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漫画の描き方のコツ備忘録vol.17【二値とグレスケ、モノクロ原稿の印刷等についてのお話】

こんにちわ、晏藝あきです。
今回は【漫画の描き方のコツ】というよりは、【モノクロ漫画原稿の、印刷等についてのごく基礎的な情報】について、私が実践等から学んだり、また頭に入れておいて実際の制作活動の役に立った知識等の、いくつかを書き留めておきたいと思います。
何かしらの制作活動の一助になりましたら幸いです。



アナログとデジタルの作画と印刷について

モノクロ漫画の掲載媒体もここ5年ほどで非常に多様化し、描き方も様々となりました。
大別すれば、「アナログかデジタルで描き、紙か電子で発表する」という形が主となり、またその複合など、色々なやり方があります。

私自身は、もともと商業誌の《紙印刷用の版下原稿となる漫画や、カラーイラストの原稿》を《フルアナログ作画※》で制作しておりました。

※アナログ作画
一応説明を。紙の原稿用紙に手書きで絵を描く作業…ですね。
モノクロ漫画は、付けペン、インク、マジック、漫画用原稿用紙、スクリーントーン等の漫画用画材で、カラー原稿はコピック、水彩、アクリル、ガッシュ、色鉛筆、パステル等を使用。

そして、現在は《フルデジタル作画※》にて、デジタル配信用のモノクロ漫画・カラー表紙用のイラスト等を作成しております。

フルデジタル作画
PCやタブレットやスマホなどの電子機器を用いて、ドローイング系アプリ上などで、デジタルデータで絵を作成する作業の俗語です。
アナログで主線だけを描いて、色塗りなどをデータ上で行う複合型の場合はフルは付けず。
作画面と表示(液晶)画面が別にある板タブ、同一の液晶タブレット、タブレット端末に専用ペンシル等を使います。
まれにマウスのみ使用の強者も。


◆《アナログ原稿》の作画と紙面への印刷

まずアナログ漫画では、白紙に黒インク墨汁・修正用ホワイト等で、白黒のみで描かれた原稿を作成します。

さらには、ご存じ《スクリーントーン》という、これも黒(または白)一色で印刷されたシール状の画材を補助使用します。

これは《黒インクのドットや線の密度》で、
墨の濃淡(透明から灰色・黒への色のグラデーション・階調)》を、
疑似的》に表現したもので、
黒インクやホワイトの抜きで行う、描き込みの補助、またそれと同様の効果として使います。

しかし、なぜモノクロ印刷のアナログ漫画は、グラデーションの表現に容易な《薄墨》は使わず、真っ黒いドットや線の描き込みだけで描くのでしょうか?

それは、《ページが多い漫画を、美しく早くコストを抑えて、黒インク一色のみで印刷するため》です。

最近は印刷がキレイ過ぎて肉眼では分かりにくいのですが、お手元の何かしらの印刷物のカラー表紙にスマホのカメラをぐっと近付け、画面越しに見ると細かなドットで印刷がされている事が、お分かりいただけるかと思います。

このように、紙への印刷は絵の具を筆で直に塗り付けていく絵画等とは違って、隙間を開けて並んだ極小のドット等の集合体の刷り付けや吹付けで主に行われています。

灰色を含めた、黒以外の色を印刷上で表現するには、他の色インクを混ぜる・より細かな点を多く描く等の、追加コストの可能性が出てきます。

そのため、制作時からも印刷のしやすさを見越して、黒インク一色で行うのが、日本のモノクロ漫画の《モノクロ二階調(二値)》の印刷と制作の基本的な仕組みとなります。


◆《デジタル原稿》の作画と、デジタルモニターへの表示

また反対に、デジタルディスプレイ上の絵や文字は、ルービックキューブのように網目状に隙間なく並んだ四角い《ピクセル》ひとマスごとの《色の変化》で表現されます。
パソコン画面をじっと見ると、小さい四角が隙間なく並んでいるのが確認できるかと思います。

この密度が画面の細やかさを決めています。
例えば、画素があらく作成された画像というのは、縦1cm×横1cmの枠の中に何個、色が塗れるマスがいくつ入っているのかによります。
9個しか無かったら激粗ですが、1000個あればもっと細かな表現が可能です。

このデジタルディスプレイ上では、光の三原色※の組み合わせによって、ドットとインクに依存しない、色付き光の重ね方によって、非常に広域な色や濃淡の表示が可能です。

※光の三原色は、Red(赤光)、Green(緑光)、Blue(青光)で作られる色でRGBカラーと言われます。これが、光で作られるデジタルディスプレイの色です。
三光を重ねると(白色光・透明)となります。

