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夏が好きな理由

昔、うんと大昔、すごく好きな人がいて、
毎日のように会いに行ってた。
会いに行ってたっていうより、見に行ってたって方があってるかも。
だって、一度も話したことがなかったから。

その人はプールの監視員さんで
当時中学3年生だった私は、
プールの中からこっそり眺めるしかできなかった。

どんな人かもわからないのに、ただ雰囲気が好きで、
彼の仕草とか、物腰とか、
いつもは厳しい目で監視してるから、たまに笑った時の顔がすごくまぶしくて。

夏はとっても短くて、9月に入るとプールも終わり。
だから、彼ともさよなら。

一度も話すらできなかった。

最後の日は家に帰ってから、わんわん泣いた。

今思うと、どうしてあんなふうに好きになれたかわからないけど、
見ているだけでいいとか、そういう気持ち、
本当に存在するんだなぁって、今更思う。

大人になって、心が少しずつ汚れるのかな。
少なくとも、あの頃は、あの頃の私は、
今の私より、うんと心が綺麗だ。

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