エドワード・ゴーリー 『ずぶぬれの木曜日』

★★★★☆

 柴田元幸が翻訳を手がけるエドワード・ゴーリーの絵本もこれで20冊目。2000年に1冊目が出版されてから18年が経ち、人気も認知度も年々増していることでしょう。

 線を重ねて描かれる独特のタッチとセンス、ビターで条理に落とし込まない作話が病みつきになります。
 僕もその昔『うろんな客』を本屋で見つけた瞬間、一発でやられてしまいました(It killed me.)。それからは翻訳される度に買っています。

 いつだったか、銀座かどこかで行われた小さな展示にも原画が見たくて足を運びました。想像通り、小さな画面に髪の毛くらい細い線で描かれており、そのタッチには魅せられましたね。

 お世辞にも明るいとはいえないトーンや後味の悪い話が多いゴーリーですが、すべてがバッドな話というわけでもありません。絵のタッチのせいで明るい印象はなかなか持ちにくいですが、おかしみのある話や不条理な話も多いです。

 どういう展開が待ってるのかまったくわからないゴーリーですが、どちらかというと、今作は「よい話」に入ると思います。
 ハッピーエンドやバッドエンドといった分け方がいまひとつ通じない作風なのは承知ですけど、そう言っていいでしょう。少なくとも『おぞましい二人』とか『不幸な子供』と比べたら、後味は悪くないです(比べる対象がまちがってるかもしれませんけど)。

 もっとも随所に散りばめられたゴーリーテイストのため、ストレートなよい話というわけでもありません。なんというか、ところどころ引っかかりがあるんですよね。そこが魅力なんですが。

 表紙に描かれた犬も愛嬌があってかわいらしいですし(目の感じがディック・ブルーナの絵を思い出します)、ダークな話はちょっと、という人も安心して読めます。

 ちなみに、今作を含む新刊3冊の帯についている応募券を送ると、抽選で「うろんな」手ぬぐいが当たるそうです。
 ううむ。欲しいようなそうでもないような……。

[追記]
 そういえば、何年か前に神田錦町を歩いていたとき、印刷物をトラックに詰めこんでいるのが目に入ったら、その印刷物が『うろんな客』だったことがありました。
 この小さな印刷所で印刷してるのかと、なんだかうれしかった記憶があります。
 それだけ。

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