子供の頃のはなし (4) 先のことばかり考えて今を楽しめていなかった

苺のショートケーキの上に乗っかった大きな苺を先に食べるタイプですか?
最後まで残しておくタイプですか?

と聞かれたら、私は「最後まで残しておくタイプ」の人間だった。
子供の頃から。
お楽しみは最後にとっておく。
「ご褒美の甘い果実」は我慢した先にあるものだ、と。

ケーキの上の苺は、遅かれ早かれ自分のお腹の中に納まるものなので、先に食べようが後に食べようが大した差はないが、それを自分の人生に置き換えて思い起こすと、後悔しかない。
今更「やり直しボタン」を押す気ないけど。

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子供の頃から「今を楽しめない」子供だった。
神経質で極端に心配性だった。
漠然としたした不安がいつも心の中に渦巻いていて、将来の自分の安定についてばかり考えていた。

小学生の頃、稀に、1年に1回くらい、忘れ物しようものなら、「人生終わった」くらいの感覚に陥り顔面蒼白、先生に「教科書忘れました」と言いだすのも恥ずかしさと情けなさで激しい自己嫌悪に陥ったものだ。

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先のことを見通して計画的に行動すること。
将来のことを想定して自分が困らないように準備すること。

とても丁寧で慎重で、私らしいと言えば私らしいのだけど、5年後、10年後、先のことばっかりに気をとられていたら、現在進行形の今を全く楽しめていないことにある時気づいた。
もうだいぶ大人になってからだけど。

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先日、ドラマ『僕らは奇跡でできている』についての感想や考察をノートに書いたのだけど、歯科医の育実と昔の自分が被って、とても心が痛くなった。

育実は、いつか誰からも尊敬される立派な歯科医になったら、楽しいことが待っている、自分のことを満たしてくれるご褒美が、甘い苺が待っていると思っている。
でも大学講師の一輝は

「それ本当の願いですか?」
「それ、いつ叶うんですか?」
「楽しそうじゃありません」

と育実が先のことをばかりに気をとられていることを指摘。
「今を楽しめていませんよ?それでいいんですか?もっと他に方法があるんじゃないですか?」と気付きを促してくれている姿に、

「私も子供の頃に一輝と出会いたかったーーーーー!!!」と心の中で絶叫。
そして、既に一輝と出会っている小学生の虹一くんに軽く嫉妬。

いつ叶うかわからない願いの過程を苦行にするより、その過程も楽しみましょう。という一輝の提案。
当たり前のようでなかなか出来ない。
何かを成し遂げるまでの「過程」は「苦行」じゃないといけない、という変な刷り込みもある。

いいじゃないですか。今を楽しみながら夢を叶えたって。働いたって。
眉間に皺を寄せて「私頑張っているの…!」という鬼気迫るオーラを振りまいていても誰も近寄ってこないし。(今の育実がまさにそう。昔の私もそう。)

人は全てを手に入れることはできないんだから、せめて「自分の本当の願い」くらいは自分に素直になって、正直になって、認めてあげたい。
子供の頃の私にも、そう言ってあげたい。

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