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CPI3%超え!インタゲ達成?だがちょっと待ってほしい

●実績値の話

総務省によりますと、10月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が、去年10月の99.9から103.4に上昇しました。

上昇率は3.6%となり、第2次オイルショックの影響が続いていた1982年2月以来、40年8か月ぶりの水準となります。

NHK「10月の消費者物価指数3.6%上昇 上昇率は40年8か月ぶりの水準」より

◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として103.7
前年同月比は3.7%の上昇 前月比(季節調整値)は0.6%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は103.4
前年同月比は3.6%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.7
前年同月比は2.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

総務省「2020年基準消費者物価指数 全国2022年(令和4年)10月分」より

2022年10月の消費者物価指数の前年同月比上昇率が、総合で3.7%、コアCPIと呼ばれている生鮮食品を除く総合で3.6%上昇しました。
政府・日銀が掲げている「物価安定の目標」における物価上昇率は、消費者物価指数総合で2%です。
つまり、実績は目標値である2%を超えているわけです。

なのに、どうして金融緩和を維持しているんだー!円安がー!日銀保有国債の下落で日銀が債務超過に陥り破綻するから利上げできないんだー!国際金融資本の陰謀だー!ふじこふじこ

と、思われたそこのあなた!だが、ちょっと待ってほしい。

2022年11月現在の最新版、2022年10月28日に開催された金融政策決定会合後の公表文書を読んでみよう。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続
するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。
マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の
実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。

日本銀行「当面の金融政策運営について」

「安定的に持続するために必要な時点まで」とあるように、1年分だけを見て「2%超えましたー、はい金融緩和終了」とはならない。物価『安定』の目標なので。

では、2~4年間の平均で見た消費者物価指数上昇率はどうだろうか。

せっかくなので、総合以外の指標についても計算してみました。
※小数点第3位を四捨五入

e-stat「消費者物価指数 2020年基準消費者物価指数 」より データベース操作は筆者による

【総合】
2018→2022:((103.7/100.2)^(1/4)-1)*100=0.86 (%)
2019→2022:((103.7/100.4)^(1/3)-1)*100=1.08 (%)
2020→2022:((103.7/99.8)^(1/2)-1)*100=1.94 (%)

【生鮮食品を除く総合】
2018→2022:((103.4/100.1)^(1/4)-1)*100=0.81 (%)
2019→2022:((103.4/100.5)^(1/3)-1)*100=0.95 (%)
2020→2022:((103.4/99.7)^(1/2)-1)*100=1.84 (%)

【生鮮食品及びエネルギーを除く総合】
2018→2022:((101.7/99.5)^(1/4)-1)*100=0.55 (%)
2019→2022:((101.7/100.2)^(1/3)-1)*100=0.50 (%)
2020→2022:((101.7/99.9)^(1/2)-1)*100=0.90 (%)

【食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合】
2018→2022:((100.1/100)^(1/4)-1)*100=0.02 (%)
2019→2022:((100.1/100.4)^(1/3)-1)*100=-0.10 (%)
2020→2022:((100.1/99.9)^(1/2)-1)*100=0.10 (%)

総合と生鮮食品除く総合の2020年10月~2022年10月で、それぞれ約2%でしたが、それ以外は1%台かそれ以下でした。

『安定』と呼ぶには、まだ足りない感じがします。

●金融政策は未来を予測しながら行う話

金融政策は、その効果が実体経済に波及するまで一定のタイムラグを伴いますので、常に先を予測しながら金融政策を決定していきます。

金融政策は、「物価安定の目標」のもとで、今後とも、次の2つの「柱」に
より経済・物価情勢を点検したうえで、運営する。
第1の柱では、先行き2年程度の経済・物価情勢について、最も蓋然性が
高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたど
っているかという観点から点検する。

2013年1月22日
日本銀行「金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について」

というわけで、足元の実績値だけを見て、ただちに金融政策を変更するということにそもそもなっていません。

経済・物価情勢の見通しについては、日本銀行が「展望レポート」を定期的に公表しています。
引用するのがめんどくさくなったので、気になる人はリンクから見てください。

●筆者の感想

「物価安定の目標」は達成されておらず、2~4年間の平均で見れば未だに2%の上昇率を下回っている。
展望レポートにおいても、概ね物価上昇率2%を下回る見通しになっている。
従って、現在の金融緩和を終了させて引き締め方向に転換することはおかしな話であり、金融緩和を維持するか、むしろ追加的な金融緩和を行うほうがまともだと思うぞい。
少なくとも、過去に行ってきた金融緩和では、目標達成に対して緩和度合いが足りなかったと言えると思うぞい。

るんるーん♪