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女性役員を増やすということは、男性役員を減らす目標を立てることですか?
11日、東京証券取引所が発表した上場企業の行動規範となるコーポレートガバナンス・コードの改訂には、社外取締役や女性の活用についても盛り込まれた。
アメリカでは、ナスダック証券取引所が米国証券取引委員会に取締役会の多様性方針案を提出し話題になっている。取締役会のうち少なくとも2名を女性と少数派を登用、そうでない場合は説明責任を求めるという内容で、今夏までには最初の何らかの決定がされる可能性があるとのことだ。
取締役会の多様性については、昨年9月にアディッシュ取締役会で『経営・管理職層におけるジェンダーギャップ』について議題に挙げた。
本議題を扱うにあたっては、事前に、社内外問わず壁打ちをさせていただいた。どのような意見があり、自分なりにどのように考えたかについて残しておきたい。
※このテーマについては、多面的にコトを見れていなかったり、私自身の考えが成熟しているとは言えない段階での情報発信であることを認識しています。また、本noteは、個人の見解であることをご承知おきいただけますと幸いです。
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天然でやっているとメンズ体制になる
2014年にアディッシュを設立してから、「働き続けられる土台・選択肢がある」「対話をする文化がある」ことを描いて、制度設計をしてきた。
もともと、オープンなカルチャーであることもあり、そこに注力していれば、ある意味何も意識しなくても、女性が指導的地位に就くケースが複数あった。しかし、事業規模の拡大によって役職者のポジションが増えると、そこがどんどん男性で埋まっていく現象に気がついた。
例えば、役員を例にとる。会社を設立したときは6名だった役員が、ガバナンスの強化を目的に2020年には11名に増えたのだが、増員した役員は全員男性だった。女性は変わらず私ひとりで、結果、女性比率は16%から9%に下がった。
一般的に、役職者に占める割合は男性が多い。その母集団から採用すると、男性を採用する確率が高いのだ。
組織規模が大きくなっていく中で、指導的地位に占める女性の割合が自動的に上がるということはないことに気がついた。
「構造の問題」にフォーカスする必要
アディッシュは、社員のうち61%を女性が占めているが、次のロールでは20%に下がる。役員比率がどうこうももちろんあるが、一段階目ですでに比率が壊れていることが分かる。採用および昇進における格差「壊れたはしご」の現象が起きているのだ。
Step1として働く土台・選択肢をつくることは引き続きやる。その上で、方針を下図のようにまとめ、取締役会で協議した。
次の中期(Step2)では「壊れたはしご」に取り組むこと。2027年以降をStep3として、女性管理職30%の比率が継続的に担保できるほどに候補者がスタンバイしている状態を目指す。さらに職能別や国籍等の観点で取り組み、グループ経営を推進していく、とまとめた。
また、2021年第1四半期決算説明資料にも、"経営計画「2027年までに意思決定層における女性の比率30%」を推進"することを明記した。
前向きが長くなったが、事前に、社内外、そして性別問わず壁打ちをさせてもらった際にいただいたモヤモヤと、それらをどのように整理して取締役会に臨んだかを残しておきたい。
1. 数字目標を置くと、手段が目的化しやすくなるのではないか
はい。そのとおりだと思います。本テーマに限らず、なんでも。
数字目標を置くと、数合わせ的な役員登用、双方の納得感がない状態での抜擢など、数合わせ的な話が出る。
方針取りまとめにおいては、時間軸を2027年というそれらしいところに置くことと構造の問題に目線を向けることで、この問いを吸収したわけであるが、本来的には、多様化による意思決定の質や、それによってどう事業活動に実装していけるかを議論していけるようになりたい。
2. そもそも男性が多い職種なので、女性が増えるイメージが持てません
はい。私もイメージ持てません。
エンジニア、営業や経理等といった職能は男性が多い。私自身、理系かつ営業出身であるため、こういった領域には女性が少ないと身を持って感じてきた。役員も女性が少ない。
