やはりHPVワクチンの安全性をきっちり説明せねばなるまい
前置き
まず、日本のHPVワクチン政策とその周辺をさくっと振り返ります。
細かいことはここも参照。
2013年4月 定期接種化 2価4価 女子12~16歳相当 3回接種
2013年6月 積極的勧奨差し控え 定期接種A類疾病の位置付けは維持
↓
2021年11月 積極的勧奨差し控えを廃止(再開)
2015年7月 9価ワクチン薬事承認申請
↓
2020年7月 9価ワクチン薬事承認
↓
2023年4月 9価ワクチン定期接種化&一部2回接種
上記のように、積極的勧奨再開にかかった期間が8年半、9価ワクチン承認申請から承認まで5年、かなり長い時間をかけてやっていました。
ちなみに、再開当時において定期接種で使われているワクチンの種類は中止前と同じです。
これだけ慎重にやっているのだからHPVワクチンの安全性が相当確保されていて、国民のみなさんは安心しているのだろう、、、、と思いきやそうとも言い切れません。
2023年7月28日開催の審議会です。
ここの資料3-2、資料3-3を見てみます。
どういうことかというと、【HPVワクチンは重要である】と【HPVワクチンは有効である】では同じくらいの割合でポジティブな回答をしているのに対して、【HPVワクチンは安全である】が安全でないと考えている人(ネガティブ)の割合が多いです。
そして、HPVワクチンの実施状況は、30~40%という結果でした。
分子の接種者数は5学年分あって分母の対象者数が1学年分であり更に、積極的勧奨中止中の実施状況がほぼ0だったことを踏まえると、再開直後の接種率は理論上500%近くまで上がるわけで、それなのに30~40%ということは2023年度でいう12歳~16歳相当の年代の人たち全体での接種率は、ざっくり見積もって10%以下(単純に1/5だとすると6~8%)になるわけです。
以上から、積極的勧奨再開後も接種状況が伸び悩んでいるのは、8年半も積極的勧奨を中止していたことによりワクチンの安全性への不安が払拭しきれていないからでは?と思いました。
結論
厚労省から、
1.HPVワクチンが科学的に安全性が十分あることをもっと周知させる
2.「定期接種停止や薬事承認の取り消しをせず」に、積極的勧奨を差し控えるだけにした理由を説明する
3.積極的勧奨差し控えが「8年半も」続いたことが合理的だったと言える理由を説明する
以上3点をやれば、今後接種率が伸びるんでないかなと思います。
接種率が伸びないとどうなるのか
HPV感染によって「守れたはずの命」が守れないことになります。
子宮頸がんがその代表ですが、子宮頸がん以外のHPV関連がんも同様です。(だから、男子への接種も大事な論点になるんですね)
なお、尖圭コンジローマや再発性呼吸器乳頭腫症といった死に至らないまでもやっかいな疾患を予防できないことにもなります。
●参考文献
Impact of HPV vaccine hesitancy on cervical cancer in Japan: a modelling study
HPV ワクチン接種率の激減によって増加する子宮頸がん罹患・死亡者の推計人数
●関連ツイート
【追記】あだスペで要望しました。