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『秘密の森の、その向こう』を観た。

母親って、結構不思議なもので。
もちろん、母親は私の事をお腹にいる時から育ててるから、ある程度私という人間をわかっていると思う。

でも逆に子供の立場で言っても、結構母親の事は結構理解できるものだ。

この理解っていうのは良いも悪いもあるんだけど、例えば私は父親のことは理解できなくてイライラすることが多い。でも、母親については理解できるからこそ、イラつきや負の感情が生まれることがあるのだ。
(もちろん、うちの家族のことであって、他の家庭がどうだかはわからない)

つまるところ、結構子供って、良いも悪いも母親の事わかってる。多分娘っていう立場だと特に。

先週の土曜日、小さな映画館で『秘密の森の、その向こう』(2021年フランス映画、監督:セリーヌ・シアマ)を観た。

観る前の印象としては『思い出のマーニー』と『西の魔女が死んだ』を合わせたような感じかなと思っていた。観た後も特にその印象が大きく変わったわけではない。

でも、こう、「女の内面」をすごく丁寧に描かれているので、作品自体は72分間という短めな作品なんだけど、満足感のある内容だった。

「女の内面」って言うと、なんかドロドロしたものを思い浮かべる人もいるかもしれないが、この映画で描かれているのは全くそう言うものではない。
もっと根底にある強さと、優しさについて描いている作品だと思った。

主人公の女の子が抱えている後悔とか、主人公の母親が消化しきれなかった悲しみとか、とにかく感情の表現がリアルで、私は登場人物の一人一人にすごく共感していたのだ。

好きな場面はいくつかあるが、結構好きなのは、主人公が過去の母親の家(実際には主人公の祖母の家)に泊まりにいきたいと、父親に許可をもらいにいくシーン。
そこで小さい過去の母親と、今の時代の父親(つまりは夫婦なんだけど、父親はその小さな女の子が、幼い妻だとは知らない)が、アイコンタクトを取るのだが、これが妙に色っぽいのだ。

「色っぽい」というと、なんだか誤解を招きそうだが、その2人を見た時、「ああ、時空が歪んでいるけど、この2人はちゃんと夫婦なんだな」って思ったのだ。
このシーンだけでも、観る価値があると思う。

何かを喪って、悲しくて寂しくて、それでも私たちは前に進んでいかないといけない。
それは何も力強い大きな力を原動力にするのではなくて、思い出とか誰かがそっと寄り添ってくれるとか、そういうもっと温かいものが助けてくれるんだと思う。

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