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でき太くん三澤のひとりごと その78

◇ 子どもの能力をどんどん開花させていく4つのポイント その2

今回は前回の続きとなります。

前回のひとりごとでは、生命は環境の影響を受けやすいとコメントしました。

そして、その「環境」を整える上で最も重要なものが、目には見えない私たちの内面にある「意識」です。この意識は、目には見えないものですが、私たちの内面には必ずあるものです。

この意識がニュートラルでなくなるとき。

それは、2つ目のポイントとなる「他者とわが子の比較」という意識が湧き上がってきたときです。

ここでは、私があれこれと書くよりも具体的な事例をあげたほうがわかりやすいと思いますので、以前会員のお子さんからいただいたお便りをご紹介したいと思います。

今回のお便りは、太郎くん(仮名)という小学6年生のお子さんからいただいたものです。

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ぼくには、妹がいます。
妹はいつも学校のテストで100点ばかりとってきます。
それを見ると、ぼくは自分の部屋ににげかえりたくなります。
母さんがそのテストを見たあとに、ぼくのことを見ると、
「どうして同じきょうだいなのに…」って思われると思うからです。
母さんは、「太郎の問題はむずかしいからしょうがないよ」と言うけど…
本当にそう思っているのかな、とぼくは思います。

ぼくが小さいとき、母さんはじょうだんでいったかもしれないけど、
「同じきょうだいなのに…」と言ったことを、ぼくは今でもはっきりとおぼえています。
その日から、ぼくは妹のそんざいがつらくなりました。
そして妹が100点のテストを持ってくるたびに、妹につらくあたりました。妹はなにもわるくないのに…

自分でもいけないことだとわかっているけど、妹が100点をとってくると素直に「すごいね!」ってよろこべません。
「お兄ちゃんは100点とれる?」と、わざと見せつけられているように思え、イライラしてくるのです。

この前、父さんがぼくに分数を教えてくれました。
とてもスラスラととけるようになったころ、ポツリとひとこと父さんが、「お前は父さんの子だから頭はいいはずだよ」と言いました。
なんだか心がウキウキしちゃいました。
先生!ぼくも100点とれるかな?
100点とったら、まっさきに母さんに見せてあげたいです。
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私はこのお便りにあるお母さんと、かつては同じ感情や意識を持ち、数々の失敗をしてきました。

「どうして同じきょうだいなのに…」

ついつい言葉にしてしまったお母さんの感情。

そして、その感情のさらに深いところにある「妹はできるのに太郎はなぜできないのか…」という言葉にしていないマイナスの意識。

兄妹ではありますが、まさに他者との比較の意識です。これは人間ならついつい湧いてしまう感情(意識)です。

でも、それがわが子にどれだけの影響を及ぼすのか。
そこまで実感できている人は少ないかもしれません。

私たちはその影響力を知らずに、自分の内面にある意識をノーチェックでわが子に伝えてしまっていることがあるのです。

意識は目には見えないものですから、「伝わっていないはず」と思っている方も多いかもしれませんが、親子という密接な人間関係においては、太郎くんがお便りに書いているように、しっかり伝わっています。「太郎の問題はむずかしいから」と、言葉で繕っても、お母さんの本当の意識は今回のお便りにあるように、しっかり伝わっているのです。

この当時の太郎くんは、学業の面でいえば、あまりパッとしませんでした。

学校での成績もよくなく、算数に対する苦手意識もあり、自己肯定感はかなり低い状態でした。小学校の成績が順位で評価されていたら、きっと下から数えたほうが早い位置にいたでしょう。

この状況だけ汲み取れば、太郎くんがその状況に陥っているのは、これまでしっかり家庭学習をせず、わからないことを残し、能力的にも妹さんよりは若干おとっていることが原因と考える方もいるでしょう。

しかし、私はその後の太郎くんが、お母さんが内面のマイナス意識を変えたことで、学業の面で成功された状況を見ていますので、必ずしも能力的なことが学業不振を招いているとは思えません。

太郎くんの学業不振の大きな原因は、まわりの大人が太郎くんをどう見ているのか。

そして、太郎くんと最も深いつながりのあるお母さんが太郎くんをどう見ているのか。

まさにここにつきると思います。
お母さんの言葉にしていない「意識」が作る環境。
それが太郎くんの自己肯定感、学業不振に影響を与えているのです。


太郎くんのように学業不振を問題として抱え自己肯定感が低いお子さんは、たいてい物事が長続きしません。そして、何をするにしてもグズグズしていて、忘れものも失敗も多いです。そういう姿を見て、さらに私たちは「どうしていつもこの子は…」という意識を持つのです。

つまり太郎くんは、生活面においても「だいじょうぶかしら…」、「部屋をそうじしないさいといつもいっているのにわからない子!妹はできているのに!」、「いつも支度に時間がかかっている!妹はもうできているのに!」、「自分でやりたいと言った習いごとも長続きしない…どうしたものか」というような意識を、いつもお母さんから浴びるという環境下で生きているのです。

この状況下で、集中して質の高い学習ができる子はいるでしょうか。

私はいないと思います。
これは大人でも難しいと思います。


お嫁さんに対して、いつも不満を持っている姑がいる環境で、お嫁さんは気持ちの良い毎日が過ごせるでしょうか。

いつも自分に不満や不安を抱えている上司のもとで、やる気を持って仕事に取り組める方がいるでしょうか。

これがまさに、他者との比較から生まれるマイナスの意識が環境に影響を与え、生命が持つ能力の可能性の成長を阻む事例です。


ただ、太郎くんのお母さんにとっては、太郎くんも大切なわが子です。
お腹を痛めて産んだ大切なわが子です。
ですから妹さん同様、自分の命にかえてでも守っていきたい存在です。

にもかかわらず、「どうして同じきょうだいなのに…」という意識が湧いてきてしまう。

それが、私たち人間です。


じゃあ、どうすればいいの?


かつての私がそうだったように、だれもがそう感じると思います。

そして、知らず知らずのうちにマイナスの意識で環境を作っていたかもしれない自分を責めてしまうかもしれません。
ですが、決して自分を責めたりしないでください。

まずそういう意識が私たちの中に存在していて、それが想像以上に影響力があるということを知ることからすべてが始まります。

この意識の問題は、一朝一夕に解決するような問題ではなく、私は未だに取り組んでいる課題でもあります。ただ、意識の問題に取り組めば取り組むほど、環境が改善し、子どもが生き生きとしてくることは事実です。

もしわが子に最高の環境を用意していきたいと考えているなら、まず自分の内面にある意識を見つめ、自分の中にどのような意識があるのかを知ることから始めてみましょう。
その意識のひとつ一つを自分だけのノートに書き出してみるのもよいかもしれません。

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