【森の家⑥】〜森の脅威とトイレの神様〜
長い助走期間を経て、いよいよ【森の家】が始まった。助走していた間にも地域の人から話を聞いたり、元の持ち主さん(売主)と話し合いを重ねたことで、購入と同時に突然始まったという感じはなく、出入りを繰り返すうちに気づいたら始まっていた、というのが実感だった。
売買契約書を作成する上で、私が唯一こだわった点が「売り主さんの責任で残置物を処理してもらうこと」だった。古家の中に詰まった所持品やゴミなどを撤去した上で物件を明け渡してもらうという意味だ。古い空き家の売買では、「残置物」がよく問題になることから、購入前の話し合いの時点でお願いし、契約書にも明記しておいたのだった。
売り主さんは、こちらのこだわりをすぐに理解してくださった。結果から言えば、残置物の処理は期待以上にしっかりと、また速やかに進めていただいたと感じている。契約書を取り交わす前から少しずつ整理を始め、入金した後には、「そんなに急がなくても暖かくなってからで結構ですし・・」と、のんびり構える私をよそに、急ピッチでゴミをかき出し、処分場へと運んでくれたのだった。つくづく真面目なご一家だったと思う。
そして、ありがたいことにご主人さんは、古家の裏に建っていたボロボロの小屋の解体処理まで「ワシ、やりますし」と言ってくださったのだった。ボロ小屋にはぼっとん式のトイレと錆びついた五右衛門風呂があり、それらを撤去してくれるというのだ。
「あれ、知ってます?トイレの解体のやり方?」
「いや、知らないですけど。建物を壊して、トイレは埋めたらいいのかな・・ぐらいに思ってたんですけど」
「トイレはね、ちゃんと息ができるようにせんとアカンから。先祖のをね」
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