昔、うんと大昔、すごく好きな人がいて、 毎日のように会いに行ってた。 会いに行ってたっていうより、見に行ってたって方があってるかも。 だって、一度も話したことがなかったから。 その人はプールの監視員さんで 当時中学3年生だった私は、 プールの中からこっそり眺めるしかできなかった。 どんな人かもわからないのに、ただ雰囲気が好きで、 彼の仕草とか、物腰とか、 いつもは厳しい目で監視してるから、たまに笑った時の顔がすごくまぶしくて。 夏はとっても短くて、9月に入るとプールも終
別れ際の私は、たぶん必死 冷静に考えたら、別れを切り出されている時点で、もうどうにもならないはずなのに 私より好きな人がいる 私より大事な人がいる それでも、 2番目でいいから たまにしか会えなくてもいいから 彼とつないでいる糸が弱って、もう切れそうなのに どんな言葉を並べても、結局言いたいことは 「別れたくない」 だけど、もう一人のかっこつけたがりの自分が それをストレートに伝えたがらない こんな状況になっても、まだ自分を飾りたててる 別れ際は、だれでもみっとも
もうとっくに思い出になってる 過去はどんどん、けがれなくきれいに輝いて そして私を苦しめる 今更、あの思い出の一つ一つが嘘だったかなんて、確かめようもないのに たくさん笑いあったあの人の笑顔が 思い出になっていく 二つの道は、一つの太い道になって そしてまた二つにわかれてしまった 傷つけあって別れたはずなのに 忘れられないでいるのはなぜ? 重ねても重ねても、にじみ出てくるような気持ちは 最後のあの人の優しさが、 思い出になりきれずに、心にこびりついてるから 新し
初めての彼は、中学校の同級生で、 途中に何回も別れたりくっついたりしながら、 結局20年近く一緒にいた 別れを切り出すのは、いつも彼 彼が浮気して、それがいつしか本気になってお別れ もちろん、私もわがままだったし、悪いところはたくさんあった だから、その度にものすごく後悔する もっと気持ちを届けたかったって 高校生の頃、よく二人で歩いた堤防が、 この歌を聴くたびに思い出されて、 別れた後はその近くを歩くこともできなかったけど なんだかんだいって、今もその場所を離れらない
彼の家は、川の向こうに見える、白い壁と赤い屋根 そんなに大きい川じゃないから、 こうやって堤防に来ればいつでも見られる 夏休みは、一緒に学校に行くこともできないから なかなか顔を見ることができなくて 電話で声が聴けても、ついここまで来てしまう 散歩につき合わされた犬が じっと動かないで川の向こうを見つめてる私のことを 不思議そうな顔で首をかしげて見てる あの人は、 さみしいときはいつでも会えるって そうやって言ってくれたけど、 無意識にそれは優しい嘘だって どこかでそう
毎週末、高速を飛ばして会いに行く。 彼の住む町は、鉄鋼の町で、 イメージは灰色の空。 夕方出発して、どんどん空が暗くなって、 たくさんのトンネルを抜けて、何本も橋を渡って、 彼の住む町の灯りが見える。 4時間近いドライブは、なんだかすごく長くて、 それでもこれから彼と過ごす時間を思うと、ドキドキが止まらない 何を話そうか 何をして過ごそうか 最後のトンネルを抜けると、すぐインターチェンジが見えて、 ぐるっとカーブを描いて、一般道につながる。 あと10分、あと5分。