見出し画像

新型コロナウイルスワクチンに関する私見

【結論】

2021年6月現在、日本で薬事承認されている新型コロナウイルス(以下、コロナ)ワクチンは、ファイザー社製とモデルナ社製のいずれも有効性・安全性ともに優れている。
一部の禁忌の人を除き、これらのワクチンの接種が社会全体に広がることにより、コロナ感染症の蔓延を抑えることができると筆者は考えている。

【コロナに罹ると?】

ワクチンの話をする前に、そもそも、コロナ感染症に罹患するとどうなるのか。厚生労働省の資料を見ていきます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引・第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/000668291.pdf

初期症状は インフルエンザや感冒に似ており,この時期にこれらと COVID-19 を区別 することは困難である.本邦における入院を要した COVID-19 症例のレジストリ(COVIREGI-JP)の 2,600 例の解析によると,入院までの中央値は 7 日であり,頻度が高い症状は発熱,咳嗽,倦怠感,呼吸苦であった.下痢は約 1 割でみられた.味覚症状(17.1%),嗅覚障害(15.1%)は海外の報告よりも頻度が低いようである. COVIREGI-JP のデータでは,入院を要した 2,600 例のうち最終的に酸素投与を要しない軽症例が 62%,酸素投与を要した中等症が 30%,人工呼吸管理や ECMO による集中治療を要した重症例が 9%であり,このうち 7.5% が死亡し入院期間の中央値は 15 日であった.

画像1

初期症状がインフルエンザや風邪に似ていて、重症化して肺炎を引き起こしたり、最悪の場合は死に至ることもあります。

次に、重症化リスクについて。

P.10「3 重症化のリスク因子」より

重症化リスク

高齢や各種基礎疾患、喫煙、妊娠等が挙げられています。

そして、後遺症について。

P.12「5 症状の遷延(いわゆる後遺症)」より

イタリアにおける 143 人の患者調査では,COVID-19 から回復した後(発症から平均 2 カ月後)も 87% の患者が何らかの症状を訴えており,特に倦怠感や呼吸苦の頻度が高かったという.その他,関節痛,胸痛,咳,嗅覚障害,目や口の乾燥,鼻炎,結膜充血,味覚障害,頭痛,痰,食欲不振,咽頭痛,めまい,筋肉痛,下痢などさまざまな症状がみられるとされている.32% の患者で 1 ~ 2 つの症状があり,55% の患者で 3 つ以上の症状がみられた.

呼吸苦、味覚障害などの後遺症があるようです。

以上のように、コロナ感染症に罹るとつらいことが起きる場合があるため、自身への感染や他人への感染を防ぎ、感染症の蔓延防止に努めたいと思います。

【各ワクチンの有効性について】

ファイザー社、モデルナ社それぞれについての有効性を見ていきます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html

発症予防効果は約95%と報告されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_moderna.html

発症予防効果は約94 %と報告されています。

そして、気になるのが

現時点では感染予防効果は十分には明らかになっていません。

という記述ですね。

「十分」かどうかはさておき、両社のワクチンの感染予防効果は、海外の報告により明らかになっています。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2101765

 In the follow-up period starting 7 days after the second dose,the vaccine effectiveness for documented infections, symptomatic illness, hospitalization, and severe disease was 92% (95% CI, 88 to 95), 94% (95% CI, 87 to 98), 87% (95% CI, 55 to 100), and 92% (95% CI, 75 to 100), respectively.

イスラエルでは、ファイザー社のワクチン2回目接種から7日以降において、

infections(感染)→92%
symptomatic illness(発症)→94%
hospitalization(入院)→87%
severe disease(重症)→92%

という有効性を示しています。

アメリカでの報告について、忽那氏の記事を紹介します。
こちらは、両社のワクチンを合算した数字です。
※引用部分以外も素晴らしい解説ですので、是非全文を読んでね。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210411-00231933/

その中から代表的な研究として、アメリカCDCの機関誌MMWRに掲載された報告をご紹介します。

3,950人の医療従事者、ファースト・レスポンダー(救助隊・救急隊・消防隊・警察など)、エッセンシャル・ワーカーを対象に、13週間連続で毎週新型コロナウイルスのPCR検査が実施されました。

