「ウェブ小説は似たような作品ばかり」
2024/01/08(月・祝)
小説家になろうやカクヨムに代表される投稿サイトの小説……いわゆるウェブ小説は、似たような作品ばかりが人気になり、書き手も読み手も進取の気性に欠けていて不満だという意見がTwitterで定期的に話題になる。
この日記を書いている現在のウェブ小説は令嬢もの、勇者もの、配信者ものなどのライトノベルが主流であり、それ以外の作品はなかなかPV数が上位にならないという事実はある。そこに、Twitterで問題提起したくなるほどの悩みと怒りを感じる原因とは。
一番多いのは、やはり、ぶっちゃけ、自分の書いた(あるいは応援している)小説が大きな人気を獲得できず、コンテストに入賞したり、書籍化されたりしにくいからか。
圧倒的なクオリティの作品を発表して大きな支持を集め、流行を変えるほどの影響力を発揮すればいい……んですけど、書いていて自分で具合が悪くなってきた。それができてるならそもそも悩まないよね。私だって自分が天才じゃないことに15年前からずっと悩んでるよ。タスケテー。
しばしば不思議に思うんですけど、「小説投稿サイトでランキング上位になること」に、どうしてそこまで固執するんだろう。
自分の小説を読まれるためのそれ以外の方法がこの世に存在しないみたいに思い詰めてしまうのはなぜなんだろう。
笑わずに上の図をご覧ください。笑うなっつってんだろうが。
ウェブ小説も、その中の流行のジャンルも、確かに大きな規模だけど。
でも「一部」です。
自分の書きたい小説がそこの流行にどうしても寄せ切れないとか、あるいは本格的な出来映えすぎてセンスのない人たちから評価されないという自負があるなら、どんどん他の場所に持っていけばいい。
これはTwitter上でもよく見かける意見です。
でも、公募の一般文芸やSF・ミステリの新人賞って、1作か2作しか受賞しないし、文学的なムードが濃くないと、ひたすら面白いだけでは評価してくれないから難しいじゃんか……なんて正直な気持ちを私は笑いません。
そうだよ。無理ゲーだよあんなの。
1,000作とか応募があったら、上位100作くらいは出版されてもおかしくないレベルのものだと思いますが、さらにそこから選抜されるのは厳しすぎるって。(ただ、いまはウェブ小説のコンテストも厳しさは同等かそれ以上だとは思いますが……)
だから、場所を変えなくてもいい。
いいけど、流行やランキングにはこだわりすぎず、篤く支持してくれる人を少しずつ増やして大事にする。
謎の画像の「その他」のところにある作品に、いま、読者も出版社もすごく注目しています。流行「じゃない」ものを求めている人は絶対に一定数いて、ランキング上位でなくても書籍化の声がかかったりする。
そこにいればいいと思うんです。
いや。
自分の作品がどうこうじゃないんだ。矮小な嫉妬に落とし込むのはやめてもらおうか。自分は小説好きとして、閉塞したウェブ小説の状況そのものを憂いているんだ。商業主義に左右されない創作ができるはずの環境で、多様な作品が生まれることを純粋に望んでいるのだ……。
そういう人もいると思う。
素晴らしい考えです。そういう意見も、シーンの活性化と延命のためには必要。
しかし、もしウェブ小説の環境を本気で変革したいなら(圧倒的な作品で流行を変える以外の方法としては)その人が目指すべきは作家ではなく、小説投稿サイトを作って運営する側の職業だろうとも思う。編集者とか出版プロデューサーとかIT企業社員とか。
アイドルではなく、それを育ててムーブメントを作る「P」のほうに回る。それが望みだろうか。やっぱり現場にいたいだろうか。
実は私も恥ずかしながら、少女向けライトノベルを書いているときに「ここでは決まったジャンルの似たような作品しか書けないのか……」とダークサイドに堕ちていた時期があります。私が本を出していたころの乙女小説は、今のようにどしどしマンガ化、アニメ化されるような雰囲気はなかったので、細い流行を見つけ、それをつかまえて太くするのに、作家も編集者も懸命でした。
だから、いまのウェブ小説は……と言いたくなってしまう人の気持ちもわかるんだ。決して上から目線で嘲笑しながらこの文章を書いているわけではない。
ウェブ小説という媒体にこよなく愛着があるのか、実はそういうわけではないのか。媒体そのものに愛着があるなら、ウェブ小説のために何ができるか。
今の言い方をすれば「解像度を上げて」、自分の悩みと望みの核にあるものについて考えてみたらいいんじゃないかなと思います。
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