動き出すつもりですが、なんと厄年(今年は本厄)なのであんまり無理はせずに🙄健康第一でいきたいところです。

デザイン教育とはべつにもうひとつ、これから自分の時間を使いたいことがあります。ここ数年、医療関係者のみなさんとご一緒した共同研究やワークショップなどで、医療とデザインが繋がる領域でデザインにできることがある、という手応えみたいなものを感じていました。

いま個人として特に関心があるのは、医療コミュニケーション、ヘルスコミュニケーションと呼ばれている分野で、医療情報をわかりやすく患者さんやご家族に伝えるという部分でもっと情報デザインが必要で貢献できることがあると感じています。医療分野での取り組みも調べていますが、たとえば以下は先日発表された「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」です。医学系の研究内容や成果を一般の人に情報発信するための研究プロジェクトの成果だそうです。

いまの自分が持っているデザインの知識とスキルで、この分野で何ができるのか、何が足りてなく修得するとしたらどうやればいいのかなど、わからないことも山積みで手探りの部分が多く途方に暮れることもしばしばです。またコミュニケーションだけにこだわらず視野を広くした方がいいかなとも思ったりして迷いもあります。みなさんの知見もお借りして助けていただきながら進みたいと思います。もうやってますよという実践例もぜひお聞きしてみたいです。
これまで新しいデザイン領域を拡張し続けてきた経験を活かして、長い目で見てデザイン分野としての成果を出していければと。(UIUXもサービスデザインも、授業や研究を始めてから世の中で認知されてデザイナーの仕事として確率するまで10年くらいはかかってますから)

以上簡単ですが退職のごあいさつと4月始め時点のご報告まで。これから転職活動します🙋‍♂️ 感染対策しつつランチでもいきましょう。
Designship Doともども、今後ともよろしくお願いいたします。

トップの写真は八王子キャンパス情報デザイン棟より。左奥の少し高くなったところにデザイン棟が見えます。学科設立時はこのデザイン棟に教室・研究室がありました。(写真は昨年の6月に撮影したもの)

多摩美のメールは使えなくなるのでご連絡は各種SNS経由またはこちらへお願いします。 akio.yoshihashi[at]gmail.com  ([at]を@に変更)

4月吉日 吉橋昭夫

● 追記(2022.4.27)
インタビュー記事が出ました。デザイン教育について話しています。
(2022.6.11 リンク先をnoteからdesigningオリジナルサイトに変更)


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