色の三原色CMYは、Cyan(シアン;青緑)、Magenta(マゼンタ;紅紫)、Yellow(イエロー;黄)です。
印刷においてはここに黒;Key plate(キープレート;黒、墨)を足し、CMYKカラーと呼ばれます。こちらが印刷時の色の基準です。
三原色CMYのインク(絵の具)を混ぜると理論上はになります。

このため、アプリや電子掲載のみの漫画の場合、雑誌等に印刷・掲載される時とは違う表現が可能となります。

デジタル端末掲載では、黒インク一色の場合と、黒に加えて段階的なグレー色を使用する場合のどちらでも、表示コストにあまり差が出ません。

そのため、必ずしもこれまでのモノクロ印刷漫画のように、紙白からインク黒色へのグラデーションを黒インク一色の描き込みや、ドットの密度疑似的に表現する必要もありません。

なので、デジタルで描きデジタル画面で読むようなモノクロ漫画では、水墨画のように、黒色を水で薄めていくような灰色・透明(白色)の細かな色のグラデーション=《グレースケール》での表現が可能となります。

しかし反対に、デジタル画面上では、紙に印刷するトーンような規則的なドット表現で、モアレ※が出やすくなります。

※モアレ
作画時に想定していない幾何学的な模様等が、表示画面・印刷された原稿の中に見えてしまったり、出来てしまう現象です。

アナログ作画では、線数の違う(60線と40線など)トーン同士を重ねる事で、ほぼ確実に発生します。(同線数の濃度%違いは、重ね貼り可能。ただし向きを揃えず重ねると発生する事がある。)
モアレの影響で、肝心の主線がつぶれて見えてしまう事もあります。

またグレースケール作画で、網点とグレー部分を重ねたりしても、紙での印刷時にモアレが発生してしまう事があるようです。


◆デジタル配信用漫画における《二値・グレースケール制作》

そのため、私自身は電子配信用の漫画はグレースケールで作成しています。

作成するにあたり調べてみると、デジタルで読む・表示する場合には二値よりも、《グレースケール》の方が読みやすく※、また端末や画面の違いでのモアレも出にくいとの話に行き着いたためです。

反対に、商業漫画雑誌の印刷は二値が基本なので、「デジタル作画でも必ず初めから《二値》で作成してね」という場合が多いので注意が必要です。

紙雑誌の賞への応募などの際には、デジタル原稿は必ず二値化してくださいと募集要項にあったりもします。

※グレーと二値の見やすさの違いは、作者の絵柄にもよるかと思います。
また、一応グレースケール制作後の二値化は可能です。
(若干の手間はかかります。初めから手間を掛けて、デジタル用にグレスケと印刷用の二値の原稿の二種を作るという方も時々いらっしゃるようです。スゴ…)

個人的には読み手視点で電子漫画を見ても、二値とグレスケ漫画に表現上の違いは感じず、特に意識して分別して読まないなぁ思いました。
その辺りが、グレスケは避けたくなりがちなアナログ出身でありながら、二値トーンにこだわらなくなった理由でもあります。



◆では、《デジタルデバイス用グレースケール原稿からの→紙印刷》は?

これらを踏まえて、ならば個人で直接、印刷所に
《印刷用の同人誌の原稿》を入稿する場合、
電子書籍で読む用に《グレスケで作成したモノクロ原稿》は、どう加工するべきなのか…?

私が最近一番悩んだのはこれです。

通常、グレスケ作成のものを紙の雑誌に載せるのは難しく、掲載・投稿誌の基準に合わせて、二値でトーンを貼り直したり、最初から二値で作成する必要があります。

そして、同人誌は紙への印刷です。

現在、私は「今年後半に、人生ではじめて自主制作同人誌というものを作成しコミティア頒布に挑戦してみよう!」と個人的に計画しているため、この壁にぶち当たったのですが、
そもそも同人誌印刷については右も左も分からない、即売会に買い物に行った事すらないずぶの素人であります。

これは、版権が手元にあり自由がきき、電書委託販売や過去に雑誌掲載等はしているけど、個別に本にはなっていない既刊を本にしてみようかなという思い付きで、
また、まだ自身の作品を知らない方に、一人でも多く読んでもらえる機会を作ってみようかな?という実験的な広報広告活動の一環でありますが、それはともかく。

