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毒づきドクコのエンターショー最終章

煌びやかな光がドクコとリコ包み、ジャズのようなリズムが流れ出す。

『It's show time!!』

ドクコが叫ぶとどこからか小さな小人たちが現れて、円を描き、踊り出し、そしてリコを連れ出し、赤い木の椅子に座らせた。

そしてドクコがリコにウインクすると、ミュージカルのように歌い始める

      (伴奏)

『あたしは人に裏切られて誰も信用できなくなった。昔は素直でいい子。人はみんな、仲間だと思っていた。みんなが大好きで一緒にいて楽しくていつまでも一緒だと思っていた。』

ドクコは空を見上げながら歌い続ける。遠い空を見つめながら。

小人たちがドクコの周りに並び、コーラスが入り、ますますショーが盛り上がり歌にも厚みが出始めた。

するとドクコの顔が鋭い顔へと移り変わり、低めの声で歌い始める。

『そう!ずっとそばにいてくれると思っていたのにすこしのすれ違いと誤解であたしはどん底まで落とされて突き放された。共に笑い遊んできた仲間は白い目であたしを見つめてヒソヒソ話をする。あたしがみんなに近づくとそっぽ向いて離れていく。口も聞いてもらえず、どんどんひとりぼっちになった。。。誤解なのに。。私じゃないのに。。どうして。。どうしてなのーー!!!』

ステージは鎮まりかえり、
ドクコはその場にペタンと座り込んだ。
周りにいた小人たちは消えてたったひとりステージに残されたドクコ。

うつむき、ボロボロな心を持ったドクコの笑顔は消えて、頬には一筋の涙がつたう。

『ねぇ。。あたしじゃないんだよ。。信じてよ。。誰か。。誰か。。。
お願い。。。たすけて。。』

助けてと小さくつぶやくドクコの声は誰にも届かずただひとりその場所でうずくまる。

ステージが一面真っ赤に変わった。
メラメラと燃える火が現れ始める。
ドクコの怒りを炎たちが表現し始める。

『なんで!なんで!わかってくれないのよ!違うって言ってるじゃない!何を見てきたのよ、あたしの何を見て友達でいてくれたのよ!本当のあたしの姿を見て傍にいてくれたんじゃないの!?なぜ?信じてくれないのよ!!』

叫び出したドクコの周りには大きな龍が2匹現れた。
ドクコの怒りに合わせて龍たちが空を舞い、稲光が鳴り始める。
2匹の龍が暴れ出し、炎を吐き、周りをすべて焼き尽くす。

『もういい!あたしなんて誰にも受け入れられないんだ!もう、もう、誰も信じなーーーい!!!』

とドクコが叫んだと同時に大きな稲光がドォーーーンと地面に落ちた。
あたりは真っ暗になり、ぼんやり青い光がステージを包む。

そして怒りを出し切ったドクコは倒れ動かなくなってしまった。

『え?ドクコさん?』
リコは心配そうにドクコを呼ぶ。
『ドクコさん?ねぇ、ドクコさんってば。。まだショーの途中でしょ?ねぇ。。』とドクコに近寄り、手に触れたリコは表情が固まった。

『うそっ。。冷たい。。息してない。。うそでしょ!ドクコさん!!ねぇ!ドクコさん!!』

ぴくりとも動かないドクコ。
リコはドクコの隣に座り込みただ呆然としている。

『まだ聞けてないよ、ドクコさん。。あなたの過去の苦しみから、今を生きるあなたの生き様を。。あたしの過去に触れて、生まれ変われる手伝いをしてくれるんじゃなかったの?ひとりにしないでよ。まだひとりじゃ無理だよ。。寂しい。。あたしがあなたの友達になるから、目を覚ましてよ。。お願い……』

そうリコはドクコに話しかけながら涙を流しドクコの手をぎゅっと握った。
『お願い…。あたしをひとりにしないで…』


  ドクン、ドクン……


ドクン、ドクン……


急に空から光が降りてきてドクコを包み出した。

淡いピンク色の一筋の光がドクコの心臓にむけてただ真っ直ぐに伸びると次の瞬間、何も見えないぐらいに周りが明るくひかり、リコは真っ白な世界に包まれた。

『ま、まぶしい……』思わず目を瞑るリコ。


チュンチュン、チュンチュン。


『うん!?鳥の声?』とそっと目を開けたリコ。

目の前に広がるのは初めにドクコと出会った公園のベンチだった。

『え?ここは……あの公園?』

周りを見渡すリコ。

『そうよ!リコ!ここはあなたと最初に出会った公園』とベンチの背もたれに座り、ドクコはニッコリ笑いながらリコを見つめる。

『ドクコさん!!』とリコは泣き出した。ドクコが生きていた事がかなり嬉しかったのとびっくりとで訳わからずに泣いた。

『よく泣く子ね、あんたは!』

『だって。ヒック。。ドクコさん動かないし、冷たいし。。ヒック。。もう死んだのかと。。』
しゃくりあげながら話す、リコ。

『勝手に殺さないでよ!最高のショーだったでしょ!龍がガォーと炎を吐き出したりして最高なシーンよね!』

『もう!なんなんですか!人が心配してるのに!』リコはぷんぷんと怒り出した。

『いいわね、リコ。色んな表情が出てきたじゃないよ。もう、泣きべそ顔とはさよならね、うふふ』

リコは、ハッとした。
ドクコと旅に出る前は泣きべそ書いて自分にも自信がなくてうつむき加減だったのに。

『リコ、あなたとのこの旅で感じて欲しかったのは喜怒哀楽があってこそ人間ってこと。
あたしがあなたに見せた哀と怒。
これは人間が一番出しにくく、扱いにくい感情なの。日々、感情を押し殺してもう爆発寸前の人がこの世の中にどれだけいると思う?あなたが想像しているよりも多く、苦しんでいる人も多いわ。』

リコはドクコの言葉に真摯に受け止めた。出会い始めの頃は何を言ってるんだ?と疑い、素直に聞かなかった。

あの時は相手に対する不安や疑いを持つことで素直に人の言葉を自分の心に届かせようとしていなかったからだ。

『ドクコさん、私、人に裏切られたことによって自分をすごく卑下し、自信をなくした結果、人を信じなくなっていた。でも、今はあなたと旅に出て自分を振り返ったことで、色んな自分が見えて、少し自分を好きなってきました』

『それはよかった!リコ、これからはもっと自分のことを好きになってね!あなたはこの世でひとりしかいない宝物。そしてその宝物を傷つけるものからは解放され、自分の素晴らしさを信じてほしい』

『はい!ドクコさん!!』

と、ふたりは朝日を見ながら微笑みあった。

『じゃあね!リコ。あたしはそろそろ行くわね』

『ドクコさん、本当にありがとうございました!私、自分磨き頑張ります!』

ドクコはその言葉を聞き、ニコッと笑ってリコのもとを去った。

ヒールの音をコツンコツンと鳴らしながらまた世で泣く女子の元へ向かうために。

            END


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