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劣等感が恐怖を生み、やがて敵意へと育つ

僕の好きな漫画『バガボンド』の教えです。

大人気バスケ漫画『スラムダンク』を書いた井上雄彦先生の作品で、剣豪・宮本武蔵の生涯を描いています。

題材は剣術ですが、人としての在り方や思想がメインテーマです。

ざっくり説明

片田舎の荒くれ者の武蔵は「天下無双」になると豪語し、剣の道を進みます。いろいろな人に勝負を挑み、さまざまな苦難を経て心身ともに成長していきます。

ついには京都の名門・吉岡一門との決闘を迎え、たった1人で70人を撃破。武蔵の名はたちまち全国に広がり「天下無双」と呼ばれるようになります。

それからは名を挙げようと多くの武芸者が武蔵を狙うようになります。そして武蔵は決闘で脚に傷を負っていたため、城に匿われます。

そこで京都の権力者であり、吉岡一門とも縁のある板倉勝重と対話します。

板倉勝重もかつては剣の道を志した1人であり、武蔵の思想や生き方に非常に興味を持ちます。

武蔵と板倉の対話

白髪のおじいさんが板倉で黒髪が武蔵です。

二度目に会ったときの対話のシーン。これは剣術だけじゃない、人間の普遍的な感情ではないでしょうか。

自分より容姿が優れている人、仕事ができる人、お金を持っている人。生きていればいろいろな場面で引け目を感じます。

最初は小さな波でも、不安に振れれば「自分はダメなんだ」と劣等感に苛まれ、居場所や存在価値を失うことへの恐怖に変わる。その恐怖を消すために「あいつが悪いんだ」という敵意が育つ。

引け目や劣等感からくる敵意というのは、表には出さずとも感じたことのある人は多いのではないでしょうか。

お金持ちや有名人がよく批判されるのはこういう感情の動きがあるからなのかもしれませんね。

崇拝し、同化したがる

反対も厄介です。

他人の権威を自分のもののように語ってしまう。
崇拝して盲目になり、善悪の基準を失ってしまう。

敵意と同化。SNSや社会でよく見かける感情ですが、どちらも同じ引け目という波から生じるという考え方がとても示唆深いです。

「好きの反対は無関心」という言葉もありますが、敵意嫌いという感情は好きの反対ではなく、限りなく隣り合った場所にあるのでしょう。

たしかに僕も仕事や趣味で自分より優れた人を見ると引け目を感じますが、自分がまったく関心のないジャンルで優れた人を見ても引け目は感じない。むしろ純粋にすごいなと思えます。


真ん中が一番いい

敵意も同化、どちらに振れるのも良くないよってことで、じゃあどうすればいいかも板倉さんは話しています。

「真ん中がいちばんいい」
これは仏教でいう中道に近い考えなのかな。そもそも執着しなければいいじゃんっていう。

最近SNSでよく見かける
「自己肯定感を高める」
「他人と比べない生き方」
に通ずる考え方だと思います。

板倉さんは「引け目を見せずに済むのは年を重ねたからだ」と言っていましたが、敵意や同化などの執着とちゃんと距離をとって生きられるなら、年をとるのも悪くないなと思いました。


そして板倉さんは最後にこうも言いました。

例えばすべての人がおぬしのように強くあれたら、こうして誰かと対峙したとき、それぞれが心を揺らす事なく真ん中であれたら、闘いは起こらない。闘う必要がない。そう思わんか?
バガボンド

そうかもしれません......

「自分はあいつより強いんだ」
「あいつより価値があることを証明してやる」

そういう心が争いを生むのかもしれませんね。

生きていれば敵意を感じることも引け目を感じることもあります。

常に心を真ん中に保つのは難しいですが、せめて自分の周りだけを心を揺らさない平和な世界を作りたいですね。


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