その結果、症状の有無にかかわらず、新型コロナワクチンの2回の接種から14日以上経った人は90%の感染予防効果が示されました。

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7013e3.htm?s_cid=mm7013e3_x

このように、mRNAワクチンである両社のワクチンについての有効性は、いずれも発症予防効果95%程度、感染予防効果90%程度であると考えられると思います。

注意点として、この数字は、武漢で最初に流行した従来のコロナに対する有効性です。

変異ウイルスについて見ていきます。

ファイザー・ビオンテック社 mRNA #新型コロナワクチン のカタールでの効果(effectiveness)報告(赤ちゃん)
B.1.1.7(イギリス)変異ウイルスへの感染予防効果89.5%、B.1.351(南アフリカ)への同効果75.0% 等。重症化予防効果もそれぞれに対して 100%

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2104974

B.1.351で感染予防効果90%程度→75%程度と、効果がやや落ちているようです。(75%でも結構優秀だと思います)

【各ワクチンの安全性について】

PMDAの添付文書より、海外の臨床試験における主な副反応の状況を見ていきます。

ファイザー社
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/672212_631341DA1025_1_03

ファイザー副反応

12歳~15歳を対象にした試験についてはこちら。

ファイザー子ども副反応

年齢が低いグループのほうが、副反応が多く発生しているようです。

モデルナ社
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400256_631341EA1020_1_01

モデルナ副反応

ファイザー社とモデルナ社に共通して、接種部位の痛み、頭痛、疲労、悪寒、発熱などの症状が見られ、全体的に1回目よりも2回目に多く副反応が起きているようです。
「日常生活を妨げる」以上である「グレード3以上」の症状は、かなり頻度が少なくなっています。

主な副反応の他に、稀な副反応としてアナフィラキシーが挙げられます。アメリカのJAMAの報告によると、ブライトン分類(レベル1、2、3)を満たす件数は、ファイザー社で4.7/100万接種、モデルナ社で2.5/100万接種でした。

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2776557

During December 14, 2020 through January 18, 2021, a total of 9 943 247 doses of the Pfizer-BioNTech vaccine and 7 581 429 doses of the Moderna vaccine were reported administered in the US (CDC unpublished data, February 2021). CDC identified 66 case reports received by VAERS that met Brighton Collaboration case definition criteria for anaphylaxis (levels 1, 2 or 3): 47 following Pfizer-BioNTech vaccine, for a reporting rate of 4.7 cases/million doses administered, and 19 following Moderna vaccine, for a reporting rate of 2.5 cases/million doses administered. 

日本では、ファイザー社で100万接種あたり12.9件と、海外と比較して多く報告されています。

https://web.archive.org/web/20210609080241/https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000790073.pdf

コロナワクチン_アナフィラキシー副反応-1

アナフィラキシーについては、アドレナリン注射などの適切な治療を行えば、症状を回復させることができます。

https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=7

臨床的にアナフィラキシーを疑ったらバイタルサインの確認、周囲のスタッフを呼び集めつつ、直ちにアドレナリン0.3mg(小児では体重kg当たり0.01mg)を用意し、アナフィラキシーと診断したら直ちにこの量を筋注するとともに、酸素吸入や点滴を使うのが標準的な対応です。

接種会場では、当然、アナフィラキシーなどワクチン接種後の体調不良に対応できる体制を整えているので、過度に恐れる必要はありません。

また、ワクチン接種後の死亡事例が報告されていますが、「ワクチン接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません」。流産が増える等の妊娠のことに関して、何らかの悪影響を与えるといった趣旨の言説もデマであると断言します。(仮に今後長期的な検証により、新たな危険性が判明したとしても、現時点でその知見が得られていないことについては、デマとして扱います)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou-utagai-houkoku.html

画像7

【まとめとおまけ】

・コロナに感染するとキツイ
・承認されているワクチンは、とても有効でしっかりした安全性がある
・ファイザー社もモデルナ社も似たような性能
・副反応は結構起こる
・重篤な副反応は稀に起こるが治療可能

最後に、コロナ対策はワクチン接種だけではありません。少数ですがワクチンを接種できない人もいます。

コロナワクチンは万能ではありません。

ワクチン一本槍ではなく、多層的な防御によって、感染対策の効果がより高められます。

スイスチーズ式ウイルス感染防御対策

https://figshare.com/articles/figure/The_Swiss_Cheese_Respiratory_Virus_Defence/13082618

手洗い、消毒、換気、マスク着用、ソーシャルディスタンス、その他公的に有用であると認められている複数の感染対策を取り入れてコロナ禍を乗り切りたいですね。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html


るんるーん♪