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【読書メモ】小林秀雄『読書について』
基本情報
タイトル:『読書について』
著者:小林秀雄
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2020年5月16日に読了。
読書メモ
この本の主張を自分なりに一言でまとめると、「読書を通して、その背後にある「人間」を読む」
「美を求める心」
p86 謂わば、ただ物を見るために物を見る、そういうふうに眼を働かすという事が、どんなに少いかにすぐに気が附くでしょう。
p87言葉は眼の邪魔になるものです。例えば、諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いているのを見たとする。見ると、それは菫の花だとわかる。なんだ、菫の花か、と思った瞬間に、諸君はもう花の形も色も見るのをやめるでしょう。(中略)黙って物を見るということは難かしいことです。
p88 ...花を黙って見続けていれば、花は諸君に、嘗て見たこともなかった様な美しさを、それこそ限りなく明かすでしょう。
p89 美には、人を沈黙させる力があるのです。
「しゃべることと書くこと」
p111 活字は精神に、知性に訴えるものなのです。
(中略)
元来、センセーショナルなものに直接には無縁な散文は、センセーショナルなものに極力抵抗すべきなのだ。
「文章について」
p118, 119より抜粋
・精しい論証が必ずしも読者を説得するとは限らない。
・論証は精しいが説得力が貧しいという評論の性質をもう少し考えてみると、そういう評論は論旨的な要素は充分に備え乍ら、心理的な要素に欠ける処があるのだ、という事になる。
・理論上の細かい分析なぞは、評論を書き慣れた人には、そういうものに慣れない読者が考える程面倒なものではない。
・評論家がほんとうに困難を覚える処は、(中略)魅力ある生きた文章たることを期するという点にある。
論理が緻密なだけではなく、感情を揺さぶらないといけないよ、感情で人は動くよパターンの記述。
書くときに、人間の直感的な部分、『ファストアンドスロー』的に言えば“システム1”の方に働きかけるのを意識することは、基本記録以外の全ての文章で重要だろうね。
論文はこの必要性は薄いだろう、なぜなら文章で感情的に揺さぶられる魅力があることよりも、正確な手法の記録、何を示したかという事実、そして理性的な意味での面白みがある考察が大事だから。フェルマーの最終定理を論理的に厳密に証明した論文であることが大事であって、書き方がおもろくなくても良い。
でも論文掲載を選ぶのも結局人間だから、同じ研究でも感情に訴える魅力的なアブストラクトの方が掲載されやすいかもね。
「文章について」
p124 先ず考え次にこれを言葉にするという呑気な考え方から文学者は出なくてはならない。
考えを言葉にするというより言葉にしていくうちに考えようねーの主張だね
思考されてから作られるんじゃなくて、作りながら完成するものが変化していくよのパターン。
『「知の技法」入門』での、本は考えながら作られている、思考の過程を辿ろう論と通じている。
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