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幸せな人はなぜ幸せなのか?

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論の授業の第7回(5月24日)レポートをまとめました。

今回は、はなまる学習会代表の高濱正伸さんにご講演いただきました。

プロフィール

花まる学習会代表。1959年熊本県生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学に入学。1990年同大学院修士課程修了後、1993年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した、小学校低学年向けの学習教室「花まる学習会」を設立。父母向けに行なっている講演会は毎回、キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶり。「情熱大陸」(毎日放送/TBS系)、「カンブリア宮殿」(テレビ東京)などドキュメンタリー番組にも出演し、注目を集めている。現在、算数オリンピック委員会の理事も務める。主な著書に、『なぞぺー』シリーズ(草思社)、『小3までに育てたい算数脳』(健康ジャーナル社)、『子どもに教えてあげたいノートの取り方』(実務教育出版)、『わが子を「メシが食える大人」に育てる』(廣済堂出版)など。

今回の授業では、高濱さんご自身の人生の変遷やご経験を通じて人の「幸せ」の理由や良好な夫婦関係の築き方についてお話いただきました。

不幸になる人はなぜ不幸になるのか?

自分の好きな事をやっておらず不幸に感じる理由は何なのか?この問いに対して高濱さんは『「分かる」所で世界を理解しようとしているから不幸である』と答えられました。

『「分かる」所で世界を理解しようとしているから不幸である』とは?

人間は情報処理だけで司れる「分かる」部分と本能の「分からない」部分でバランスを取って生きています。

情報処理の世界=分かる/分からないで世界を処理しようとする事は、感じる/感じないかで判断しておらず、原始的な通信とは遠い事です。

例えば、理路整然としていた人が母親になった途端に感情が抑えられなくなる事があります。高濱さんの仮説では、母親になった途端に上手な情報処理をしていた状態から原始的な通信をするようになり、母親の感情が反応しやすい状態になっているからだそうです。

このように「分かる」世界だけでは捉えきれない事が多く存在しています。「分かる」世界のみではなく「分からない」原始的な通信で心をしっかり掴んで判断し、世の中が分かりやすい仕組みや順番に踊らされていないか?という問いかけが大事になります。

誰が何と言おうとこれが好き!と言える事が大事

高濱さんは医者の家系ですが「自分の好きなことをしなさい」と育てられたため医者の道に進みませんでした。高校に入るまでは褒められるために生きていたとの事ですが、高校に入ってからは野球や遊びも全力で取り組んだそうです。

さらなる転機となったのは初めてジョン・レノンの歌を聴いて心が震えたときの事でした。それ以降何が一番心を震わすかを求めて映画、落語など色々な事に没頭しましたが、結局ジョン・レノンが一番で、その後もひたすら自分の心が震える事を追求していかれました。

中でも人生における影響が大きかった事は、哲学だけやると決めた一年でした。その時に様々な本を読み、友人と「なぜ生きるのか」等の様々な事に対する考え方を議論した事が今も自分の芯になっているそうです。その1年を通じ、子供か音楽であれば人生を掛けられると感じられたそうです。

仕事において「好き」は第一歩、まだやれていない事を最初に見抜く事が仕事になる

昨今「ワーク・ライフ・バランス」が重要視されているが、四六時中仕事をして熱中している人が輝いている等、自分の心に間違いなく正直に仕事を選ぶと一生ワクワクできるとの事です。

ただ、「好き」は第一歩であり「仕事」は「好き」のみで続ける事はなく、世界を眺めて、まだここはやれてないという事を最初に見抜く事が必要です。

学校教育と仕事の対比で例えると、中学高校までの学校教育は「合格」を目指すための勉強であり、数学の問題の「補助線」が思い浮かんだ後の解き方を教えてもらい、解く事ができるようにします。しかし高濱さんが予備校で数学の問題を解くための「補助線」を思い浮かぶ方法を質問したときに、明確な回答がなかったのです。この事を通じて、「補助線」が浮かんだその後の解き方ではなく、補助線が浮かぶような教育をすれば良いと考えられました。

見えないものが見える力

「補助線」が見つかる事は、物事の本質を見る事です。アイデア、人の気持ち等の本質が見える力が本当の頭の良さだとの事です。

また、その上で最後までやり切る力(GRID)が大事であり、数学の世界でもそれを感じたそうです。

見えない物が見える力(イメージ力)は小さいころの原体験や、走り回ってきた経験によって培われている印象があるそうです。実際に、田舎で育った方がノーベル賞級の成果になる事が多いとの事です。情報処理が得意な人は都会でも育てられるが、誰も見つけられなかったような問いと答えを見つけられるのは田舎に育った人だと考えられていらっしゃいます。

幸せについて -よい夫婦関係を築く-

夫婦関係において、相手が何をしてほしいのかを汲み取る事が重要で、「迷っている心に気づいてほしい」「共心してほしい」という相談をされるそうです。

そこで相手の「自由研究」が有効です。同性で同じ高校であっても分からないのに、生まれた背景も性別も異なる人の理解は難しい事です。夫婦のあり方に正解はないので、それぞれの夫婦が決めた価値観や哲学で決まります。

夫婦のあり方は夫婦の数だけあります。
「幸せな夫婦」だと感じている事例として、夫が昔の亭主関白で、夫が食べている間は座らない夫婦がいます。
また他の「幸せな夫婦」として、夫が全ての家事をやり、妻が家計を支える夫婦がいます。
幸せの形は夫婦それぞれで、この人と幸せになると決めて行動する事が大事だそうです。

よい「自由研究」のすすめ

高濱さんは様々な夫婦の相談を聞いていく中で、相手の目を見て、よく観察する事が大事だと感じられました。観察によって「◯◯な所あるよね」という理解をしている事が伝わるのが相手を幸せにしていると感じたそうです。
そして相手の心情の機微は夫婦それぞれですし、相手によってもそれぞれです。

また「自由研究」をする際には表層的な行動を捉えるのではなく、なぜその行動に至ったのかの考え方を捉える事が重要です。例えば帰宅時にあんみつを買っていき、相手が喜んでいた事をどう捉えるかについて考えます。
だめな自由研究では「あんみつを買うと喜ぶ」で止まってしまいますが、
よい自由研究では「自分が相手の事を考え続けた行為自体が嬉しい」と捉えるように、なぜそのような行動(ここでは感情)に至ったのかを想像します。

相手は十人十色であり、相手をきちんと研究し、嬉しい所を知る事は夫婦間に留まらず仕事にも通ずる事です。見えないものに焦点をあてて、人間の「自由研究」をしていくことが幸せに繋がります。

感じたこと

哲学寄りの話が多く、また自分ごととして活かせる内容であり、受講者一斉コーチングを受けているような授業で斬新な体験でした。

見えないものが見える力(=物事の本質を見る事)と「自由研究」を通じて人を観察して喜ぶことを見つける事はあらゆる人間関係、ビジネスにおいて通ずる事だと感じました。関わる人の総幸福量を増やしたい、でもなかなかそう一筋縄にはいかないときに有用な手段として、一旦本質を捉え直すのは大切であるのと併せて、「自由研究」のマインドで今回はどう研究しようかなとちょっと俯瞰して捉えられると難しい局面もちょっと楽しく乗り越えられそうだと感じました。


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