マガジンのカバー画像

小説・詩小説

16
小説のようなものや短い詩の物語のようなものなどをまとめたお部屋。
運営しているクリエイター

#温泉

【詩小説】首なし龍

【詩小説】首なし龍

気嵐になりたかった魂たち。
山代の湯けむり彷徨う霜月の夜明け。

大衆演劇一座の幕が降りると舞台の天井からはらりとこぼれた紙吹雪が宴会座敷の色褪せた畳に落ちた。
あれは何色だったろう。
椿の生き様よ。

あまりにも生き急いだあの娘の名前も同じ椿だった。

日中の椿は厠の手前の日の当たらない奥座敷に飾られていた市松人形だった。
無邪気なこどもに乱暴に髪を掴まれ振り回されたり、鼻息を荒らげた中年男性に

もっとみる