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育休リスキリングの効果に関する研究論文が、国際ジャーナルに掲載されました

2017年からずっと仕込んできた国際共同研究が、ようやく日の目を見ました!いろいろあって今になりましたが、むしろ今年は育休リスキリングが着目されているので結果的にいいタイミングかもしれません。広く読んでいただけるよう、研究の意義と要約の日本語訳をまとめておきます。実務の方向けにざっくり一言でいうと、「育休中リスキリングによって復職後の両立生活に対する自信を高めておくことで、復職後に上司から見てわかるほどに組織を意識した行動をとるようになる傾向がある」です。ここ数年、企業からは「復職はするけれどキャリアアップを意識しなくなる」「自分の仕事を終えることだけに集中しがちでチーム貢献をしなくなる」という相談が増えていますが、育休中に復職後の両立生活に対する不安を低減するプログラムを実施することで、その問題が解決する可能性が示唆されたということです。この事実は広く知っていただきたいので、メディアの方の取材や、研究会等での発表のご依頼は大歓迎です!

2014年に何気なくはじめた育休中リスキリング(育休プチMBA)プログラムですが、受講生に見られる変化が非常に興味深かったので、いちどしっかりと教育効果を検証しておきたいと考えました。ただ自分ひとりでは難しく、会社員時代の友人に協力をしてもらうことでようやく実現した研究です。プログラムの実施は2017~2019年3月で当時は育休中リスキリングという概念はなかったのですが、問題意識を共有できた19社からご協力を賜りました。実施にあたってはいろんな気づきや苦労がありましたので、このあたりは別記事でまとめたいと思います。

論文に関する詳細

原著はオープンアクセスですので、こちらからどなたでもお読みいただけます。具体的にどんな研修プログラムだったかも載っています。
Facilitating transition from maternity leave to work for working mothers: A self-efficacy intervention study
Cambridge Prisms: Global Mental Health
2023-03-17 | Journal article | Author
DOI: 10.1017/gmh.2023.6
Part of ISSN: 2054-4251
Akiko Kokubo; Katsuhiko Yoshikawa; CHIA-HUEI WU

(以下は論文の日本語訳です)

Impact statement/研究の意義

政府や企業は、女性のキャリア継続を奨励するために、育児休業などの両立支援策を導入していますが、キャリアアップには依然として大きな男女差があります。育休から職場への復帰は、働く女性の仕事人生において重要なキャリア転換期となります。多くの女性は、出産後に仕事上のキャリアの中断を検討しますし、復帰を決めたとしても大きな不安を感じながら困難な再適応プロセスを経ることになります。そこで本研究では、育休中のワーキングマザーを対象に、職場復帰に効果的に備えるための研修プログラムを開発しました。このプログラムの検証は、ジェンダーに基づく社会的役割への適合圧力が強く、文化的伝統に起因するキャリア継続の課題に女性が直面しやすい日本で行われました。本研究では、当該研修プログラムがワーキングマザーの仕事と家庭の両立に関する自己効力感を高め、その結果、復職後の上司による役割行動(in-role performance)の評価の向上に寄与することが示されました。本研究は、企業が育児休業者に当該研修を提供することで、ワーキングマザーの仕事と家庭の両立に関する自己効力感の向上と仕事への再適応の支援を実現し、ファミリーフレンドリー施策を実施できることを示唆しています。

Abstract/要約

育児休業から職場への復帰は、ワーキングマザーにとって重要なキャリア転換期です。そこで、仕事への再適応を支援するために、仕事と家庭の両立に関する自己効力感(work–family balance self-efficacy)を高める研修プログラムを開発して受講前後の変化を評価する方法で検証し、育休中の研修受講による自己効力感の向上が復職した後の就業態度や役割行動(in-role performance)にもたらす効果について調査しました。データは国内16社の育休取得者約100名を対象に、研修受講前(Time1)、研修直後(Time2)、復職して6ヶ月後(Time3)の3回に渡って収集し、Time3では被験者の上司からも収集しました。その結果、被験者は研修受講後に仕事と家庭の両立に関する自己効力感を高めていることがわかりました。また、研修直後(Time2)の仕事と家庭の両立に関する自己効力感は、被験者本人による復職後(Time3)の就業態度は予測しないものの、復職後(Time3)の上司による被験者の役割行動(in-role performance)の評価を予測することがわかりました。本研究は、受講前後の変化を評価する調査方式による当該研修プログラムの有効性と、仕事と家庭の両立に関する自己効力感の役割行動(in-role performance)における時間差効果の予備的証拠を提供しています。本研究は、育児休業者を対象とした仕事への再適応支援のための研修プログラムは、既存のファミリーフレンドリー施策の補完に繋がる可能性を示しました。
キーワード:育児休業、ワークライフバランス自己効力感、管理職自己効力感、ワークパフォーマンス、研修

おまけの研修風景

これは論文には載せられなかったものです。赤ちゃんがいっぱいいるわりには静かで、他の会議室から苦情が出ることはありませんでした。

研修風景(池袋の某社会議室にて、2019年3月撮影)
研修風景(新宿の某社会議室にて、2019年2月撮影)


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