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好きな歌詞選手権②

──遣る瀬ない沙汰止みを 溜息にして無常 嘆いても時は男女平等──
「能動的三分間」(東京事変 詞・椎名林檎)

・リリースされたのが2013年5月ということで、もう10年前です。その時代に、いや、その時代だからこそなのかもしれないけれど、椎名林檎は男女格差でなく男女平等の概念のほうを徹底して歌いつづけています。このひとの女性としての強さには本当に毎度、惚れる。


──夏休み 心は休めない だってまだ 何も残せてないから──
「夏嵐」(ジェニーハイ 詞・川谷絵音)

・“学生の夏休み”の倦怠感、焦燥感、尊さ、ふくらむ期待、理由なんてない気持ち、ほとばしる青春の早さは、実は大人にしかその価値がわからないのかもしれない。川谷絵音のような大人になりたいわけではないけれど、川谷絵音のような詞が書ける大人には、べつに憧れたっていいのかもしれません。


──君の一歩は僕より遠い 間違いなく君の凄いところ 足跡は僕の方が多い 間違いなく僕の凄いところ──
「アカシア」(BUMP OF CHICKEN)

・2020ポケモンのスペシャルMVテーマソング。①ポケモンから見た人の凄さと、②ポケモンから見たポケモンの凄さ。この対比構造。

もし②が、人から見たポケモンの凄さ、だったなら。すなわち、「足跡は君の方が多い 間違いなく君の凄いところ」だったなら、このフレーズは歌としてとても紋切り型だった。お互いに認め合うパートナーとしての、ただの子ども向けアニメのMVとしてのありきたりな歌だった。

主語が“僕”であることによって、「間違いなく僕の凄いところ」と言うことによって、そこには確かにポケモンの自我が発生している。認めるという行為は、認める側から認められる側へ向かう一方的なものだと捉えられがちだ。しかしながら、決して一方的では成立しえないのだ。そういうメッセージを感じざるを得ない。

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