見出し画像

プールサイド/大江千里

彼の家は、川の向こうに見える、白い壁と赤い屋根
そんなに大きい川じゃないから、
こうやって堤防に来ればいつでも見られる

夏休みは、一緒に学校に行くこともできないから
なかなか顔を見ることができなくて
電話で声が聴けても、ついここまで来てしまう

散歩につき合わされた犬が
じっと動かないで川の向こうを見つめてる私のことを
不思議そうな顔で首をかしげて見てる


あの人は、
さみしいときはいつでも会えるって
そうやって言ってくれたけど、
無意識にそれは優しい嘘だって
どこかでそう思ってた


だから毎朝
彼も向こうの堤防から、私にあいに来てくれるって
奇跡を信じて来る

大好きな人の彼女になれたのに
こんなにすぐ近くにいるのに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?