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大学時代に亡くした友人と、原田マハ『でーれーガールズ』


 
 
私は岡山出身です。「でーれーガール」であります。しかし、岡山市内よりちょっとばかり西寄りのため、「でーれー」ではなく「ぼれー」を使います。どちらかと言えば「ぼれーガール」ですが、今日はでーれーガールのふりをしたいと思います。
 
この本を読了して真っ先に脳裏に浮かんだのは、友達のふくちゃんでした。彼女とは大学時代に同じゼミの友達で、在学中に交通事故で亡くなりました。
 
 
大学時代の私は、夜更かしをしては朝寝坊するというパターンが定番で、あまり優秀な学生とは言えませんでした。9時から始まる1限目に遅れる~!と猛スピードで車を走らせて大講義室に駆けこむような、そういうタイプ。完全に夜型だったのです。
 
ただ、この日は違っていました。いつものように夜更かししていたのに、夢を見て目が醒めてしまったのです。その夢には、ふくちゃんが出てきました。私の旧姓は「三輪」と言うのですが、夢の中でふくちゃんが「みわちゃん、、、」と私の名前を何度か呼ぶのです。ハッと気づいて、「ふくちゃんじゃが!どうしたん?」と聞くと、ふくちゃんの片方の目からハラハラと涙が零れ落ちました。「ふくちゃん、何があったん?ふくちゃん!?」と私はふくちゃんの方へ駆け寄ろうとするのですが、ふくちゃんは静かに片方の目から涙を流したまま、スーッと遠のいて消えてしまったのです。
 
なんだか胸騒ぎがして、ガバッとベッドの上に起き上がりました。「なんだ、夢か・・・」そう思ってもう一度寝ようとするのですが、心臓が普段の3倍くらいに大きくなったかのように大音量でバクバクして、もうどうしようもなくなったのです。
 
そのまま、心臓の音を聞きながらぼんやりとしているうちに窓の外が白けてきました。ほどなくして連絡が入ります。ゼミの仲間からでした。
 
「みわちゃん、落ち着いて聞いて。ふくちゃんが亡くなったんよ。」
 
身体が急にガクガクと震え始めました。「うそうそうそうそ!ありえん!そんなこと、ありえんけー!」そう言いながらむなしくかぶりをふると同時に、人間の膝って、凍えるほど寒くもないのに、こんなにガクガクするんだ、、、と、冷静に観察している私がいました。
 
ふくちゃんという存在を失って、わたしはどうしようもない挫折感と虚無感を味わいました。ぽっかり穴が空いたという言葉がこれほどまでにしっくりくるなんて、今まで体感したことがなかったのです。それは他のゼミ生たちも同じでした。
 
ふくちゃんのご実家に葬儀に行き、ふくちゃんが高校時代に過ごした部屋に通してもらいました。棺桶に入った口元に笑みを浮かべたような穏やかな顔のふくちゃんにお花を添えて、ふくちゃんを見送りました。ふくちゃんのお母さまはずっと泣いていらっしゃいました。その一部始終にすべて参加したのに、わたしにはふくちゃんが消えてしまったことが体感として理解できていませんでした。
 
*******
 
時がたち、私たちは卒業しました。社会人になった私は、ふくちゃんの分も、精いっぱい生きていく、命を燃やしていくんだと決め、ふくちゃんの命日にはご実家にお花を贈り続けました。
 
やがて私も結婚し子どもができました。お花を贈るたびに、お母さまから「お子さんは今何歳くらいかね?」とお便りをいただきました。ある時、なんとなく「うちの娘も生きていたら今頃は結婚して子供がいるのかもしれんねぇ・・・」というお母さまの気持ちをどこかで受け取ったような気がして、近況報告になってしまうお花を贈ることをやめました。
それ以来、私の中での小さな儀式に変わりました。ふくちゃんのことを思い出し、ありがとうを伝える。今こうしてるよって伝える。
 
あの時のふくちゃんの涙はなんじゃったん?
話を聞けんでごめんな。
ふくちゃん、何も言わずに行ってしまうんじゃけー。
けどなぁ、ふくちゃんがいてくれたけー、私は安心じゃったんよ。
ふくちゃんありがとうな。
でーれー、ありがとう。
 
そして、私の中で封印していたふくちゃんのことを、こうして文章にする勇気をくれた、原田マハさんの『でーれーガールズ』にも、でーれー感謝しています。
 
みなさんもぜひ読んでみられー。 


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