みあ

VARIOUS RECORDS いろいろな備忘録

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最近の記事

花粉症と思い込みとパーソナリティについて書いてみる

花粉症との出会い花粉症という言葉は、今からウン十年前、まだわたしが小さかった頃にはなかったように思う。しかし、花粉症の”症状”は、わたしにとっては身近なものだった。というのも、わたしの父が今でいう花粉症だったからだ。その頃は皆、「アレルギー性鼻炎」と呼んでいた。鼻水に悩まされ、イライラして周りに当たり散らしてしまうこともある父の姿を見ながら、「『あれるぎぃ』っていうものは大変なんだな。」と、子どもながらに思っていた。わたし自身はその症状に困った記憶はないが、一度、妹を耳鼻科

    • 次の段階へ行くとき~瀬尾まいこ『君が夏を走らせる』

      私の中で再読決定の瀬尾作品『あと少し、もう少し』 この中の登場人物「大田」の、その後の話だとはつゆ知らず手にとった本書。 金髪、ピアス、「走る」。 ん?と思ったら、やはりあの「大田」だった。 「一生懸命」な時代は、財産だ。 しかし人は、そこから離れて次の段階へ行く。「あと少し、もう少し」と思えるところで。 瀬尾さんは、「そんな思いを持てるのは、きっと幸せなことだ。」と、主人公に語らせている。 そう、この段階こそ、次の流れに飛び移っていくベスト・タイミングなのかもし

      • 力の抜けた時

        大島ケンスケさんの歌にイラストを使っていただきました。感謝です。 デモテープをいただき、初めてケンスケさんの歌を聞いた時のことです。じわ~っと心の中から湧き出てくるものがあり、ヨーシ!と思って気合満点で製作に取りかかりました。 何点か原案を描いてみた段階で、ケンスケさんからミキシングが終わったテープが送られてきました。最初のデモテープでもすごかったのに、そこに細やかな改良や改善を重ねてこられたケンスケさんのアート魂をまざまざと感じて、私はすっかり圧倒されてしまいました。

        • ん?違和感から入った世界とは…『線は僕を描く』

          「線は僕を描く」?「僕が線を描く」んじゃなくて・・・? ちょっとした引っかかりを感じてこの本を手に取りました。 主人公は、両親を事故で失い、自分の「ガラスの部屋」に閉じこもって出てこれずにいた青年。その彼が”水墨画”を通して、自分を取り戻していく物語です。最近映画化もされたようですね。原作を読んでしまうと映画に行くのが若干怖くなるので、見に行くかどうかには悩んでいますが・・・。 水墨画については何も知らない主人公ですが、師匠は「何も知らないことが力になる。何もかもがありの

        花粉症と思い込みとパーソナリティについて書いてみる

          大学時代に亡くした友人と、原田マハ『でーれーガールズ』

          私は岡山出身です。「でーれーガール」であります。しかし、岡山市内よりちょっとばかり西寄りのため、「でーれー」ではなく「ぼれー」を使います。どちらかと言えば「ぼれーガール」ですが、今日はでーれーガールのふりをしたいと思います。 この本を読了して真っ先に脳裏に浮かんだのは、友達のふくちゃんでした。彼女とは大学時代に同じゼミの友達で、在学中に交通事故で亡くなりました。 大学時代の私は、夜更かしをしては朝寝坊するというパターンが定番で、あまり優秀な学生とは言えませ

          大学時代に亡くした友人と、原田マハ『でーれーガールズ』

          コロンバニ『あなたの教室』

          映画監督でもあり女優でもあるフランス人作家の作品です。舞台はインド。かつて、イギリスの植民地支配から長らく苦しんでいたこの国は、「ヒンドゥー・ナショナリズム」を掲げて独立しました。この「ヒンドゥー・ナショナリズム」とは、「女性は男性に従うものだ」とする性差別の考え方やカースト制に見られる様な身分差別の考え方をも含んでいます。そのため、いまだにインドでは「女性には教育はいらない」と考える人たちも多く、特に経済的に苦しい地域では、児童労働も当たり前のようになされているという現実が

          コロンバニ『あなたの教室』

          フジ子・へミング ~魂のピアニスト~ わたしのピアノ経験も交えて

          一度は耳にしたことがあるであろうピアニスト、フジコ・ヘミングさんの自伝です。 フジコさんは、ロシア系スウェーデン人の父親と、日本人の母親の間に生まれました。それはフジコさんにとって決して恵まれた幸せな環境とは言えないものでした。当時はまだ精神年齢の若かった両親のぶつかり合い、母親の激烈な性質、そして戦争という影が押し寄せる中で、フジコさんは時代の波に翻弄されながら幼少期を過ごしました。 結局ご両親は別れて暮らすことになり、フジ子さんはお母様と共に、日本で幼少期を過ごします

          フジ子・へミング ~魂のピアニスト~ わたしのピアノ経験も交えて

          小林正観さんの言うことを真に受けていたら人生負け組に成り下がると思っていた私が読んだ 『釈迦の教えは感謝だった』

          私が小林正観さんの本を初めて読んだ時のことは、今でも強烈に覚えています。 「だめだ。この人の言っていることを真に受けたら、人生の負け組になってしまう。」 私にこのような感想を抱かせたのは、2008年に刊行された『100%幸せな1%の人々 ーー「すべてが幸せ」になる59の法則』でした。当時、この本は、私が暮らす街の本屋さんでも平積みされて話題になっていました。「小林正観」と言う名前すら知らなかった私が、正観さんの本に初めて出会った時でした。そしてその第一印象が上記の通り。こ

