秋原(あきのはら)

理想化しないでもろて

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理想化しないでもろて

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『サイテーの飲み会がしたい』

手に入りますか。手に入りません。光りかがやくものばかり見つめているせいで、すでに手に入れたものたちにはライトが当たらず、靴の下でへこんで死んでいるのです。 とおくのお星さまに向かって手を伸ばしても絶対手に入らないことは知っているのに、どうして私は欲しがるのでしょう。美しい男。長いまつ毛。アンニュイで挑発的な瞳。ほんのり笑みの浮かぶ愛らしい口元。自然で可憐な愛嬌。人を疑わないこころ。 とどきそうもないのにそれでも手を伸ばす、このかなしい人間の性(さが)を食い止められないのな

    • 『恒星』

      あなたの発する黄土色の光が わたしの外殻を貫き、空洞にたっぷりと流れ込んだ 内からあなたに照らされた あなたの光で世界の輪郭を見た 昨日と変わらない道を、変わらないねと言うだけで 互いの体温が一つの目盛りに揃った 望遠鏡を向けられても、クレーターは見えないのだから 頬をよせ笑顔を返せた 、のに 超新星爆発 あなたはきれいに消えてった わたしは回転をやめた できなくなった 光が、身体中の隙間から流れ落ちていく すくおうと      するが        指の間を     

      • 花火あるいは恋人の定義

        花火が好きというより、花火を見に行こうと約束をする瞬間のほうが好きだ。 花火を見終わって人々は、夏の葬列のように知らない道を引きずり歩く。 爆音で咲く花火のあとで、より身体はカラになって、冷たい下駄の音だけが、からからと鳴り響く。 写ルンですとかもそうだ。着物を撮り、花火を撮り、関係を撮る使い捨てのフィルムカメラ。 現像された写真を手に入れるより、どんなふうに写っているのかと想像し胸が高揚するシャッターを押す感覚が好きだ。 写真の出来がすぐにわからない、期待を馳せる

        • 好きな歌詞選手権③

          ─もう何もいらない トイレのタイルにそう誓うんだ─ 「キルミー」(SUNNY CAR WASH) ・おとなになった私たちにとっての“決心”って、紙にかいて先生に提出するものでも前日の夜に準備してクラスの皆の前で発表するものでもないんですよね。たとえばトイレのタイルとか路傍の排水溝のすきまとか、誰も見てないツイッターの裏アカとかに密かにしたためるのが、おとな界における決心のスタンダードになっています。 それはそれはとてもさみしいことです。 ─そうして僕たちは 飲み干せない

        • 固定された記事

        『サイテーの飲み会がしたい』

          『Which do u like bitter』

          ファミレスでフォンダン・ショコラ食べてたら、甘いのとしょっぱいの交互に食べるのが好きな人は飽き性らしいよって隣に座ってたカップルが話してた。 「えー、俺は甘いものは最後に食べたい派〜。」 誰かにLINEを返しながら彼氏が言った。 「来週の日曜空けといてくれた?」 ハンバーグ食べながら彼女が言った。 「え?あー。なんだっけ。つか多分友達と会う約束してるわ。何?」 「…映画。わたしの好きな映画が再上映されるっていうから見にいこうねって、話してたじゃん。」 「あー、ご

          『Which do u like bitter』

          好きな歌詞選手権②

          ──遣る瀬ない沙汰止みを 溜息にして無常 嘆いても時は男女平等── 「能動的三分間」(東京事変 詞・椎名林檎) ・リリースされたのが2013年5月ということで、もう10年前です。その時代に、いや、その時代だからこそなのかもしれないけれど、椎名林檎は男女格差でなく男女平等の概念のほうを徹底して歌いつづけています。このひとの女性としての強さには本当に毎度、惚れる。 ──夏休み 心は休めない だってまだ 何も残せてないから── 「夏嵐」(ジェニーハイ 詞・川谷絵音) ・“学生

          好きな歌詞選手権②

          好きな歌詞選手権①

          ──気の抜けてぬるくなった ラムネ越しでも 眩しく見えるもんだから── 「初恋」(神はサイコロを振らない×アユニ・D × n-buna from ヨルシカ) ・きっと誰もがそれぞれすごく個人的な「きみ」像を持っている。けれど、多くのひとは、ラムネ越しに「きみ」を見たすてきな経験なんて持ってない。ないのだけれど、それでもたぶんこの「きみ」は、誰にとってもノスタルジックに聴こえるんですよね。音楽(ないし、調律)の力ってそういうところにあるとおもいます。夏のにおいが吸いたいひとへ

          好きな歌詞選手権①