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はっとするアイデアを生み出すには

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論の授業の第11回(9月20日)レポートをまとめました。

今回はグラフィックデザイナーで大阪芸術大学教授の三木 健さんにご講演いただきました。

プロフィール

1955年神戸生まれ。1982年三木健デザイン事務所設立。ブランディング、アドバタイジング、パッケージ、エディトリアル、空間など様々なフィールドにおいて情報を建築的にとらえる発想で五感を刺激する物語性のあるデザインを展開。主な受賞にJAGDA新人賞、日本タイポグラフィ年鑑グランプリ、世界ポスタートリエンナーレ富山銀賞、N.Y.ADC奨励賞など受賞多数。
パーマネントコレクションにサントリーミュージアム、富山県立近代美術館。大阪芸術大学教授。

手掛けたデザイン(一部をご紹介)-----

三木さんのデザインの原点:「コーヒー共和国」の世界観づくり

赤道を通ること、ナスカの地上絵のような不思議さを音楽やコーヒーの包装紙、商品に添える小石の柄で表現されました。
大航海時代を彷彿とさせる不思議なイメージ音楽、昔使われていたような包装紙、小石に描かれた柄は地上絵のようなミステリー感の漂うものになっています。

最近の取り組み:コシノヒロコ展

階段でマネキン展示

階段にコシノヒロコさんがデザインした服を着たマネキンが複数並び、そのうち2体だけが動く仕掛けとされました。

オノマトペで展示

人生の様々な体験を時系列に沿ってオノマトペで表現し、また、「ヒラヒラ」に合わせてヒラヒラした服を展示されるなど、様々なオノマトペに沿った展示を行われました。

三木さんのデザインはどのように生まれてきたか?-----

デザインのスタンスの変遷

「ブランディング」という言葉があまり使われていなかった時代から、マークだけをつくるといった限定的なデザインではなく、企業の理念とも一貫したデザインを心がけていらっしゃいます。今よく使われる言葉で表現すると「パーパス経営」に近いデザインとの関わり方になります。

仮説を組み立てる

クライアントの中に理念があります。理念のないものづくりをする方はいないという前提に立ち、会話を含むコミュニケーションから相手の理念を観察し、理解し、仮説を組み立てていきます。

機能的価値と情緒的価値

人が満足を得るところには2つの価値が重なります。1つ目は機能的価値で、どんな便益が得られるか目に見えるものです。2つ目は情緒的価値です。こちらは、ドキドキ・わくわくするなどの数字で表せないものです。どちらが欠けても満足は成り立たず、「儲けてみよう」ではなく「わくわくすることをやろう」も大切にされています。

偶然の幸運 -セレンディピティ- 

たまたま作りたいものに繋がる体験に出会い、急にアイデアが形になることがあります。一つのことを見つめていたら出会えなかったことに出会えるように、余談や遊びや遠回りからヒントを得ていることが多いそうです。

See / Look / Watch(着眼大局・着手小局)

「見る」にも「俯瞰して」見る(See)・「じろっと」見る(Look)・「追っかけて」見る(Watch)の違いがあります。全体と部分を意識した活動をされています。

感じたこと

人がはっとするようなアイデアは、対象をよく観察すること・感情などの目に見えないものも大切にすることを前提とし、加えて作りたいものに偶然つながる「遊び」の機会があることで生まれると感じました。
偶然の幸運に出会う「セレンディピティ」は偶然のものであるがゆえ、出会うもの自体を計画することは難しいと思います。しかし三木さんの考え方やご活動から、「セレンディピティ」に出会いやすい考え方や行動があると感じました。それは丁寧な観察力・情緒的価値の重視・遊びや遠回りを意識して実践することです。
アイデアや違った視点での解決策等を考えるとき、対象を丁寧に観察し、見えない情緒的価値も大切にし、別の分野の情報や行動に触れるなどの「遊び」や「遠回り」の仕掛けを作ることを意識していきたいと思いました。




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