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萬田緑平『家で死のう!』

衝撃的なタイトルですが、在宅緩和ケアの医師が長年の看取りの現場から見えてきた真実を誠実に語っている一読の価値ありな一冊です。

まず最初に私に影響を与えた著者の言葉が、「がんも心臓病も脳梗塞も、すべて老化だ」というものです。老化は死と同様、万人に訪れるものです。病気ではなく、それは関係する臓器の老化だと捉えること。わたしの死生観が揺らいだ瞬間でした。

本書では、看取りの段階では、「患者の希望に沿う」ことがすべてと書かれています。それは本書のすべてを貫く一本の価値観でもあります。それほど大事な「患者の希望」ですが、これが叶えられるためには、「今からいかに生きていくかということが問われてきますよ」という、大きな命題も読者に投げかけられています。

著者の、「生き方で死に方が決まる」という言葉は、私が本書で最も衝撃を受けた言葉でした。いかに家族と時を過ごしたか、どのように社会や周りの人たちと関わってきたか、それがすべて死に方(看取られ方)に出るのです。

つまり、本人が「延命はせず、思うように最後まで自分らしく生き切って死にたい」と希望しても、家族が「そんなこといわないで!少しでも長く生きて!」といって、本人が希望しない延命医療を承諾したのであれば、それはその人がそのような付き合い方を家族としてきた結果ともいえるのだという一節がありました。自分が望む死に方ができないというのは、その思いをくんでもらえない程度の家族の付き合いしかできていなかったということでもあると、著者は結びます。とても悲しいことだなと思いました。

死ぬことについても、いかに生きるかについても、深く考えさせられる本でした。

では、心に響いたフレーズを紹介していきます。


★「健康に良い」の真実について
何が健康に良いことなのかは医学でもほとんどわかっていないのです。ある人にとって「健康にいい」が、ある人にとっては「健康に悪い」と言うデータがそこら中に溢れています。ではどうすれば良いのか。それは自分の体の声を聞くのが1番だと思います。これをした時は体調が良くないな、これを食べると元気になる、という体の声こそ、あなたのことを最もわかっている名医です。

★胃ろうや気管挿管までして心臓をただ動かし続けることは望んだ生き方なのか?
死から逃げず、死と向き合っているからこそ治療をやめて最期まで自分らしく生きるための道を選ぶ。治療してくださいという人の方が自らの避けられない老化から逃げているのではないでしょうか?自らの老化を認めない限り、老化によって人が必ず死ぬことを認めない限り延命治療を死ぬまで続けることになり、そこには悲しみに溢れた死が待ち受けている。

★幸せな看取りとは何か?
意識がなくなるまで頑張れと言われながら亡くなっていく、そんな看取りにずっと違和感を覚えていました。そうではなく、生きている間にしっかりお別れを言って泣き、ありがとうと言うことが大切。

★亡くなる時のプロセスは?
一般的には、老化→脳→肺→心臓

★死ぬ直前のプロセスは?
だんだん食欲が落ち、だんだん眠る時間が長くなり、だんだん水しか飲まなくなり、だんだんトイレにしか歩かなくなり、とうとう水も飲まなくなり、とうとう目覚めなくなる。するとだんだん呼吸が弱くなって、ついに呼吸が止まった時、心臓も止まる。これが亡くなるということです。途中に恐ろしい事は起きません。すごい痛みが来るわけでもありません。本当は誰もがこうして穏やかになくなっていけるのです。

★緩和ケアを始める決断はいつ?
がんと診断されて、少しでも辛さ痛み苦しさを感じたら、すぐに緩和ケアを始めるべきです。(治療を頑張るのはもちろんいい。ただ、辛くなったら治療はやめていい。)

★「患者の希望を優先する」ことができない家族の方へ
本人が生きたいように生きると、人間が本来持っている生命力が宿ってきます。家族の希望ではなく、患者本人自らの希望に沿って治療をすべき。本人の人生なのだから、本人に主導権を握らせてあげるという考えをもつべきです。

★しっかり生きるためには?
人は必ず死ぬのだから、死ぬことを目標にしたほうがちゃんと生きられます。

★よりよく死ぬためにはどうしたらいい?
結局のところ、生き方で死に方が決まるのです。いつ死んでもいいように、きちんと生きてきた人は、延命を望みません。だから人生の最期を穏やかに終わらせることができるのです。
いつ死ぬか分からないからいつ死んでもいいように生きる。
今日が人生最後の日だと思って生きる。
よりよく生きてきた人がよりよく死んでいける事は間違いないのです。

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