『ロックンロールが降ってきた日』
★★★★☆
浅井健一、甲本ヒロト、チバユウスケ、真島昌利、ムッシュかまやつなど、日本のロックンロール界の名だたる面子のインタビューをまとめた一冊。2012年に発売され、現在はその3まで出ています。
発売した頃にもパラパラと読んでみたのですが、最近ちゃんと読んでみました。
インタビューしたものをモノローグとしてまとめているので、一人称で語る文体になっています。まとめ方もしっかりしていて、非常に読みやすいです。
合計15人がそれぞれのロックンロールとの出会いやプレヒストリーを語っているわけですが、べつのインタビューなどで読んだ内容も多かったです。特にロッキン・ジャパンの二万字インタビューを読んだことのある人のパートには、あまり目新しい内容はなかったです。
それはさておき、この本はタイトルがよいですね。内容をぴたりと表しています。
それぞれのミュージシャンの下に「ロックンロールが降ってきた日」があり、そのときのことを語ってもらうというコンセプトがよいです。ロックンロールが大好きで、骨の髄まで染みこんでる人がつくったことがひしひしと伝わってきます。
各人が興味深い話を披露していますが、甲本ヒロトの話は群を抜いてすばらしかったです。
なにが図抜けているのかというと、一つにはその説明能力です。ミュージシャンにありがちな言葉足らずなところがなく、感覚優先の語りに陥らず、ロックンロールに関する持論や自身の考えをきちんと説明しているのです。
たとえば、ロックンロールを『飽食の果ての飢餓』と表したり、ロックンロールの輝きを太陽と星の関係で説明したりと、比喩やパラフレーズが秀逸なんです。
言語運用能力というかメッセージ力というか、言語感覚が並はずれていますね。歌詞になるとマーシー(真島昌利)も同じくらいすごいのですが、いかんせん、あまり語りたがらないですからね、マーシーは。
たぶん、甲本ヒロトはプレゼンテーションとかスピーチも上手いでしょう(そういえば、前に忌野清志郎の弔辞が話題になってましたね。あれもすばらしかったです)。
ここまでの能力をもったロック・ミュージシャンは甲本ヒロトくらいではないでしょうか。
それから自身のヒストリーを物語化する能力も際立っています。
なにかを語るとは、なにを語らないかを選ぶことでもあります。なにを語り、何を語らないか、どこを選び、どこを削るのか、その取捨選択によって物語は変わります。
すべてが実際に起きたことかどうかはわかりませんが、まるで運命に導かれるように進んできたかのように聞こえる語り(騙り)の力には驚かされます。ロックンロールの星の下に生まれてきた人だと思わせる説得力があります。ほんとにすごい。
ロックンロールが好きな方は必読の一冊です。
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