【Vol.1】腹黒い11人の女に勤めるひとりの女:ちえり
渋谷駅、井の頭線口から出て、向かう方向は公園通りでもセンター街でもなく、無料風俗案内所や二十四時間営業の居酒屋が並ぶ路地だ。
ぺらぺらの生地の黒服に身を包んだ日焼けした男達がビラを配り、鼻の下を伸ばした男を捕まえようとする。
どんな季節でも肩と胸の谷間を丸出しにした女達が、睫毛をしばたたかせながら男にしなを作る。私はそれらを横目に足早に歩く。向かう先には鉄製の重いドアがあり、そこには『腹黒い11人の女』と記されている。
この長ったらしい名前の店はキャバクラ。わたしはこの店で、『ちえり』という名で働いている。
キャバクラに勤める女といったら、どういうイメージがあるのだろうか。昨今の女性の人気の職業ナンバー1だというけれど、わたしにはどうもそれが腑に落ちない。
以前、飲みにいった場所で少し話した女に「わたしもキャバクラで働いてみたいんです」と言われた。
黄色い声で、女のわたしにすら上目遣いのアヒル口をする女をちらりと眺め、私は「へぇ、頑張ってね」と答えた。
すると、女はこう言った。
「え? 頑張る必要があるんですか?」。
必要などもちろんない。ただし、指名がとれれば、の話だけれど。
わたしは煙草の煙を吐いて、「どうなんだろうね」と答え、その話を終わらせた。
とはいえ、わたしも人に何かを言えるような、それこそ雑誌やテレビに頻繁に登場するような売れっ子キャバクラ嬢ではない。
最近、プロのキャバクラ嬢はすごい、という取り上げられ方をよくするけれど、キャバクラ嬢にプロなんてほんの一握りだ。
九割以上が、日々に流され、生活に流され、目先の簡単に手に入る金に釣られて働いているだけ。
そして、わたしもその一人である。
けれど、それは、もしかしたら、誰もが同じなのではないだろうか。
今、本当に全く妥協なく、金を稼いで生きている人間はいるのだろうか。
わたしが働いているのは風俗情報誌に載るような有名店でもない上、指名だってノルマを達成できるぎりぎりしか取っていない。
そんなどうしようもないキャバクラ嬢に、それを言う資格はないと思う。
けれど、わたしは店にいて思う。
水に揺蕩うように、薄暗い店内の照明に照らされている女達と、昼間に働く女達はそれほど違うのだろうか。
そんな風に思い至り、今回この東京ナイロンガールズ(※旧Webマガジン名:現在は削除されていて存在しません)で連載をすることになりました。
職業:キャバクラ嬢、23歳、腹黒い11人の女で働く女、ちえりです。
2022年の昔はちえりやってた晶子のつぶやき
※注:こちらは、2012年に出版したわたしの自伝的小説『腹黒い11人の女』の出版前に、ノンフィクション風コラムとしてWebマガジンで連載していたものです。執筆当時のわたしは27歳ですが、小説の主人公が23歳で、本に書ききれなかったエピソードを現在進行形で話している、という体で書かれているコラムなので、現在のわたしは23歳ではありません。
トップの写真は、キャバクラやスナックにいた当時のわたしの写真です。2022年・現在のわたしは42歳、今のルックスはInstagramの@akikomitaniを見てね!
ていうかよー、Google検索で 三谷晶子 結婚、とか、三谷晶子 年齢とか検索されてて、いやー、デビュー当時は生年月日出してるし、検索すればわかるし、生年月日をプロフィールに出さなくなったの、単に手掛けた仕事が増えたから入りきらなくなっただけだし。
そして、わたしが結婚してるかどうか気になるなら自分で聞きやがれバーカ、ていうか検索したの誰、あたし実際知ってるの?
やだ怖いしキモさしかないんだけど。
って超思ってたっす。言えてすっきり♡
てことで、どーせ、若い頃の写真使うなんて詐欺とか言うやつが湧いてくるんだろうな、と思いましての先制宣言でした。
ちなみに、トップ画像の写真の全体像はこちら。
昔はかわいかったんだね、とか、昔の方が好みとか、無駄コメントはバカをさらすだけだからやめときましょうね。
ネットに載ってる女は、俺のための風俗嬢とか思ってる人は某オリンピックの理事下ろされた人みたいに世界にこき下ろされる運命ですよ。
そのへんの女性心理を知りたい方はぜひ、拙作『腹黒い11人の女』お買い求めくださいませ♡
電子書籍化したいので、Kindle化リクエストしてくれたら嬉しいな♡
そのうち、リニューアルして再出版もする予定です。
それでは、またね!