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ついさっき起きたことを書いてすぐ朗読するために①

「もう行くの?」

と母の声。

玄関を出ると薄曇りの空気は少し湿っていて、置いてある燃やせるゴミが今日は少し少ない。

となりに新しくできた住宅は初夏の花々で彩られている。

ガレージのコンクリートの上にチョークの落書き。

◯□せんろ◯△◯◯◯◯おはな◯◯△△・・・

駅までの公演の植え込み、サツキの毒々しいピンクの間からドクダミの白がニョキニョキ。

鷹の台駅から西武線に乗る。空いていて座席がオレンジ色。

向かいの高校生の男の子が窓から遠くを見ている。

小平駅で急行に乗り換える。また空いている。座席が青い。

短パンにペン画のイラストTシャツ、ハンチング帽に黒ぶち眼鏡、持っているのは本革の学生鞄。おしゃれな人。

さっき右隣だった人が乗り換えた後も右隣に座っていて少し驚く。

ガムの匂いで気がついた。

向かいの男性は熱心に三島由紀夫を読んでいる。タイトルは「ナントカ入門」。自分が近眼ナントカで読めない。眼鏡をかけても読めない。

「健康痩せ・めざせ脱肥満」、の車内広告。スリムな女性の胴体の。

東西線に乗り換える。納骨堂のポスター。

今度の座席は渋めの桃色に青のストライプ。

神楽坂に着く。神楽坂、という地名は本当にかっこいい、と思う。

いちょう模様のベンチに座る。

ホームの文字。3号車◯、シルバーシートマーク◯、優先席◯、3列に並んでお待ちください◯。白線、テン・テン・テン・・・

向かいの広告、「不動産のご用命は信用ある専門店で」まで読んだら次の電車が入って来てもう読めない。

駅を出て、サンクスに入る。野生ジュースとお茶で迷い、結局爽健美茶に決める。

赤城神社を通り過ぎたあたりの街頭の上に、カラスがとまって鳴いている。

「アー」「アー」

せつない感じ。

デザート専門店がある。

デザート専門店?何か違和感。だったらお通し専門店もありなのだろうか。

公園について、ベンチに座る。

お昼休憩の人たち、親子連れ。

「ねーママー見てー」「ねーねー」

ブランコを上手にこぐ小さな女の子達。

小雨が降ってきたので傘をさす。

世界がうす水色になる。

遠くでスズメがさかんに鳴いている。

足下の砂にたくさんのスズメの足跡。

まあるい、まわるジャングルジム。

黄色いペイント。

親子連れが去った後、赤いブランコがまだ揺れている。

書いているノートが雨粒で濡れていく。

湿り気のある紙。

走る鉛筆。




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