しかし、女性を探す努力、女性にもチャンスが行き渡る努力はしたい。現状維持では、いつまでたっても女性が増えるイメージなど持てない。
3. 多様性の観点だと、女性だけ、というのは違和感があります
これは、正直ハッとさせられた。私も考えが至っていなかった点だと思う。
私自身の原体験として、どうしても女性にフォーカスした取り組みになってしまうが、アディッシュ単体では、社員の10%を外国籍メンバーが占めていることを考えると、グループ経営を考えたときに、ダイバーシティ&インクルージョンの視点を広く持てるようになりたい。
そのためにも、自分の無意識のバイアスに気づいていきたい。
4. 男性役員を減らす目標を設定するということか
全体数が増えればその限りではないが、実際問題として男性の数は減る。取締役の全体数を減らして、かつ女性を登用する選択をする会社も出てきている。
そもそものところ、社会が変わっていく中で、どう機関設計をして、どのような構成にしていくか。果たしてこれまでの取締役会の構成員で良いのか。と再定義する機会としたい。
幸いにも、アディッシュは、職位というよりも役割と捉えていきたい会社であるため、引き続き、組織のフェーズに伴って柔軟に変更していける会社でありたい。
5. 管理職になりたい人ばかりではないと思います
はい。そうだと思います。もちろん、すべての人に管理職を薦めたいわけではないが、一方、女性に「管理職になりたい」「なりたくない」を問うことは重要ではないという考えに至っている。
現時点の個人の意思を問うよりは、自分事とする範囲を少しずつ拡大させていき、それを何回か重ねていくうちに、気づいたら管理職になっちゃってたという状態がいいのだろうと思う。
6. 管理職にならなくても裁量を持って働けています
個人側はそれでいいと思います。素晴らしい。しかし、それと、意思決定層のテーブルに多様性がないというのは別の問題だ。取締役会では、構造にフォーカスして議論していきたい。
7. 果たして経営に女性は必要なのか
文字にするとまあまあなモヤモヤだが、これは、女性からも意見をいただいたことを記しておきたい。
「要」「不要」を問うと、沼である。
それよりは、これまでの取締役会の構成員では気づけなかった視点を男女ともにいかに持てるかが大切なのではないか。
そういう意味では、あるドキュメンタリー番組で「役員会に、女性が1人はお飾り、2人は少数派、3人いたら力学が変わる」という一節があった。お飾りかはさておき、1人だと、同質性を乱すテーマを投げ込むにはアウェイすぎることは間違いない。そもそも同質性が高い側の人が選ばれやすい。
取締役会の力学を変えるには3人必要。私自身、6年間、取締役会に女性1人という構図で参加してきて、そう思う。
8. 業績あるいは会社経営にどんな良い影響があるのか
これについては、様々な論文が出ているので参考にされたい。
私個人としては、普通に考えれば、会社経営の状態は、良いときもあれば悪いときもあるのが常で、まあ、期待しすぎなのではなと思う。
しかし、取締役会を構成する人たちのスキルマトリックスでの多様性が事業活動にまで実装されたとき、やはりそのインパクトについて具体的に議論していけるようになりたい。
* * *
以上、あくまでも個人の意見であるが、こういったコメントをいただいたことは、私自身、一面的な物の見方しかできていないことに気づくことができた。ありがたいことだった。
この領域は人によって考えも違うし、ものすごい時差がある。実体験がない人をロジックだけで説得できるものでもない。「分かってくれない」「難しい問題だ」と放ることは簡単だけど、それでは議論がまた止まってしまう。
構造や事業活動の観点に変換して、対話を続けていきたい。
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あるドキュメンタリー番組で「役員会に、女性が1人はお飾り、2人は少数派、3人いたら力学が変わる」という一節があった。
— 杉之原 明子 (@AkikoSuginohara) August 27, 2020
お飾りかはさておき、1人だと、同質性を乱すテーマを投げ込むにはアウェイすぎることは間違いない。そもそも同質性側の人が選ばれやすい気もする。
うん、3人を目指したいなあ。
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