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オーナーシェフの「行きたい!」をカタチにした、京都の路地裏フレンチ「bistro bébé(ビストロべべ)」

取材・文:西尾明彦(フードライター)
撮影:前田達也

京都河原町駅から徒歩約10分、清水五条に2022年5月にオープンした、街並みに溶け込んだ小粋なフレンチ「bistro bébé(ビストロ ベベ)」。オーナーシェフの北村洸司さんに、お店をオープンするまでの経緯や店作りへの思いについて伺いました。

オーナーシェフ:北村洸司さん
滋賀県彦根市出身。イタリアンやバルなどの飲食店を展開する株式会社nadeshicoで大学4年間アルバイト勤務。新卒で株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに入社後、税理士事務所や京都のイカリヤ食堂での勤務を経て独立。ソムリエ。魚が捌け、ピザを焼ける、カフェラテも作れる万能型料理人。

優先順位はハコの大きさ。

流行るお店はどこでも流行ると思っているので、物件選びの優先順位の1番目は、ハコの大きさで、業態はハコに合わせるつもりでした。2番目が家賃です。

実際に内覧したのは2件だけです。半地下の物件が良いなと思って検討していたら、すぐ決まってしまって…。たまたま歩いていたら、ビル1階のこの物件がテナント募集しているのを見つけたんです。

専有物件で、不動産情報に出ていない物件でした。15〜20坪が理想で、庭を含めて19坪です。akinau株式会社の代表の谷口さんに相談したら、良いんじゃないということで、即決しました。

業態はフレンチでも居酒屋でも、立地に合わせて決めるつもりでした。他人と同じことはやりたくなかったので、周りのお店と違う業態をやろうと思っていました(笑)。雰囲気と業態がマッチしないと流行らないので、居酒屋だと難しかったと思います。

もっとこうしたい、自分が行きたいフレンチ店を形に。

敷居は高くなくかしこまらず、フレンチらしさを崩さず。イメージしていたのは、ピンヒールを履いたオトナな女性が1人で来て、ワインを2、3杯飲んで帰れるようなお店であり、大学生の男の子がちょっと背伸びして、デートで連れて行った女の子に喜ばれるようなお店です。


メニューはコースだけでなく、単品で気軽に飲むこともできるように。お客様はご近所の方からも、県外からも来てくださいます。学生も多く、理想通りの客層の方が来てくださっています。

客単価は4600〜4700円。自分の原体験をもとに、僕が「もっとこういうお店なら行きたい!」を形にした、お洒落フレンチです。

アペロをカジュアルに、でも格好良く。

デートでランチの後に、カフェ気分じゃない時、居酒屋で昼飲みは使いにくいですよね。そんな時に、アペロ(アペリティフの略称)という選択肢をもっと気軽に利用してもらいたいです。

アペロとは、フランス語で食前酒という意味で、フランス人のライフスタイルには欠かせない習慣のひとつ。アペロをカジュアルに、でも格好良く。ディナーメニューの一部を小皿で、お手頃な値段で提供しています。

14時~17時のアペロタイムから。小皿でシンプルな「ポテトサラダ」390円

「お店が綺麗で働く人が格好良くて、働いていることがステータスになるようなお店を目指しています

以下ディナーメニューより。「燻製ベーコンのポテサラ」680円。「ベーコンが主役のポテトサラダです」
「鴨肉のロティ オレンジソース」1,950円「野菜はあまり好きじゃないので、ガルニは無くしました。その分お得です(笑)」
「牛肉のタルタル」1,490円
ワインはグラス900円から、ボトル4500円から
お通しは、代わり映えしないパンの代わりに、ドライトマトとチーズクリームのシュー

お店を作って終わりじゃない。ずっと続く関係性がいい。

内装やデザインはすべてakinauにお任せしました。こんな客層に来てほしい、客単価は幾らで、出せる金額がどれだけ、などイメージを全て伝えて、想いを全部汲み取ってもらい形にしてくれました。

一般的にデザイナーさんって、お店が完成したら(関係性は)終わりです。オープン後の対応は業者任せなところが多いなか、ドアが壊れたので連絡したら、akinauの社員の方が駆けつけてくれたんです。

「中から外が見えるようにしてほしいという希望も叶っています。窓枠があることで、カフェらしくなりそうだという提案もくださいました」
3つの空間に分かれた店内。入ってすぐの大テーブル席、通路に沿ってハイチェアが並ぶカウンター席と、段差を下ったローテーブル席だ。配管の都合で生じる段差は、世界観の切り替えにうまく活用されている

自分が働きたい雰囲気、導線にもこだわり。

オープンキッチンにこだわりました。料理中の風景が見えるお客様は安心ですし、スタッフとアイキャッチもしやすいです。気軽な声掛けから会話がはずみ、常連客になってもらいやすいです
基本はシェフ1人での営業。直線的で、一歩で必要なものに届く、料理〜提供がしやすいコンパクトな導線。冷凍庫をは置かず、メニュー構成やオペレーションにも無駄を省いた

記念日利用としてコース料理を始めたら好評で、バースデープレートは毎日よく出ますね。週末はコース予約で埋まるようになりました。仕込みは必要ですが、営業前に準備しておけば、提供に時間はでかかりませんし、食材ロスがなくなるのでありがたいです。

お店を作る場合、1軒目はだいたい後から不満が出てくるものなんです。使いにくさはないし、ダサいから直したいもない。ハード面は最初に作ったまんまで、全然不満はありません。

「akinau」を選んだ理由

店作りにはデザイナーさんとの相性が大事だと思います。融資してくれた銀行との付き合いがあるデザイナーさん2、3人に会って、条件を伝えたら、皆に無理だと断られました。でも、akinauの谷口さんは「何とかなりそうだ」と言ってくれたんです。あ、この人、無理って言わないんだ、28歳の若造が何言ってんだとか思わないんだって。

谷口さんとの出合いはInstagram。自分で飲食店もやっていて、飲食の大変さも分かっている。それでいて、何だか楽しそうだし、ワクワクしている大人は少ないと感じていたので良いな、と。

最近は、newstartedという物件探しから手伝ってくれる店舗デザインも始めたみたいです。


2021年の年末12月29日頃にメールして、年明けに返信があり、zoom面談をしてお願いすることに決めました。それから4カ月後、2022年5月9日にオープンしました。

大テーブルとライトの雰囲気はお客様から好評です。僕も気に入っています
ライトは最初、黒ボックスの予定でした。施工が始まってから、このライトどうですか、と手作りのものを提案してくれました。デザイナーってすごいなと

言葉をカタチにしてくれるデザイナーさんは格好良いなと思って、デザインを勉強するために、この春、京都芸術短期大学に入学しました。営業しながらの週末スクーリングは大変ですが…。卒業したら、akinauで働かせてくださいってお願いしています(笑)

bistro bébé(ビストロ べべ)
京都府京都市下京区石不動之町692-2 Laquoh Complex 1F
https://yoyaku.tabelog.com/yoyaku/net_booking_form/index?rcd=26037516


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