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「学習する組織」のきほんの「き」 内省的な会話①

4月22日(水)にZoomを使ったワークショップを開催。学習する組織の三本柱のうち「内省的な会話(Reflective Conversation)」を取り上げた。

この「内省的な会話」について、ピーター・センゲから聞いたいろいろな話を共有したので、まとめておくことにする。

〇 内省(リフレクション)から始める

英語のリフレクションには、鏡の反射、反射像という意味がある。センゲは、この「鏡を自分に向ける動作」こそ、リフレクションを表すジェスチャーであり、そして、組織や社会、何かの変化に真剣に取り組むならば、始める場所はいつも、ひとつの例外もなくリフレクションだと話す。

リフレクションによって、現実をありのままに捉えることは、先のエントリーで紹介した「創造的な志向性」と対になるものだ。ビジョンを明確にすることは重要だ。しかし、今の現実を明らかにすることも同じくらい重要なのだ。以下、どうして変化を求めるときに、自分に鏡を向けるのか。そんなことを記していく。

〇 動画「Overview」

まず、リフレクションのイメージを共有するために、U理論の著者オットー・シャーマーが見せる動画を紹介。

(注:Planetary Collective作成のオリジナルを一部抜粋して日本語訳を付けた)

この映像の中で、アポロ8号が月に向かう。このとき、乗組員やNASAのエンジニア、そしてテレビの前にいた私たちの意識が向かう先は、月と宇宙、ほかの星たちだった。しかし、宇宙飛行士の1人がカメラを地球に向けたとき、多くの人が大きな衝撃を受ける。それまでの認識とまったく違う、私たちの暮らすこの星の姿がカメラに映っていたからだ。

私たち自身の姿に意識を向けること、そして新しい自分自身に対する認識が生まれること、それこそが「最も重要な体験だった」と乗組員の一人が話している。これがリフレクションのイメージだ。

私たちは変化を求めるときに、自分の外に意識を向ける。「〇〇は変わらなければならない!」という声を、毎日あらゆる場所で耳にしない日はない。しかし、ここで共有しているのは、本当に変化に取り組むならば、逆説的だが、鏡を自分に向けるところから始めよう、という話だ。

〇 私たちは習慣の生き物だ

リフレクションがポイントになるのは、私たちは「習慣の生き物」であり、現実を習慣に従って捉えることで不都合を生み出すことがあるからだ。「学習する組織」において、こういう「思考、感情、行動の習慣」メンタルモデルと呼ぶ(いちばんシンプルな定義だ)。

習慣を形成するのは、エネルギーを節約するためであり、これ自体は悪いことではなく、自然なものである。しかし、問題なのは、私たちが気づかない習慣が、私たちの思考と行動を支配しているとき、不都合が起こること。

〇 話の分かりにくい人?それとも?

月を目指したで宇宙飛行士たちのように、「自分の外に意識を向けること」は、私たちの習慣のひとつだ。

たとえば、誰かと話していて「この人の話し方は理解しにくいな(怒)」と感じるような経験を、多くの人が持っていると思う。では、そのときに「私の話し方の習慣が、この人の話し方と違うから、その私の話し方の習慣が、私がこの人の話を理解するのを妨げている!」と考えたことのある人はいるだろうか。

そんな面倒くさいことを考えてなんかいられない!と思うのは当然だと思う。 しかし、よく考えてみれば、実際にはそのややこしい表現の通りのことが起きている。

〇 他者と出会うとき、私たちは自分自身に出会う

別の例を挙げよう。違う文化圏を訪ねたり、そこで暮らしたりしたことのある人の多くが同じ経験を話すが、私たちは、普段と違う異文化に出会うとき、その文化のことを学ぶと同時に、それ以上に自分自身の(私の場合なら日本や大阪や実家の!)文化に気づく体験をする。

「ああ、この国の人たちは、変わったものを食べている」とか、「変わった習慣を持っている」と気づくとき、私たちは、目の前の人たちと違う自分自身の習慣をそれまでよりはっきり認識するからだ。もちろん、自分が普段食べているものや行っていること、自分自身の習慣を「まったく知らなかった」わけではなく、「気づいてみればずっと知っているのに、知っていることを知らなかった!」という気付きだ。

〇 習慣や文化は「背景に溶け込んで」いる

個人にとっての習慣や、集団にとっての文化とは、まるで背景に溶け込んでいるように自分では気づくことができないにもかかわらず、私たちの行動に影響を与えているものだ(エドガー・シャインの「文化」の定義)。

英語のジョークで「海中の魚が何の話をしているかは分からないが、やつらが水の話をしていないのは確かだ」とあるらしいが、私たちにとっての習慣とは、水や空気のようなものだ。

そして、だれもが経験から知っていることがある。こうした習慣とは強力なもので、その存在に気づかない限り、私たちに対して100%の支配力を持つ。しかし、これらの習慣は、一度気づいてしまえば、以前と同じ支配力を持つことはできないのだ(もちろん、すぐに修正できないことは多い)。リフレクションとは、私たち自身の、無意識の思考や行動や感情の習慣に気づいていく行為だ。

〇 私たちの変化の語り方(後半に続く)

この私たちの習慣、メンタルモデルを振り返るリフレクションについて長く述べてきたのは、センゲが多くの場面で指摘するように、私たちの「変化」や「変革」についての語り方に問題があることを共有したいからだ。

何かが変わらなければならない!とこれだけ多くの人が日々声をあげて、無数の変革プログラムや〇〇改革が導入されようとする中で、その多くが望む成果を生み出していないとしたら、何かが見落とされているのではないだろうか?リフレクションから始めるのは、これに気付くためだ。

「学習する組織」のツールや手法が開発された当初、先人たちは、まったく同じツール、同じ方法を用いているにもかかわらず、素晴らしい成果を創り出す場合と、反対に何の成果も生み出さない場合があることに気付いた。その鍵を、元ハノーバー保険CEO、センゲたちが友人でありメンターだと呼ぶビル・オブライエンが美しい一文で言い表している。

ある介入策が成功するかどうかは、その介入者の内面の状態にかかっている
The success of an intervention depends on the inner state of the intervener.

次回、もう少しこの「変化の語り方」について掘り下げる。そして、なぜリフレクションから始めるのか、もう少し深く理解できる助けになればと思う。



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米国MBA取得後、ボストンのSoLでピーター・センゲの各種ワークショップをサポート。センゲから10年間学んでいる「学習する組織」や「システム思考」のツールやアイデアを教育者向けに紹介しています。クマヒラセキュリティ財団、国立大学、中高一貫校等でシステム思考プログラムの設計支援中。

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