見出し画像

青豆に春を感じて

豆ご飯 ラップに包む
ドット柄の営みを愛おしく想ふ

まめごはん らっぷにくるむ
どっとがらのいとなみをいとおしくおもふ

亜希


春を感じると私は、村上春樹さんの
お名前と小説1Q84のことを思い出す。

そして、豆ごはんを炊かなきゃと思うのである。

なぜそうなのかと言うと、
小説の主人公の名前は青豆さんだから。
「青豆」とは変わった名前だなと
思って、以来、忘れられなくなった。

春は、淡い色で食卓もいろどられ、
サマーオレンジや檸檬が私の春のイメージ。

それまでのコタツが恋しくなる濃い橙色とは明らかに違う。

私の中の春は、レモンイエローの風が吹き抜ける。

たとえば、
陽のヒカリに透けて膨らむスカートと
薄緑のうぶ毛の生えた山うどや翡翠の珠のような青豆に真珠そっくりな新たまねぎ。

ほんの短い瞬く間のような旬は、カラダの無意識な意思が目覚めさせようと欲している気がする。

そして、冒頭の話から、
私は、豆ごはんを炊くのだ。

春の長かった寒い冬から解放されるための
決まり事みたいに手仕事をする。

春は一瞬で過ぎていくから、私はとても忙しい。

そうそう、豆ご飯の炊き方なのだけれど、
まず、青豆を鞘からはずし、ステンレスのザルに集める。

薄っすらとひかりを纏う青豆を
昆布一枚とサッと茹で鮮やかな色味に
変わったら、ザルにあげ、茹で汁は、豆ご飯を炊くときに入れる。

これが、私の豆ごはんの特徴。

新米に気持ち少なめな水加減で
昆布と茹で汁、酒、塩を入れてガス火に
鍋で炊く。

炊き上がったら、直ぐに青豆をバッと
勢いよく入れて蓋をして10分程蒸らす。

その時に蓋を開けて、ジュワッという泡を立てた音とともにお米も艶やかに光る。

その瞬間を見たくて、炊ける匂いも、
とにかく好きなのだ。

豆ごはんは美味しい。
何杯でもいけてしまうから食べ過ぎ注意。

なので、少し我慢して、
残りの豆ご飯を丁寧にラップに包んで(つつんで)、冷凍しやすいように四角にする。

キッチンのステンレス台に並べた四角い豆ご飯たちは、鞘から外されて、今度はおくるみのようにラップに包まれた赤子のようだ。

なので、私は、白に緑色のドット柄がたまらなくいとおしい。

豆ご飯をラップに包む営みのいとおしさを感じる。

その時に、村上春樹さんも豆ご飯を
ラップに包むのかと想像する。

そしてドット柄の営みをいとおしく思うのだろうか。
そうだったらいいなぁと思う。

ちなみに、失礼ながら、春巻きを作る時も
村上さんのことを思い出す。

青豆さんって名づける方なので、
そのことを知っても、きっと許してくれるような気がするのだが、
それは春のせいだろうか。




この記事が参加している募集

今日の短歌

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?