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戦車でキャノンボール

〇戦車でGO!

 戦車で世界を横断しよう。この世を牛耳る特権階級の富裕層。老害長老群〝財団〟の思い付きで始まりました。立ちふさがる障害なんて履帯で乗り越えろ。第一回ワールドタンクキャノンボールレース選手権(WTC)。シルクロード横断編。優勝賞金120億ドル(日本円換算約一兆円)。只今、開幕いたします。

〇ルール無用!

大会ルールはただ一つ。組織委員会が指定する日時・場所にゴールすることのみ。一応、市街地では発砲を控えるという不文律がある。一応は。それ以外はすべて不問。実質ルール無用だ。しかもレギュレーションも特にない。参加資格は実働できる戦車の保有、それに自身の命と人権をちょっと提供してくれれば問題なし。それだけで大金が手に入るチャンスがあるなら、安いものだろう。

〇個性豊かな参加者(戦車)たち

◆マーク1。 世界最初の戦車。ひし形の形状をし、砲塔が車体の横にある黎明期の戦車だ。車長はマーク・チャップマン。操縦に4人、運用を含め計8人を擁する大所帯。チームは家族同然のつきあい。意思の疎通に問題はない。

◆M4シャーマン。 ザ・大量生産。至って凡庸な性能だが、操縦しやすく、部品の信頼性も高い。偉大なる平凡。団長はカイル・ミーン。一台で勝てぬなら、二台で、三台で挑む。戦いは数と戦術の信条をレースで実現できるか? 彼の指揮能力に期待。

◆74(ナナヨン)式戦車 。戦後の日本が開発した傑作戦車。丸味のある鋳造製の砲塔。油気圧式のサスペンションの姿勢制御が独特で、人によってはダンサーと呼ぶ者も。元陸上自衛隊1等陸曹:越中詩子が車長を務め、サムライ魂でレースを走る

◆103型戦車。正式名称はStrv.103。Sタンクともバルカン戦車とも呼ばれることもある。この車体の特徴は何と言っても砲塔がないこと。砲身が車体と直結し、車高が非常に低い。もう一つ大きな特徴は、一人で運用できること。裏世界でその名をはせた殺し屋、ナタリア・ラーションの愛機である。

◆T-72 輸出用のモンキーモデル。別名びっくり箱。設計上に欠陥があり、各紛争においてさしたる結果を出していないやられメカ。この機体で結果を出す事で、崩壊したロシア帝国の成り上がりストーリーを完成させる。車長はイワン・パブロビッチ。
 そのほか、10か国、千両以上の戦車がレースに参加。公道を無限軌道で蹂躙する。

〇邪魔するヤツらは主砲の餌食!

 ゴールまでのルートは自由だ。直線、迂回路、その選択は各々のチームに委ねられる。各国、各地方の法律に基づき、警察が彼らの前に立ちふさがる。当然の義務だ。しかし、相手は戦車だ。戦闘マシン。しかも旧式が多いとはいえ、近代化改修がされている。警官の装備では歯が立たない。たちまち主砲の餌食でキャタピラの下。なにせ賞金一兆円だ。多少の人命や人権も軽くなる。どうせ、あいつら危険手当をもらうはずだ。生きているなら…な。

〇悪党どもをついでに虐〇!

 レース参加者一同、某国・某地方に上陸する。そこは、警察の力も及ばない(というか手を組んでいる)無法地帯。ファシズム政権のこの国は、己の欲望に忠実な独裁者・ショウグンのおこぼれを狙うクズばかり。義憤にかられ、参加者の一人ナタリヤが、虐待市民を助けるために発砲する。これを機に、レースの参加者がこの国の軍隊に狙われる羽目になる。己の身の安全を守るため、キャノンボーラーたちと独裁国家との闘いが始まる。そして優勝賞金を手に入れるのはどのチームだ?

〇レースの真の目的は?

 甘い設定、ご都合主義。それらを全部勢いで誤魔化す、ある意味豪快な作品。安いCGが多用されているが、戦車はレプリカではあるが実物大のものを製作し、実際に走行可能。実弾を発射できるとの噂もある。玉石混交とはまさにこのことか。なお、登場する戦車に旧式が多いのはいわゆる版権問題らしい。
 さて〝財団〟主催の真の目的は、荒くれどものキャノンボーラーを利用して、独裁者とそのお隣の主権国家の横暴から国民を解放することにあることが判明する。世界は老害どもの身勝手なバカ理論に支配されている、という皮肉なのだろうか? なお人権侵害が深刻な彼の国では上映禁止となったこともあわせて記しておこう。


2034年 日・米・英・フィンランド合作 配給:ユービックファクトリー

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