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ウィンナーのプライド


晴れやかな休日の朝。
ウィンナーに粒マスタードをたっぷりとつけて頬張った。
迸る肉汁と粒マスタードの粒の食感と酸味とほのかな苦み。
半分になったウィンナーにまた、粒マスタードをたっぷりとつけて頬張った。

そして、気が付いてしまった。

私はきっと、粒マスタードを食べたくてウィンナーを焼いたのだ、と。


もしウィンナーが私のこの思考を知れば、ショックを受けるだろう。

彼はいつだって子供にも大人にも大人気。
骨を付ければワイルドな二枚目として今まで何度も主役の座に君臨し、ひとたびお弁当に入ればタコに扮し三枚目として常に唐揚げと助演賞を争う立場、最近じゃおかずがウィンナーだけのお弁当が大人気とまで言われている。
「飯とウィンナーがあればそれでいい」
そんな熱狂的なファンをも持つ加工肉界の絶対王者なのだ。
粒マスタードなしでも十分に愛される立ち位置を今までずっとキープして来たウィンナーにとって、粒マスタードの添え物扱いをされるのは耐え難き事なのだ。

私が一瞬でもウィンナーの事を粒マスタードをすくう為の棒状の食べられる道具のように思ってしまったのは、例えばそれはクラス1の人気者の男の子に「連絡先教えて」と声をかけて、「なんだこいつも俺の事好きなのかな?」と勘違いをさせてしまったけど本当はその子と幼馴染の隣のクラスの男の子が好き。というような罪深さである。

ウィンナーに私の気持ちを勘付かれてしまい、私は必死で言い訳をする。

「ウィンナー君とも友達になりたいって思ってたのは本当だよ!」

冷え切って油も固まりつつあるウィンナーは冷たく言い放つ。

「じゃぁ、もし冷蔵庫に粒マスタードがなくても今日お前は俺を焼いたか・・・?」

「・・・っ!それは・・・!」

「やっぱりな・・・」


とここまで妄想してあと2本ウィンナーが乗っているお皿をレンジに突っ込む。

チン

湯気が出るほど温まったウィンナーにまた粒マスタードをたっぷりとつけて頬張る。
美味しい。
温め直したウィンナーが諦めたように優しく微笑み
「いいよ、お前が粒マスタードとうまく行くように協力してやるよ」
と言った。

君が皆から好かれる理由が分かる。
だってポトフやおでんに入った時の君は自分の旨味を皆に惜しげもなく分け与える一面もあること、私もちゃんと知ってたよ。
味が抜けてすっかりパンチを失ったって、君は大人気だけどね。

あ、あとね、実はさっきチンしていた間に自分の気持ちを確かめたくて、粒マスタードだけを食べてみたんだけど、この先どちらかだけを食べ続けるならって考えたら圧倒的にウィンナーだったわ。
粒マスタードはウィンナーの添え物よ。

さぁ、洗い物を済ませてお洗濯を干しましょう。

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