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好きな歌詞選手権③

─もう何もいらない トイレのタイルにそう誓うんだ─
「キルミー」(SUNNY CAR WASH)

・おとなになった私たちにとっての“決心”って、紙にかいて先生に提出するものでも前日の夜に準備してクラスの皆の前で発表するものでもないんですよね。たとえばトイレのタイルとか路傍の排水溝のすきまとか、誰も見てないツイッターの裏アカとかに密かにしたためるのが、おとな界における決心のスタンダードになっています。

それはそれはとてもさみしいことです。



─そうして僕たちは 飲み干せないままの 微温いコーヒーを 持て余したままで 歩いたその先で キスの真似をする─
「あいまいでいいよ」(羊文学)

・とくに恋愛みたいな正解の無いもの、友だち・道徳・宇宙・生き方・じぶん、そういうものたちについての1つの答えとして、あいまいでいいよ、と赦(ゆる)してくれる存在が、どれだけ貴重で尊いことでしょう?

キスの正解なんてわからない、いかした服を選ぶセンスなんてなくても、どうやら真似でいいらしい。自分にとって真実なことに素直にあこがれて、真似をすればいいらしい。かっこよくなくても唯一のダサさを目指せばいいんだよ、という、赦しの歌詞。

いちばん好きな種類の歌。



─頑張ろう頑張ろう 努力してこそヒロイン だけど泣いちゃう沈んじゃう つらい時こそおかわり! 消えちゃえあっちいけ いらない弱気ヒロイン─
「ヒロインたるもの!」(HoneyWorks feat.涼海ひより)

・“努力してこそヒロイン”、“いらない弱気ヒロイン”、めちゃメタ思考かつ過激派でおもろい。

こんにちの少女漫画ではこういうメタ思考、つまり自分をヒロインか当て馬かモブか把握して立ち回るキャラクターが散見される。

そういうキャラクターたちをわたしは泣きたくなるほど愛しているのだが、さてそれにしたって『月のお気に召すまま』(木内ラムネ)のこのシーンは切なすぎるとわたしは思った。きみは、どう思った?

『月のお気に召すまま』(C)木内ラムネ/集英社


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