手元にはそのための、
本にしたい商業用等に描いたアナログ原稿と、
本にしたい配信用のデジタル原稿データの二つがあります。

まず、①は元から二値印刷用のモノクロ原稿ですので、高画質でスキャンしデータにし、クリスタ等で編集・写植すればデータ入稿できます。

問題は、②電子配信用にグレースケール(薄墨塗り)で作成した漫画の、紙への印刷です。

もちろん、あれ?グレースケールも後から二値化できるんでは?やれば良いのでは?
まさにそれなんですが、新作も描きつつ、150頁を越えるグレスケ完成原稿を一枚一枚、こつこつ二値化(紙用スクリーントーン化)するとか
…気が狂うっちゅーねん。

もちろん単純に、グレー部分を全て1種類(例えば60線の網)のスクリーントーンに置き換えて二値化する事は、手間はありますが非常に簡単な作業です。

しかし…!
何もこだわらなきゃそれで全く問題ないんですが、なまじ私はアナログ作画の時に、グラデ・柄・罫線・網・点描・カケアミなど数百種トーンを使いわけて、なるべく読みやすい美しい画面の漫画を作る事に腐心していたトーンこだわり勢なので、グレー部分を、全て濃度%や線数の同じ網トーン一種に、統一して置き換えて、ハイ脱稿!はちょっとイヤ!!

そもそも、あみトーンと呼ばれる、漫画でよく目にする規則的に並ぶ点々(網点)トーンですら、こだわれば軽く30種類以上あります。

例えば、アナログの時は、自身の絵柄や作風に合わせ基本の網点トーンを60線10%と決めつつも、舞台の明暗や貼る人物の感情によって濃度(%)を上下させたりグラデに変えたりもしていました。また、画面手前にいる人物や、コメディタッチな人物にかぶせる網トーンは、よりドットが大きめの30線か40線の10%~30%の網トーンで貼り、場面の雰囲気によってはそのカットラインを人物からはみ出すか主線上で切るか2㎜ほど内に入れるかも変えて、さらに場面によっては罫線かカケアミにすべきだし、そのカケアミトーンも場合によっては、白点描カケアミか黒線カケアミか黒点描グラデカケアミからの選択があああああ!気が狂うっちゅーねん!

とにかく一度、多大な労力をかけて完成させた大枚のグレスケ原稿に、また多大な労力をかけて二値のトーン貼り直しするようなデンジャラスは避けたいし、その時間があるなら新作を描きたいわけで。

でもどうせ作成するなら出来の良いものにしたい。しかし超絶にめんどいし、時間も足りん。
とめっちゃ悩んでたんですが、どうも

「同人誌印刷はグレースケールのままの入稿で、印刷して下さる印刷所さんがある!!!」

「!!?」

らしいですね…。知らなかった…そうなの!??確認したら普通にありました。
同人誌作成されている方には割と常識らしいっすね…もう初めの方で答えが分かっていらしたのね…
でも、グレスケ印刷の漫画ってどんな印象なのかしら…見づらくないのかな?
と思いました。

そこで、同人誌を買った経験もあり、作成していた経験もある親切な友人に、即売会初参加の相談をしたら、二値とグレースケール同人誌の実物を見せてくれました。
(ほぼ山登りみたいなヘビー街遊びに何冊も紙の薄い本持ってきてくれた有難うKさん…)

アドバイスをもらって、印刷所さんから印刷サンプルも併せて取り寄せてみると、グレスケでも二値の印刷でも、電子画面と同じように、漫画として読んで、ことさら違いが気になるような感じはしないかなと、私は感じました。
結果、グレスケの紙印刷も、漫画として違和感なく非常にキレイでした。

私は紙原稿の頃から、網点が見えにくい細かめの網点トーンを使わないとトーンが浮いてしまいやすい絵柄で、グラデトーンを多用していたので、
網点もなくグラデが多いグレースケール作画漫画にしても、特に絵的な違和感はありませんでした。

そのため、グレスケ入稿印刷さえ出来れば、電書用の完成原稿をほぼそのまま使えるので、手間を省いて収まりそうです。

あああ…良かった…(T▲T)
印刷技術の進歩よ…!時代に合わせて新しい事に挑戦してくれる印刷所さんよ有難う…!

また、漫画は買い専・アナログ全盛の頃からの年季入った漫画好きの別の友人にも、グレスケと二値原稿の読みごごちの違いを聞いた所、
「あ、違うの?」くらいのレベルの反応でしたので(まじかぁ)、やっぱり二値グレスケは、あんまり読み手さんには関係ないんかな…という感じかも知れません。
やっぱ内容かぁ…

ともかく未知の大地過ぎて、即売会初参加の準備についても先が長いですが、その過程でも新しく漫画の制作や発表に役立ちそうな情報を見つけたら、描き方情報と併せてアップしていきたいと思います。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!!
また、お付き合いいただければ幸いです。




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