          小林正観さんの言うことを真に受けていたら人生負け組に成り下がると思っていた私が読んだ 『釈迦の教えは感謝だった』

          水木しげる『ほんまにオレはアホやろか』

          水木しげるさんの自伝です。 戦前戦後という過渡期を生きた人たちは、実に猛烈な時代を選んで生まれてきたんだなと思わされます。何かのお役目だったのか、魂が意図して何を体験したかったのか。 水木さんの幼少期からの歴史も、そんなことを感じずにはいられないほどの強烈なものでした。 面白かったのは、水木さんは幼いころから、自分にはできることとできないことがあることをはっきりと意識していたということです。そしてできないことはできないと知り、できるようにしようということは思わなかったし

          水木しげる『ほんまにオレはアホやろか』

          宮崎駿『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』

          宮崎駿さんの「ナウシカ」から「千と千尋の神隠し」に至るまでのインタビュー記録です。 一気に読了しました。言葉のそこかしこに、ものを創り出す人間という生き物のエネルギーが迸っていました。最初は乱暴ともとれるような宮崎氏の粗いものの言い様に躊躇してしまいましたが、そこには強い信念が頑として存在することの証でもあることが腑に落ち始めると、氏には愛しか感じなくなりました。天才という言葉があるのなら、天才的クリエイターだと思います。 さて、宮崎氏は数多くの作品を手掛けていますが、基

          宮崎駿『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』

          「悲しみに、こんにちは」~母親不在の数時間に思う

          舞台はスペイン。 都会で育った少女フリーダが、母親を亡くした後、郊外で自給自足をしながら暮らす叔父叔母の家に引き取られたところから物語がスタートします。 母を亡くし、突然遠くに住む親せきの家で新しい生活を余儀なくされたフリーダの心の機微が、実に見事に、フィルミングの中で表現されていました。フィラーのコマは何一つなく、あらゆる映像がフリーダの揺れ動く心象を描いていました。気づくと、私自身、この映画を心で観ていたのです。 そして私自身の幼少期を思い出しました。 私は岡山で生

          「悲しみに、こんにちは」~母親不在の数時間に思う

          原田マハ『<あの絵>のまえで』

          この本では、ひろしま美術館、大原美術館、ポーラ美術館、豊田市美術館、東山魁夷館、地中美術館、それぞれの美術館に所蔵されている絵画がキーになりながら、短編が紡がれています。題名にある<あの絵>の前で、何かが沸き上がり、何かが起こるのです。 読み進めながら一番驚いたのが、取り上げられた美術館です。 私はかつて広島に10年ほど住んでいました。市内の中心部に勤務していたので、平和公園やひろしま美術館は職場の近所でした。仕事が終わってそのまま同僚達と「そごう」の地下でお弁当とビール

          原田マハ『<あの絵>のまえで』

          萬田緑平『家で死のう!』

          衝撃的なタイトルですが、在宅緩和ケアの医師が長年の看取りの現場から見えてきた真実を誠実に語っている一読の価値ありな一冊です。 まず最初に私に影響を与えた著者の言葉が、「がんも心臓病も脳梗塞も、すべて老化だ」というものです。老化は死と同様、万人に訪れるものです。病気ではなく、それは関係する臓器の老化だと捉えること。わたしの死生観が揺らいだ瞬間でした。 本書では、看取りの段階では、「患者の希望に沿う」ことがすべてと書かれています。それは本書のすべてを貫く一本の価値観でもありま

          萬田緑平『家で死のう!』

          瀬尾まいこ『強運の持ち主』

          主人公は占い師の女性。さまざまな人たちの相談に乗る毎日の中で、主人公の生き方や考え方が時には「再確認」になったりもしながら、お客さんの影響を受けて変わっていきます。 お客さんの人生と主人公の人生が交錯しながら各章はエンディングを迎えていきます。 この小説を読み終えて、 ーーー実は私たちは、占い師に頼らなくても自分で答えをすでに知っているのではないかーーー と予感しました。 もし自分の決断に不安や心配があれば、「気をつけた方がいい」などという占い師の言葉として返ってき

          瀬尾まいこ『強運の持ち主』

          寺地はるな『わたしの良い子』 

          主人公はこんな人です。 実妹がシングルで生んだ甥の朔(さく)を、妹の代わりに育てることになった姉。 一見すると、大変なお役目を背負い込んで、さまざまなことを犠牲にしている、とてもかわいそうな状況の人のようについ思ってしまう私ですが、主人公の心の中は、常に淡々とした「凪」の状態。「凪」の感覚を体現する彼女の生き方、あり方にぐっと惹かれながら一気に読了しました。 朔は、なかなか周囲になじめない子どもでした。小学生になってからも勉強もスローペースでした。周囲は「もっとこうあるべ

          寺地はるな『わたしの良い子』 

          森沢明夫『たまちゃんのおつかい便』

          この本は、女子大生のたまちゃんが、 過疎化が進む故郷の、買い物弱者と言われる高齢者のために 移動販売で起業しようとするところから始まります。 かつての同級生である、父子家庭で過ごして 父親の車屋を継いでいる男の子と、 東京に出たものの失意のうちに帰郷して 引きこもっている女の子、 その二人とたまちゃんで 起業のアイデアが共有されていきます。 家族や地域の人たちの人間模様が絡まり合いながら たまちゃんが成長していく姿が描かれています。 登場人物たちが、時おり、 ハッとする

          森沢明夫『たまちゃんのおつかい便』