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【ブックレビュー】ショッピングモールに対する感覚を言語化してくれる『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市』

基本情報

タイトル:『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市』
著者:東浩紀、大山顕
出版社:幻冬舎
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2021年1月25日に読了。

なぜ読んだ?

ショッピングモール巡りをしていて、ショッピングモールという空間に興味を持ったからである。2020年の秋頃、東京にあるさまざまなショッピングモールの、全フロアを網羅的に見てまわることが好きだった。まるで博物館にいるかのように。
そんな時、図書館をまわっていたらこの本を発見したので、借りてきて読んでみた。

感想

ショッピングモールの遍在化を考えている。世界の施設が均一的にモール化していくというのは面白い。

モールは内側と外側が逆転している。ディズニーランドは、外部を内部の中に作っている(スペースマウンテン、イッツァスモールワールドなど)。こういうウチ・ソト問題は、他のさまざまな空間の分析に敷衍できそう。

第3章「バックヤード・テーマパーク・未来都市」が一番面白かった。
「とにかくデカい」「完璧だった」「思想があった」というディズニーワールド紀行。訪問客にディズニー以外のものを見せない「完璧」なシステムの話には惹かれた。身近なもので例えると、集中するためのデスク作りで、配線を隠すことに似ている。
包括的体験プロデュース。ほんとに夢の国。

「ショッピングモール=ストリート=都市」「百貨店=フロア=田んぼ」
そして東京都心におけるストリート(パリや京都でいう〇〇通り)は地下鉄であるという話は、実感を伴って理解できる。

本筋とはズレるが、大山による「写真は寝かせておく」話(p188~192)が印象に残った。
写真は本質的に記録のためのものであり、すぐ発表しなくて良い。なのに、現代ではみな発表できない写真を撮らなくなっている。取った写真はすぐインターネット上で発表するものであり、発表できない写真に価値はないと思われるようになっている。しかし、写真は10年寝かすと変わる。撮るなと言っていた人にも逆に「よくぞ撮ってくれた」と褒められる。価値観の耐用年数より、写真の耐用年数の方が長い。


この話を受け、ゲンロンカフェでの対談も同時代にはそんなに見てもらえなくてもいい、数十年後に向けて蓄積していきたい、と東は語っている。「いまはリアルタイムの情報の流通や拡散ばかりが求められるけど、だからこそ違う軸で考えるのはとても大切なことだと思います」これは本質的だと思った。


関連して、たとえば私が今書いている読書記録も、10年20年後に「あの頃の自分は何を読み、どう感じ、どのように文章に起こしていたのか」を知ることができるという意味で、寝かせておく価値が多大にあると思っている。

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最後まで読んでいただきありがとうございます!

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