【エッセイ】嘲笑う4月

夏は暑い。
冬は寒い。

何を当たり前のこと言ってるんだと思われるほどの共通認識。
果たしてこの共通認識ってなんぼのもんなのだろう。
春と秋の季節の変わり目二大巨塔が、人ってそんな簡単に分けられるもんじゃないよと言ってるようだ。
って何言ってるんだろう。
変なこと言ってる自覚はある。
もう少し遠回しさせてください。
とにかく近年の季節感の無さに恐怖と戸惑いを隠しきれず順応性の低い私の体はあからさまに悲鳴を上げているのだ。
自律神経ズタボロである。

体を暑さに慣らしていかねばと自分を痛めつけるかのように書店へ向かう。(変態か)
店内へ入ると夏の匂いがする。

す、涼しい…

は!この感覚…まだ早すぎるのでは!?
だが待てよ…例年の4月の書店の空調はどんな感じだったのだろう…思い出せない…わからん。
でも今年の4月、もとい春は混乱している。それは確実に言える。

桜がとっとと満開になりあっという間に潔く散った後にテレビのCMでは桜満開春のフェアと桜の花弁がイケメン俳優に降り注ぐ。
外は花弁が散りきった桜の木が申し訳なさそうに頼りなくしゅんと突っ立っている。
追い打ちをかけるように30℃まではいかずとも夏日超えの気温。熱中症に気をつけてくださいと耳を疑いたくなる気象予報士の声がする。
というわけで書店は冷房が程よく効いてとても快適である。
辺りを見渡せば半袖短パンの恰幅のいい中年男性や、薄手の長袖一枚の細身の御婦人。春物ジャケットのビジネスウーマン。本人よりその見た目に周囲が暑苦しく感じる冬物セーターのおじいちゃま。
人それぞれで服装が違う季節のごった煮状態の4月の書店。なんだか異世界感すら漂う。
私はリネン生地の長袖一枚。だが下着はヒートテック…。
歩けばじんわりと汗ばむ。
それもそのはず。気温計は27℃を表示している。
思わず嘘だぁ〜と心の声が漏れる。

夏は暑い。だから冷房をつける。つけなければその場を去るだろう。
それでも人によって冷房が強すぎて寒いと感じる人もいる。私もその内の一人である。半袖一枚では後々お腹が冷えてピーピーになる(汚い話で申し訳ありません)
私の夏は羽織るものを持参で調節する。
だが、夏は暑いことには変わりはない。
周囲も見慣れた夏の装いの風景となる。
冬も然りである。

だが、この近年の春と秋ときたらどこにいってしまったの?と探してしまうほど行方不明状態である。
書店の風景に、春ってものはどっちつかずな季節だなと思わされると同時に人も同じだな、なんて飛躍したことを考えてしまう。(自律神経ズタボロのせいにしておく)

半袖の人の横にセーターの人がいてもその人の適温というものがあるのだと教えてくれる。
みんなが同じ認識を持つことはとてつもなく難しいことだ。
夏でさえ半袖一色に染まらないのだから。
冒頭の人ってそんな簡単に分けられるもんじゃないよ…が、やっと繋がった(繋がったか?)

ただでさえ足並みが揃わない我々人間を夏の仮面を被った4月が嘲笑っているようだ。



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