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【コラム】長寿番組の宿命。海外ドラマ「アルフ」の終わり方

海外ドラマ(アメリカのドラマ)にはじめて触れるのは大半がNHKからではないだろうか。
中でも「フルハウス」と「アルフ」は僕の世代では気づいたら観ていたというくらいのはじめての海外ドラマの教材的作品だと思う。
アメリカのホームコメディと向田邦子や橋田壽賀子ドラマを比べて日米の文化の違いを肌で感じたといえば少し大袈裟かもしれないが共通するのは極力外ロケをしない。である。
固定のセットで繰り広げられる会話劇。その所作にも笑える要素はあるが基本耳だけでも楽しめるラジオドラマのようなものだと僕は受け取っている。
とにかく根強い人気のある「フルハウス」しかり「アルフ」。それは吹き替えの存在も大きい。
今回は「アルフ」について思ったことを少し書いてみたい。

アルフについて簡単に説明すると、ある日突然タナー家のガレージに宇宙船が墜落する。その宇宙船の操縦士が毛モジャの宇宙人アルフである。アルフは故郷のメルマック星が核戦争によって爆発し滅亡してしまったので脱出してきたことを告げる。宇宙船を直せたとしても果てしない宇宙を彷徨いつづけるしかないアルフはそのままタナー家に居着くことになる。はちゃめちゃだが心根の優しいユーモアあふれるアルフとタナー家の人々との暮らしを面白おかしく、時に心温まるエピソードで描いた20分ちょっとの1話完結のドラマである。

アルフの日本語吹き替えを担当したのが所ジョージさんであった。こども心に耳馴染みのある声と丁度いい脱力感で演じてくれて愛嬌たっぷりの魅力的な日本人にとってのアルフが誕生した。そんな所ジョージのアルフが癖になり病みつきになった。ちなみに声優所ジョージは後に「トイ・ストーリー」のバズ・ライトイヤーで再びこどもたちの心を鷲掴みにする。

毎回粋なアメリカンジョークが飛び交いタナー家以外には秘密の存在であった宇宙人アルフもシーズンを重ねるにつれその存在を知る仲間も現れる設定が長続きのひとつのポイントだったと思う。
ずっとタナー家だけの話ではシーズン4までの人気番組にはなっていなかったであろう。
その出会いから別れまでの約4年間を描いた全102話がそれを物語っている。
そしてこの「アルフ」は再放送を繰り返すことで数十年に渡って絶えず認識されつづけてきたある意味長寿番組なのである。
ともすれば、ここまで人気があると終わるにも終われない。終わらせられなくなるものなのだ。最終回までにもタナー家との別れ、すなわちメルマック星人の仲間が迎えにくる回はあったにはあった。が、いつも結局は帰れなかったり帰らなかったりで102話まで続いたのだ。
長寿番組終わり方難しい問題勃発である。
視聴者にとっては嬉しいことである。終わってほしくないのだから。
それでもやはり最終回はやってくるのだ。
さて、どのように終わらせてあげるかが問題である。
最悪なのは夢オチだとか突然の死に別れである。
アルフに関してはこのどちらでもなかったことはせめてもの救いだがどうも最終回「旅立ち」はモヤモヤが残ってしまう結果となった気がするのは僕だけではないはずだ。
またメルマックの仲間が宇宙船で迎えにくるというのだがこれは本当の本当に地球から去ってしまうのだなという流れで話は進んでいく。
が、エイリアン調査機関なるものが情報を突き止め宇宙船の光がアルフを連れていく寸前のところで捕獲されてしまうという最後で終わる。

「!?」
である。

一応ラストシーンで所ジョージアルフのナレーションが入り、まぁなんだかんだあったけどこの後もみんなと楽しく過ごしてると告げていつものエンディングが流れて終わるのだ。
どういうこと?ってなる。
築き上げてきた存在を知られても安心な人物たちの重みがあるから尚更そんな軽すぎるナレーションで納得出来なかった。
よりによってエイリアン調査機関に捕獲されて終わるなんて、一番知られてはいけない組織に囲まれてどうその先楽しく過ごせたのかいくらアルフの茶目っ気でも無理がある。

でも、それが最終回なのだからどうしようもない。

が、やはり納得出来ず調べてみたら本当の最終回は特別番組として作られていたことを知る。
シリーズ終了から6年後に「アルフ・ファイナル・スペシャル」として本編とは別物扱いの完結編という名の95分新作エピソードだそうだ。
僕はその幻の最終回をまだ観たことがない。
それでも完全ネタバレでストーリーが紹介された記事を読んでしまった。(かなり放送が昔だからネタバレされてても仕方ない)
その事細かに書かれた紹介文には僕の知ってる「アルフ」はなかった。
コメディ要素が削がれまくっている。何か大きな力から逃げるシリアス要素がとにかく強い。これは命を狙われたアルフの逃走劇に近い。しかも肝心のタナー家の存在がほぼ無い。タナー家の全員は住んでいたロサンゼルスから転居させられ各地を転々とさせられているとあったのだ。それじゃあ恋多き長女リンの最終回時点での恋人なり恋人候補とは国の権力によって引き裂かれたことになる。これは国家権力によってタナー家の自由やこれまでの暮らしを壊されたことになる。なんて無慈悲な。タナー家の母親ケートの日本語吹き替えはエイリアンシリーズのシガニー・ウィーバーも担当していた吉田理保子さんなのでなんなら理不尽なエイリアン調査機関という国家権力に抗いアルフを奪還するスピンオフが作れるんじゃなかろうかとさえ考えてしまう。(アルフの笑いの方向性とかけはなれているが)

きっとテレビシリーズ本編の最終回が不完全燃焼であったから色んな声があったのではないかと推測する。
にしても6年の時を経て完全オリジナルで完結編を作るのならなぜこのような(まだ観てないけど)世界観完全無視の別物にしたのだろう。すっきり終わらせる為なら違うだろうし、今までの102話があまりにも蔑ろにされている気がしてならない。
巨大なゴキブリを香水で退治したり改心した親戚のおじさんを驚かせて心臓麻痺であの世に送ってしまったりとぶっ飛んだ回はいくらでもあったがすべてはアルフの世界観だから受け入れられていたことなのだ。

「名探偵コナン」も「ワンピース」も人気作品ゆえの長寿番組化となっているが、さて、どう着地させるかで有終の美を飾れるかがわかれる至難の業で悩みどころである。

そう思えば「渡る世間は鬼ばかり」はかつてナンシー関さんが記していたようにドラマのキャストが亡くなられても橋田壽賀子さんが存命のうちはドラマはつづくといったことがまさにその通りだったように実質主役の泉ピン子(五月)がうまいこと嫁から姑に立場をかえつつなんだかんだいっても世の中ってものはやっぱりうまくはいきませんねー的な着地点に石坂浩二のナレーションでしっとりとフェイドアウトするように終わった記憶がある。
あれが長寿番組の終わり方のお手本ではあるのかもしれない。

アルフはずっと宇宙に帰る帰ると言いながら帰らないというダチョウ倶楽部的なネタを繰り返して一旦幕を下ろしておいた方が無難だったと思えて仕方ない。







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